女子日本代表

難敵相手にも3ポイントシュートを中心とした日本の個性を存分に発揮

女子日本代表は、ワールドカップ世界最終予選を1勝1敗で終えた。本来ならば4カ国で3つの本大会出場の切符を争うはずだったが、ベラルーシがコロナ禍に見舞われたことで参加を辞退したため、日本、カナダ、ボスニア・ヘルツェゴビナは、勝ち負けにかかわらずそれぞれ2試合を成立させたことで、来年9月にオーストラリアで開催される本大会出場となった。本大会行きが無事に決まったのは良かったが、本来ならば経験できた緊迫感のある機会が失われたのは残念だった。

日本は初戦のカナダ戦で、最大で20点差を追いかける劣勢を覆しオーバータイムの末に79-86で逆転勝利。一方、ボスニア・ヘルツェゴビナ戦では序盤からリードしながら、第4クォータにひっくり返されて82-87と逆転負けを喫した。

この対照的な2試合の内容が示すように、今大会の日本には収穫と課題、大きく通用した部分と修正しなければならない部分が明確に存在した。

大会前、日本代表は5連覇を達成したアジアカップの中心メンバーと、アジアカップに出場しなかった東京オリンピックのメンバー、さらには2020年2月以来の国際大会となる渡嘉敷来夢も含め、若手とベテランの融合が期待されていた。ただ、五輪で中心メンバーだった町田瑠唯、宮澤夕貴がコンディション不良で選出されず。恩塚享ヘッドコーチは「今、選び得る最高の12名を選出しました」と語ったが、全体的に見ると若手の出番が増える戦いぶりとなった。

ただ、そこで若手が世界ランキング4位のカナダ、世界ランキングは27位だがWNBAのMVPプレーヤーで世界最高峰の選手であるジョンクェル・ジョーンズを擁する新興勢力の筆頭であるボスニアと、難敵相手にも3ポイントシュートを中心とした日本の個性を存分に発揮したのは大きなプラス材料だった。

中でも大会ベスト5を揃って受賞した赤穂ひまわりと馬瓜ステファニー、さらに山本麻衣の奮闘ぶりは目立っていた。赤穂は持ち前のオールラウンダーぶりを今回も存分に発揮。カナダ戦では15得点5リバウンド、ボスニア戦では3ポイントシュート4本成功を含む17得点7リバウンド2アシスト2スティールを記録。ボスニア戦に日本が勝っていたら大会MVPはジョーンズではなく、赤穂が受賞していたであろう質の高いプレーだった。的確な状況判断による落ち着いたプレーぶりと合わせ、経験豊富な『お姉さんたち』についていくのではなく、代表を引っ張る中心選手の一人になったことを証明した。

馬瓜ステファニー

赤穂ひまわりと馬瓜ステファニー、山本麻衣の奮闘が目立つ

今大会の日本は2試合で3ポイントシュート合計63本中28成功と、東京オリンピックで世界を沸かせたスモールボールの破壊力が健在であることを示した。一方でゴール下へのドライブは少なかったが、この部分で存在感を発揮したのが馬瓜だ。クイックに加え、3×3で鍛えられたコンタクトの強さを生かしたドライブはオフェンスの貴重なアクセントとなっていた。そして赤穂と同じく馬瓜もサイズ、アジリティーを兼備し、ガードからインサイドまでミスマッチなく相手を守れることで、ディフェンスの大きな助けとなっていた。

山本は積極的なシュートに加え、インサイドの選手にここしかないタイミングで合わせのパスを通すなど非凡な創造性を見せ、試合の流れを変えられるインパクトプレイヤーになっていた。また、前から激しくプレッシャーをかける密着ディフェンスで相手ポイントガードの足を止め、チーム全体の守備の強度を上げるトリガー役になるなど、163cmと誰よりも小さいがディフェンスでも好影響を与えていた。余談ではあるが、カナダ戦をゴール裏で試合を観戦したボスニアの選手たちから、山本のサイズ不足を感じさせないタフディフェンスに対し「Oh my god!!」という感嘆の声が漏れていたのは印象的だった。

一方、課題として挙げたいのはオフェンスのバランスだ。前述したように馬瓜のドライブは目立ったが、チーム全体としてペイントタッチが不足していた印象は強い。東京オリンピックで町田が見せたように、ガード陣がゴール下にドライブしてのレイアップ、もしくはキックアウトからのパスでシュートに繋げていくシーンをもっと増やすことができれば破壊力はより増す。

前ヘッドコーチのトム・ホーバスと比べ、恩塚亨は選手自身の判断力、クリエティブな力をより重視するスタイルだ。それが噛み合うと変幻自在な戦いができるが、現状のコンビネーションはまだまだ発展途上。ディフェンス面でもボスニア戦でジョーンズにやるべきことを徹底できず。彼女自身が好調だったにせよ36得点を許したのは日本の対策が機能しなかった面もある。

ただ、オリンピックからの継続ではなく、さらなる進化を求めて新たなチャレンジをしている今の代表が、まだまだ未完成であるのは致し方ない。若手の台頭による新たな可能性と、乗り越えなければいけない課題、その両方がしっかり見えた今回の予選となった。7カ月後のワールドカップ本大会までにチームの完成度をどこまで高められるか。