古川孝敏

「みんなと積極的にコミュニケーションを取りながらやっています」

バスケ男子日本代表は7月1日からスタートするワールドカップ2023アジア地区予選Window3に挑む。今回の代表候補メンバーは24名となり、最年長は34歳の古川孝敏で最年少は21歳の河村勇輝となっている。

もともとリーダーシップを持ち合わせていて、選手としてもベテランとしてコート内外でチームを牽引できる古川の存在はトム・ホーバスヘッドコーチにとっても心強いのだろう。かつてホーバスヘッドコーチは、古川のバスケットボールに対する姿勢について「古川選手は経験豊富だけど、練習の1時間前に来るんです。身体のウォーミングアップやメンタルの準備をするんですよ。彼のように真面目で経験のある選手をマネした方がいい。間違いないんです」と称賛していた。

もちろん、コート上での信頼も厚く、古川はホーバス体制になって行われた4試合のうち、3試合に出場している。今回のWindow3に向けた直前合宿について古川は「やったことがない選手もいるので、コミュニケーションを取りながら、このチームでどう戦っていくべきかというところをみんなで作っています」と語った。

古川が言うようにホーバスヘッドコーチは、合宿ごとに新しい選手を呼びチャンスを与えている。たたでさえ、ホーバスヘッドコーチのバスケットに慣れていない選手が多いため、古川は「初めての選手がいるので、簡単ではありません」と言いつつ、「ただ、それぞれの良さを出せれば、間違いなく自信を持って戦っていけると思います」とも続けた。

古川はホーバス体制になってから毎回、合宿に呼ばれているが、その前の代表活動は2019年のワールドカップ予選だ。代表に呼ばれない時期も経験しているだけに、「今回、参加させていただけることに感謝していますし、チャンスをもらえたので全力を出してやりたい」とハングリー精神を持ちつつも、「僕は何回か参加していたり、自分の立場もあるので、みんなと積極的にコミュニケーションを取りながらやっています」と、自身の経験を仲間に伝えて、チームをより良くすることを念頭に置いている。

ホーバスヘッドコーチが女子日本代表を東京オリンピックで銀メダル獲得に導いた時は、100を超える戦術パターンがあった。男子日本代表はまだ始動したばかりのため、東京オリンピックの時の女子代表とは戦術数なども異なるだろうが、覚えることが多いことは間違いない。

チームとしてより良いバスケットをするには、チーム全員が共通理解を持つことが大切だ。古川は言う。「どういうシステムでやってきたかとか。過去2回のWindowで感じたこと、国際試合で上手くいかなかったことなどを伝えています。初めての選手は言葉だけでは難しい部分があると思うので、擦り合わせて良いイメージを作ることが大事です」

「練習中の一つのプレーでも、国際試合ではこういう状況があるとか、こう対応されたとか。相手がこういうバスケをしてくるというのをトムさんが説明してくれます。僕たちはそれを経験しているのですぐに理解できますが、初めての選手を含め、みんながそのイメージをできるように、プレーで出せるように意識してやっています」

今シーズンの古川は、Bリーグ初年度に記録した平均11.1得点に次ぐ、平均11.0得点を記録し、チーム初のチャンピオンシップ進出に貢献した。そして、リーグ中には代表活動にも招集されるなど、ベテランと呼ばれる域に来た今も、成長を続けている。自身の歩みを止めることなく、仲間の成長も手助けする古川の存在は日本代表にとって大きいに違いない。