マット・ジャニング

川崎ブレイブサンダースの大きな強みとなっているのが、帰化枠のニック・ファジーカスと2人のビッグマンを同時起用するビッグラインナップだ。そこに今シーズン、新たな武器として加わったのがマット・ジャニングだ。クイックリリースから放つ3ポイントシュートを持ち味とするシューターは、川崎のオフェンスに爆発力をプラスしている。来るべき天皇杯の決勝でも、ジャニングの長距離砲が炸裂するか、しないかは試合の行方に少なくない影響を与えるだろう。シーズン終盤の強豪対決、そして天皇杯と、ビッグゲームでより存在感が大きくなってくるジャニングにここまでのプレーについてなどを聞いた。

「何人かの選手がヨーロッパでプレーできるのは間違いない」

――まず、シーズン前半を終わっての自身のプレーについてはどんな手応えを得ていますか。ここまで試合を重ねて、Bリーグへの印象を教えてください。

もちろん常に何か改善しないといけないところはありますが、良いプレーができていると思います。チームはシーズン序盤に連勝が続いた後、1勝1敗と、1勝2敗のようなこともありました。ただ、東地区で上位に位置していますし、リーグ制覇を狙える位置にいることはハッピーです。

Bリーグのレベルは高いと思います。もちろんユーロリーグと比較したら劣ってしまいます。しかし、欧州の国内リーグ、スペイン、トルコ、イタリアといったところでも複数のチームは戦えるでしょう。そして、日本には多くの素晴らしい選手たちがいます。例えば僕たちのチームだけでも(藤井)祐眞、(篠山)竜青にハセ(長谷川技)といったベテランたちは、どうやったら正確にプレーできるかを分かっています。何人かの選手がヨーロッパでプレーできるのは間違いないです。

――そもそもジャニング選手は、長年に渡って欧州で確固たる実績を残してきました。このまま欧州の強豪国のリーグでプレーを続けることはできたと思います。その中で、川崎を選んだ決め手はどんなところでしたか。

新しいマーケットにチャレンジして、そこでも活躍できるところを示したかったです。Bリーグは右肩上がりで成長しており、外国籍選手としてより早いタイミングでプレーする方がいいと思いました。あと2年くらいヨーロッパにいることもできましたが、そうなると日本でプレーできる可能性は閉じてしまう。より早い時期に来ることで、引退するまで日本で4年、5年とプレーできると思いました。これは僕のキャリアにおける岐路だったと思います。

新たなチャレンジは楽しいものです。エージェントが「日本の首都圏にあるチームが興味を持っている」と教えてくれ、僕にとって興味がある内容でした。そこからニック(ファジーカス)、ケビン・ジョーンズ、ジョーダン・テイラー(アルバルク東京)と日本のいろいろな場所でプレーしている選手に話しを聞きました。とても良い話が聞けたので、僕は日本に挑戦すべきだと思いました。

――ファジーカス選手とは昔から知り合いだったのですか?

ニックの大学時代のプレーを見た記憶がありますが、川崎に入る前に面識はなかったです。友人であるテイラーに、ニックの電話番号を教えてもらいました。それで話をして、彼が川崎についてほぼすべての情報を教えてくれたのは、川崎に加入するに当たって大きな助けとなりました。

テイラーとは14歳、15歳の時、中学から高校まで同じチームでプレーしていました。そして、テイラーが海外で最初にプレーしたのはイタリアで、その時僕はイタリア2年目で、イタリアリーグのファイナルで対戦しました。その後、僕がスペインのチームにいた時も戦い、今回のように再び日本でも対戦しています。子供の時を一緒に過ごした仲間と、こうしてプロになっても対決できるのは楽しいですし、一緒に食事をする時の話のネタにもなります。

マット・ジャニング

「パブロが何故このチームに残りたいのか、今はその理由が分かります」

――Bリーグと欧州ではプレースタイルと違うと思いますが、どんな印象を抱きましたか。

Bリーグは、ヨーロッパと比べるとよりアップテンポです。ヨーロッパはよりハーフコートでセットオフェンスを使い、毎回クオリティーの高いポゼッションを作ることを重視します。日本は多くのトランジション、3ポイントシュートを打ちます。

これには適応しなければいけなかったですが、ペースが速く、3ポイントシュートをどんどん打つのは自分に合っています。これこそ僕がやりたいプレーです。特にここ4年、5年はスクリーンを使って外角から打つことが自分の役割でした。川崎ではシューターとしてだけでなく、ボールハンドラーとなりピック&ロールを使って攻める。時にはポイントガードもこなします。より大きな責任を負ってプレーできることは僕にとって楽しいです。

