「爆発力は多分、どこのチームよりもあると思うんです」
NBL王者の川崎ブレイブサンダース相手に2敗を喫し、リーグワーストの8連敗を喫した富山グラウジーズ。だが、この金曜と土曜の敗戦は、同じ負けでもこれまでとは雰囲気がまるで異なる。これまでは個々が何とか状況を打開しようと奮闘しつつも、チームとして一つの力にならず、結果として選手それぞれがフラストレーションを募らせていた。しかし、今節は個々の努力がチームとして噛み合った印象がある。
先週、横浜ビー・コルセアーズに連敗した後、オフェンスのやり方を「去年までの方向に戻した」と城宝匡史は言う。「それでうまくプレーできるようになったので、これから良くなる兆候は見えています。僕自身も期待しています」
その富山でひときわ目立っているのが宇都直輝だ。アルバルク東京にアーリーエントリーで加入した時からスピードには自信を持っており、思い切りの良いプレーがハマれば、おそるべきパフォーマンスを発揮する。その宇都がハイテンポなバスケットに見事にハマり、チームのけん引役となったのが今節の2試合だった。
宇都は言う。「負けていい試合はないですけど、良い負け方と言うか……良くなってきての負けなので。チームとしての出来はあと少し、詰めていかなきゃいけないところを詰めていけば絶対に勝てるという感じです」
金曜も土曜も、時間帯を区切ってみれば川崎を圧倒する時間帯はあった。そこは間違いなく富山の強みだ。「何度も延長に行ったりとか、接戦に持ち込んではいるので、爆発力は多分、どこのチームよりもあると思うんです。その爆発力を負けてる段階でもってくるのか、まだ少しの差のところでもってくるのか。勝利のためにはそれを意識しなければいけないと思います」
宇都のダイナミックなプレーは、富山の爆発力を構成する重要な要素だ。「僕は自分で行くことを意識しています」と宇都は言う。「あとは、ディフェンスをやらせてチームでイージーな得点を取れるようにみんなで走ろう、って声をかけています」
「僕も含めて今シーズンから入ってきた選手が多くて、うまく噛み合っていない部分も多かったんですが、僕がガードとして入っている時にそれが原因になっては絶対に良くないので、ハドルを組んで外国人選手にも声をかけます。先輩も多いですけど、そこはガードの責任だと思って」
「自分たちのバスケットをやるところからやっていきます」
様々な事情があり、開幕時点でのチームの完成度は低かった。だが、ここに来てようやくケミストリーが形として見られるようになってきている。ケガ人は大きなマイナス要素だが、それを言い訳にすることなく、ドリュー・ヴァイニーがケガから戻って来るよりも早くチームは浮上のきっかけをつかんだ。城宝は金曜の試合後にこう語っている。「オフェンスのバリエーションにしても、ヴァイニーがいたらマッチアップ的にも全然違います。でも、その中でもこういう試合ができるということはポジティブに思ってもいいんじゃないですかね」
宇都が加入したことでポイントガードからシューティングガードに移った城宝も、若い宇都の働きを認めている。「宇都は良い働きをしてくれて、アシストも結構できます。僕と岡田(優)がウイングで、シュートを狙えば相手は嫌だと思います」
ただ、まだ勝ったわけではない。善戦するのは簡単だが、勝つのはそれよりずっと難しいのだ。宇都は言う。「今はチームの最低目標として勝率をタイまで持っていくことを考えています。一つひとつ、自分たちのバスケットをやるところからやっていきます」
個人的な目標を聞くと、こんな答えが返ってきた。「ハッスルして勝ちにこだわる姿を観客の皆さんに見せられるように。わざとそうするんじゃなくて、僕は負けたくないので。そういう姿を見ていただけたら、ホームでもアウェーでも応援したくなるような選手になれるんじゃないですかね。そういう選手を目指しています」
「僕はうまくなりたくて富山に来ました。どんどんシュートを決めたいし、アシストもしていきたいですけど、まずは勝つことが一番大事。それができるように自分の仕事をしていきたいです」