バーノン・マクリン

文=鈴木栄一 写真=野口岳彦

14得点11リバウンドの数字を大きく上回るインパクト

10月4日、川崎ブレイブサンダースはB1の先出し開幕戦となるアウェーでの千葉ジェッツ戦を81-72で制した。この試合、川崎はリーグ最強ビッグマンであるニック・ファジーカスが今夏に行った左足の手術から回復途中であり「まだ状態が100%でないので、私の判断で出しませんでした」との北卓也ヘッドコーチの考えで欠場することに。それでもバーノン・マクリン、シェーン・エドワーズ、鎌田裕也とインサイド陣が奮闘し、ゴール下の戦いで千葉に主導権を渡さなかったことが大きな勝因となった。

エドワーズは15得点8リバウンド7アシストとオールラウンドな活躍。そしてマクリンは14得点11リバウンドのダブル・ダブルを記録したが、そのインパクトはスタッツを大きく上回る。強靭なフィジカルを生かしたインサイドの支配力、リーチの長さを生かした堅実な守備、そして豪快なダンク。チームに勢いをもたらし、勝利の立役者の一人となった。

それでも試合後の本人は控え目で、「コーチのゲームプランをしっかり遂行し、チーム一体となって戦うことができた。守備ではしっかり戻れたし、相手の攻撃を1回で抑え、セカンドチャンスを防ぐことができた」と静かに語る。千葉のキープレーヤーであるギャビン・エドワーズを要所で抑えた点についても「僕が1対1でギャビンを抑えたわけじゃない。あくまでチームとして守れた結果だよ」と、チームでの成果を強調した。

バーノン・マクリン

「常に全力でプレーしてファイトするだけだ」

マクリンは「勝ったことに満足している。これが最も重要なことだからね」と語るが、話題が自身のパフォーマンスに移ると言葉が厳しくなった。「イージーシュートを何本かミスした。普段なら決めているものだ。ゴール下で確実にシュートを決めることにはプライドを持っていて、もっと良い仕事ができたはずだ。守備でも相手のオフェンスリバウンドをもっと抑えたい。それにブロックできる場面もあったので修正しなければ」

ファジーカスが不在だったことについては「ニックはもちろん素晴らしい選手で、彼がいれば大きなプラスとなる。ただ、彼の不在が特別プレッシャーになったわけではなく、いつも通りのプレーをした」と特に意識することはない。しかし、「ファウルについては、より注意しないといけない。今日の3つのファウルのうち、2つは不用意なファウルだった」と反省していた。

新しいリーグ、新しいチームでの開幕戦で、さらにエース不在でゴール下の要となることが求められる。このような状況で平静を保つのは難しいものだが、それでもマクリンはいつもと同じメンタルでプレーしていたと振り返る。それは「僕は試合だけでなく、練習、ミーティングでも高いモチベーションを持って取り組んでいる」と、何事にも全力投球であるからだ。

この彼の姿勢は、「すべてのゲーム、すべてのクォーター、1分1分のすべてがチーム作りに重要なんだ。どんな結果になろうが、常に全力でプレーしてファイトするだけだ」と、良い意味で開幕戦を特別視していない発言にも現れている。

バーノン・マクリン

「アウェーのタフな状況で、声援が大きな力になった」

キャプテン篠山竜青が新外国籍選手の2人について、「ちょっとニックに遠慮している部分があると練習の中で感じていました。そこを解消するためにもっとバランスを考えないといけないな、と考えながら準備をしていました。ただ、ニックが試合に出られないということで、彼らは本当にのびのびとプレーできたと思います」と振り返るように、まさにケガの功名という側面もあったかもしれない。

だからこそ、中1日を置いた土曜日の試合で、同じような活躍ができるのかは興味深いところだ。「次の試合、相手がアジャストしてくることは分かっている。それにどう対応するかだ。自分のスタッツについて気にすることはない。ただ、もっと様々な部分を改善できる」と本人は言う。

ファジーカスは帰化選手であり、マクリンとエドワーズとの同時起用も可能となる。新外国籍選手の2人がその力をのびのびと発揮し、そこにファジーカスが加われば、まさにリーグ最強のフロントコートが出来上がる。現状では机上の計算にすぎないが、実現の見込みは十分にある。

冷静な受け答えに終始したマクリンだが、この開幕戦について笑顔を見せた答えが一つあった。それは、「彼らがベンチの近くで声援を送り続けてくれたことは、このアウェーのタフな状況の中、大きな力となったよ」と完全アウェーの状況において、声援を送り続けてくれたファンのサポートだ。控え目な発言とは真逆の豪快なプレーで、川崎のゴール下はファジーカスだけでないことを強烈に示したビッグマンが、果たして川崎を開幕連勝スタートに導くのか。明日の試合でのパフォーマンスも楽しみだ。

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