文・写真=小永吉陽子

第3クォーターのオフェンスリバウンドが勝敗を分ける

「前回、2連敗したので悔しい思いがあった。今回はディフェンスで名古屋をロースコアに抑えたことが勝因」

注目の西地区首位攻防戦、名古屋ダイヤモンドドルフィンズとシーホース三河の一戦は、試合後に三河の鈴木貴美一ヘッドコーチが語ったように、名古屋を64点に封じ込めるディフェンスを発揮して勝利した。

アウェーながら三河は負けられなかった。10月1日と2日の試合では、78-73、87-82で名古屋が2連勝を飾っている。10月上旬、リーグ開始時の三河は、日本代表の橋本竜馬と比江島慎が合流したばかりでチームが噛み合わず、またベテラン司令塔の柏木真介がコンディションが整わずに試合に出ることができなかった。全員が復調した今回はディフェンスから修正して勝利をもぎ取りに来たのだ。

一進一退の接戦から動いたのは第3クォーター中盤。3点のビハインドを追っていた三河が、桜木ジェイアールとアイザック・バッツを中心にリバウンドを取り始めるとゲームに流れが生まれ、橋本が3ポイントを決めて38-38の同点。ここで攻め急いだ名古屋に対し、三河はバッツがバスケット・カウントを決めて流れを掌握。また名古屋のレジー・ゲーリーヘッドコーチがテクニカルファウルとなり、それによって得たフリースローを金丸晃輔がきっちり沈める。さらには、オフェンスリバウンドから金丸が3ポイントと一気の攻勢に出る。ここで38-44と差をつけられた名古屋はたまらずタイムアウトを請求する。

リバウンドを支配することでリードを得た三河は、以後は僅差ながら主導権を握る。第4クォーターにはゲームコントロール力のある柏木真介をコートに送り出す盤石の体制を敷いて勝負に出た。

「コントロール力」を高めた三河、足が止まった名古屋

名古屋に勝機がなかったわけではない。第4クォーター残り7分には56-58まで迫っているし、三河はバッツと桜木がファウルトラブルにも陥っている。しかし、名古屋は流れを手繰り寄せるまでには至らず、打てども打てどもシュートが入らない。いや、タフショットを誘っていた三河のディフェンスの術中にハマったというべきか。

残り3分48秒、ジェロウム・ティルマンがフリースローを決めて58点目を取るまで名古屋は4分間ノーゴール。終盤には三河が比江島の得点でたたみかけて75-64で『愛知ダービー』の1戦目を制した。

三河の勝因は52対35と上回ったリバウンド。とくに19対9本で圧倒したオフェンスリバウンドが効いた。また、前半は2得点と沈黙していた金丸が3クォーターに固め打ちで連続8得点するなど、勝負どころを見逃さなかったことが大きい。

ここ数試合、名古屋はオフェンスが止まる時間帯が見受けられ、得点力が落ちている。今シーズンは張本天傑、中東泰斗、笹山貴哉ら若手が伸びて勝利を重ねてきただけに、足の故障から復活した石崎巧や鵜澤潤といったキャリアがある選手を中心に立て直したいところだ。その修正点として中東は、「スローテンポな三河のゲームコントロールに乗らずに、僕たちのいいところである速い攻撃を出して攻めなければ」と課題を上げた。

三河はこの勝利によって、8勝3敗で名古屋と並び同率首位となった。持ち前のゲームコントロール力で徐々に調子を上げてきた三河と、勢いを取り戻したい名古屋の首位争い。10月30日の2戦目を制したほうが単独首位に出る。