ワールドカップに挑んだ女子日本代表で代替え不可能な選手、それがキャプテンの髙田真希だ。3ポイントシュートからインサイドプレーまでこなし、相手のインサイドを一試合通してタフに抑え、4試合で平均38.6分出場する日本の大黒柱だ。ただ、今回のチームはその大黒柱に負担がかかりすぎてしまった。インサイドが髙田だけでは世界を勝ち抜くのは厳しかったのが事実。サイズのなさをチーム力で補おうとしたが、今大会は世代交代期にもあたり、勝負の場面に出るメンバーが固定されてしまった。戦える選手層をもっと厚くすることは急務だ。
それでも、この発展途上のチームがグループラウンドで2勝をもぎ取ったことは、日本に地力がついて前進している証でもある。キャプテンの髙田に今大会を振り返ってもらうとともに、今後日本が世界で勝つために必要な課題を聞いた。悔しい経験は次につなげなければならない。
キャプテン髙田真希の大会総括(前編)「責任を持って戦おうとやってきました」
「半年間の合宿をしたからこそ、戦えるチームになった」
──今大会はベルギー戦もプエルトリコ戦も15点前後のリードを奪うトランジションゲームを展開しながらも、足が止まって詰められてしまう場面が多々ありました。その原因は?
特にプエルトリコ戦は相手のほうがアグレッシブだったので、シュートに行けると思った時に手が出てきたり、相手にボールを取られてしまったり、最後まで細かいところが突き詰められませんでした。ほんの小さなことなんですけど、こういうミスが相手のリズムにつながってしまったんだと思います。そういう細かいところまで全員が徹底できないと日本は勝てないです。
ただ、日本は半年間の合宿をしたからこそ、サイズがなくても戦えるチームになったのだと言いたいです。能力の高い国のように大会に入って調子を上げていくような戦い方はできないので、私たちの場合は合宿からどんどんスキルアップをさせて、チームを作っていくしかないと思います。半年間でチームの精度を上げたからこそ、若い選手が入った戦力でも戦えました。でも、その精度をもっと上げていかないと世界では勝ち切れないということも分かった大会でした。
──ヘッドコーチは「このチームは経験が足りない悪い面と、メダルを狙える良い面の2つの顔がある」と言っていましたが、キャリアのなさもあと一歩の詰めが甘かった原因ですか?
若いことを言い訳はしたくないですけど、経験は大事です。プエルトリコ戦で細かいところまで徹底できず、相手にアグレッシブさを出され、自分たちが受け身になるとリズムが崩れてしまうということが、若い選手たちは分かったと思います。それでも、最後に勝てたことが良かったと思うので、これを経験にして次に生かすかどうかが大切です。若いチームでも予選ラウンドで2つ勝ち切ったことには大きな価値があると思っています。
「出ている5人だけでなく、12人全員が徹底できるように」
──髙田選手から見て、経験のなさというのは、具体的に何が足りないのでしょうか。
一人ひとりの判断力です。ディフェンスで言えば、世界でもアジアでも、みんな日本より大きな相手なので、日本はインサイドにダブルチームに寄らないといけない。インサイドからパスをさばかれれば、そこから走らなければならない。その時に相手がどこにパスを出そうとしているのか、次のプレーを読むとか、そうした判断力を高めないといけないです。その判断が一歩遅れてしまうだけでもドライブされたり、裏を突かれてしまったりします。
国際大会は毎回違う相手に対してアジャストしなければならないです。今日の相手はこういう守り方が必要だというのを4人が分かっていても、一人が分かっていなければローテーションは崩れてしまいます。また誰か一人でも気持ちが落ちていると、そこから崩れていってしまいます。世界大会だと相手はしっかりとアジャストしてくるので、それに対しての判断が必要になるのです。試合に出ている5人だけでなく、12人全員が徹底できるようになればもっと強いチームになれます。
──今回は昨年までと大幅にメンバーが変わり、若手を入れて勝負しなければなりませんでした。経験がある髙田選手としては、どのように引っ張っていったのでしょうか。
バスケットだと最初に出る5人の動きが重要だと思ってやっていました。5人がしっかりゲームの流れを作っていけば、あとから出る選手はリズムが出てくるし、やることも分かってきます。
若い選手たちは、最初の頃はスタートの5人が作るゲームの形や、経験ある選手の動きについていくだけでいいです。スタートの主力選手や、上の世代がしっかりと下の世代に見せていくことが大事で、それを見て下の世代は自分が感じたことを吸収して挑戦することで経験値が上がりますし、判断力がついてきます。宮澤選手はそれができるようになったし、そういう選手が一人でも増えていけばチームは成長していきます。
「悔しいですけど、このチームで戦えて良かったです」
──反省ばかり出てきましたが、今大会の収穫点としては何が挙げられますか?
若い選手が多いので、この結果も一つの経験です。このような舞台で負けるのは悔しいことで、中国戦が終わった後の控室ではみんながすごく悔しい表情をしていたので、そういった気持ちが持てたこと、この悔しさを味わったことが経験になりました。絶対にこの悔しさを忘れないでほしいです。東京オリンピックにつなげていくためにも、こういった経験ができたことが一番の収穫です。2勝できたのはこれからにつながるし、自分たちがつなげていかなきゃいけないです。
──では、今後の日本の課題はあらためて何になるでしょうか。
一番は技術、高さがある選手に対抗する技術が足りないです。日本は小さいのでチーム力で戦っていかなければならないのですが、その中でも一番はシュートの確率を上げること。相手の高さとか関係なく、自分たちが強く最後までフィニッシュにいく力が必要です。それと同じくらいディフェンスで徹底すること。その2つがもっともっと身に着けば、身長の小ささは関係なくなると思っています。間違いなく、今ここにいる選手たちは技術を上げていける選手。日本の選手たちは経験を積むことによって、もっともっと上にいけると思います。
──今回でワールドカップ出場は3回目でした。髙田選手にとってワールドカップとは?
出るたびにチャレンジする大会でした。今回のワールドカップはメダルを目指していて、それが果たせなかったのですごく悔しいです。個人的に考えると、1回目(2010年)のワールドカップはベンチにいることが長く、2回目(2014年)は3番(スモールフォワード)に挑戦してあまりリズムがつかめず、3連敗で終わってしまったのですが、今回は本来の4番(パワーフォワード)だったのでやっていて楽しかったですし、すごく自分自身にとって良い経験になりました。ただ、こうして準々決勝を目の前で見れば、この舞台に立ちたかったし、勝てるチャンスがあっただけに、ただただ悔しい思いが込み上げてきます。
──悔しい思いは次につなげてほしいです。次なる目標を聞かせてください。
悔しいですけど、このチームで戦えて良かったです。この大会で自分のプレーが広がったことは感じていて、まだまだもっともっと成長できると思いました。自分は東京オリンピックまで続けたいです。まずは日本代表に選ばれないといけないですけど、そこは今以上にプレーの幅を広げながら挑戦していきたい。そう決心した大会でした。