ホーネッツ

戦力不足も勝率5割を超えるチームへと成長

ホーネッツが指揮官のジェームス・ボーレゴを解任するという衝撃的なニュースが飛び込んできました。2年続けてプレーイン・トーナメントで敗れたとはいえ、43勝39敗はホーネッツとして6年ぶりの勝率5割超えの好成績で、ボーレゴの下で着実に力をつけてきたにもかかわらず、このタイミングでの方針転換は不可解なものがあります。

ボーレゴがヘッドコーチに就任した時のホーネッツは、ケンバ・ウォーカーを中心に構築されており、ドアマットチームではないものの、大きく勝ち越せるチームでもなく、ポジションで役割も固定されているなど戦い方も安定志向でした。そんな閉塞感の漂うチームに、ボーレゴは大胆かつ革新的な手法を持ち込んでスタイルを一変させました。

スピードのあるガードを多く並べ、積極的な3ポイントシュートとドライブの組み合わせを中心にしながら、オフボールでの仕掛けや流動的なポジションチェンジも増やしたことで、多彩な攻略パターンで魅力あふれるオフェンスへと変貌しました。さらにスピードを生かしたアグレッシブなディフェンスも、多用なトラップとローテーションが徹底された戦術で全員がハードに戦うチームになりました。また、シュート力に大きな課題があったウイングのマイケル・キッド・ギルクイストをスピードとハードワークで貢献するセンター役にコンバートするなど、選手の個性に合わせた大胆な起用法も目立ちました。

ボーレゴの1年目は、あまりにも大胆な変革で即座に好成績に繋がるものではなかったものの、未成熟ながらも前年よりも勝ち星を伸ばしており、未来を感じさせる結果も示しました。過渡期を迎えていたチームから主力は次々と去っていき、今でも残っているのは当時ルーキーだったマイルズ・ブリッジスだけになっていますが、ボーレゴという確たる方向性ができたシーズンであり、以降は明確なチーム作りが進められました。

2年目からは再建期が始まりましたが、戦力不足は否めず、ボーレゴの意図するオフェンスを実行してもフィニッシュの精度不足で得点はリーグ最下位に沈みました。しかし、そこからチームとして成熟が進み、迎えた今シーズンはリーグ4位まで得点力を上げてきました。わずか2年の間にリーグ有数のオフェンスチームを作り上げた手腕は高く評価でき、ボーレゴの方向性が正しかったことを示しています。

この間のホーネッツは2020年のドラフト3位でラメロ・ボールを指名した以外は、10位以内の指名権を手に入れておらず、再建チームと言っても超有望株を集められたわけではありません。むしろデボンテ・グラハムやコディ・マーティン、ジャレン・マクダニエルズといった特徴のある2巡目指名の選手を戦力化したことで、層の厚いロスターを作り上げており、育成の面でもボーレゴは結果を残しています。長くドアマットに留まることなく、勝率5割を超えるチームへと成長しました。

方向性を間違えると再び転落する可能性も

もちろん、ボーレゴにも欠点はありました。2年続けてプレーインでは大敗しており、積極的に仕掛けていく姿勢が緊張感漂う試合ではデメリットとして具現化されることが多く、リスクを取りすぎバランスに欠ける采配が目立っています。しかし、このことは若いチームにはありがちな光景であり、すべてをヘッドコーチの責任にすることはできません。ホークスと戦った今シーズンのプレーインは3クォーターに18点差をつけられて勝負が決まりましたが、このクォーターはラメロとテリー・ロジアーが2人で18点を奪った一方で、ガードコンビがあまりにも積極的に仕掛け過ぎたことでボールが回らず、カウンターからの失点を増やしてしまいました。

ガードに積極性とオフェンス力を求めすぎたロスター構成も、試合運びが下手という弱点に繋がっています。ゲームをコントロールできるベテランがいれば解決した問題なだけに、ゴードン・ヘイワードの離脱が痛かったとも言えます。

ボーレゴの4年間でチームは大きく成長してきました。それでもヘッドコーチの交代を求めたからには、ホーネッツは方向性そのものを見直すことになります。短期的に勝利を求める場合は、ショック療法として機能することもありますが、若手中心のホーネッツは中長期的にチームを成長させる必要があるだけに、方向性を間違えると再び転落する可能性もあります。

このオフのホーネッツはブリッジスやPJ・ワシントンの契約延長が控えており、チームの総サラリーを考えると大きなトレードに動く可能性もあります。ラッセル・ウエストブルックの獲得も噂になっていますが、ヘッドコーチだけでなく、ロスターも入れ替わって来シーズンを迎えることになるかもしれません。久々に勝率5割を超えたホーネッツですが、ボーレゴの解任を皮切りに、大きな変革が行われるオフになりそうです。