――スタイルの違いにはもう慣れましたか。

アジャストはよくできていると思います。シーズンの出だしは調子が良かったですが、そこからケガで少し離脱し、復帰した後もアップダウンがありました。特に3ポイントシュートの確率が悪い時もありましたが、そこにフォーカスしてスムーズにプレーできていると思います。シーズン前にも僕はクリエイトしたり、パスをするのが好きと話しました。味方のオープンシュートの機会を作り出すことはチームの助けになります。コーチは僕を信頼してくれます。チームのスタイルに納得していますし、選手にとってアジャストしやすい環境です。新しいコーチと選手の関係としては、素晴らしいものができていると思います。

――スペインでのプレー経験も豊富なジャニング選手ですが、元スペイン代表であるパブロ・アギラール選手とは昔から繋がりはありましたか。

パブロが日本に来る前、スペインで何度か戦っています。また、僕がロシアのチームにいた時、当時パブロがいたグラン・カナリアと対戦したこともあります。ただ、ニックとの関係と同じで、どんな選手なのかは知っていたけど親交はなかったという感じです。

川崎からオファーがきた時、パブロが在籍していたことを知りましたが、パブロはスペインに帰ってリーグの上位チームと契約すると思っていました。その彼が残留したことは川崎が素晴らしいチームであることを示しています。実際、川崎はバスケットボールの部分だけでなく、家族と一緒に過ごす環境としても良い場所です。パブロが何故このチームに残りたいのか、今はその理由が分かります。

マット・ジャニング

ファジーカスとの連携に手応え「彼がいることで僕はより簡単にプレーできる」

――バスケットボール以外について、日本での暮らしは慣れましたか。

コロナ禍でいろいろと行動は制限されていますが、その中でも日本での暮らしを楽しめています。感染が再拡大する前には、お寺などにも行きました。ここでは良いレストランや観光する場所が近くにあるのは素晴らしいです。家族も満喫しています。娘たちもプリスクール、ショッピングモールなどにいって、日本語はしゃべれなくても地元の子供たちと遊べるのを楽しんでいます。とても素晴らしいことです。

家族が来る前、ニック、ジョーダン、パブロと一緒によくご飯を食べにいきました。ニックは美味しいお店をたくさん紹介してくれました。妻もお店をリサーチするのは好きです。言葉の壁があるのは少し大変です。日本語を理解するのは難しいですが、分かるようになりたいです。ただ、僕たちは大都市に住んでいて、周りにはたくさんの選択肢があるので、アジャストするのは難しくなかったです。

――周囲の人は日本に行くと知った時、どんな反応でしたか。

みんな、僕がヨーロッパに残ると思っていて、日本行きには少し驚いていました。ただ、日本行きを伝えてからのみんなの反応は、「いつ会いにいけばいいの?」でした。みんな川崎であったり、近くの東京を訪れたいんです。コロナが終息し、入国がスムーズになったら多くの人たちを出迎えたいです。

――これからシーズン終盤、チャンピオンシップに向け川崎が勝ち星を積み重ねていくための鍵はどんな部分になると思いますか。

ディフェンスとターンオーバーです。ミスを少なくして、手堅いディフェンスを継続していく。この部分の安定感を高めていけば、ここから多くの勝利を重ねていけると思います。そのためにはマインドセットが大事です。時に集中力を欠くこともあるので40分間、しっかり保たないといけないです。

――外国籍のルールと、ポジションのバランスもあり、ジャニング選手がプレーする時はニック選手との併用がほとんどです。連携についてどんな手応えですか。

僕たちは2人ともベテランで、正しいプレーをどのようにすればいいのか分かっています。2人がコートに立っていることで、相手にとって大きな問題を作り出すことができます。ニックはオフェンスでなんでもできる選手で、彼がいることで僕はより簡単にプレーできます。ただ、新しい選手との連携を深めていくには、誰でも少し時間がかかるものです。試合を重ねることでコンビネーションはよくなっていきます。

――最後にファンへのメッセージをお願いします。

ファンの皆さんのたくさんの応援に感謝しています。また、Twitterやインスタグラムのフォロー、温かいメッセージをくれたりすることに感銘を受けています。試合に来てくれてのサポートもありがたいです。これからもよろしくお願いします。