球団社長「正しいコーチを選ぶという意味で、このことから学んだ」
ペイサーズにとっては失意のシーズンだった。34勝38敗はウィザーズと並び東カンファレンス8位の成績。プレーイン・トーナメントでは初戦でホーネッツを破ったものの、プレーオフ進出を懸けたウィザーズとの試合では142失点の大敗でシーズンを終えた。シーズンを通してケガ人が多かったし、トレードで獲得したキャリス・ルバートがメディカルチェックで腎臓に腫瘍が見つかり2カ月の欠場を余儀なくされるなど、多くのことが予定通りに行かなかった。
最も大きな誤算はヘッドコーチのネイト・ビョーグレンがチームに順応できなかったことだ。ニック・ナースのアシスタントコーチを長く務め、ラプターズではNBA優勝に貢献。NBAでも屈指の戦術家として知られるナースは、長く自分の副官を務めたビョーグレンにヘッドコーチのチャンスが与えられたことを喜び「間違いない手腕の持ち主だ」と太鼓判を押していた。
それでも、若い選手を育てながら4シーズン連続でチームをプレーオフに導いていた前任のネイト・マクミランを、契約延長で合意したばかりにもかかわらず解任したことで、インディアナには指揮官交代を歓迎しない空気があった。若い選手たちを戦術で縛るのではなく、自由にプレーさせて個性を引き出してきたマクミランは選手からの信頼が厚かった。球団としては、4年連続でプレーオフには進出していても、すべてファーストラウンド敗退という責任を取らせたのだが、現場は納得していなかった。
開幕3連勝スタートと結果が出ていたシーズン序盤は良かったが、負けがこむと不協和音は隠せないものとなった。ドマンタス・サボニスにマルコム・ブログドン、TJ・ウォーレンと主力クラスの選手からビョーグレンへの不満が出るようでは、チームがまとまるはずもない。
プレーオフで勝ち上がるための指揮官交代は、プレーオフ進出を逃すという最悪の結果に終わってしまった。そして、解任したマクミランはシーズン途中から臨時ヘッドコーチの立場でホークスの指揮を執るようになった。そのホークスは4年ぶりにプレーオフに進出し、ファーストラウンドを突破して今も戦い続けている。
球団社長を務めるケビン・プリチャードはビョーグレンと面談し、解任を決めた。プリチャードは「すべては私の責任だ」と語る。「正しいコーチを選ぶという意味で、このことから学んだ。後任のヘッドコーチがいつ決まるかはまだ分からないが、チームをより強くできる候補者を探さなければならない」
トレイルブレイザーズのヘッドコーチの職を解かれたテリー・ストッツ、1年前にも候補に挙がったチャウンシー・ビラップスやマイク・ダントーニ、その他にもケニー・アトキンソンやブレット・ブラウン、またペイサーズファンの支持を集めるという点では1999-00シーズンにNBAファイナル進出に貢献したガードのマーク・ジャクソンの名も出ている。いずれにしても、今回の失敗を踏まえるとヘッドコーチとしての経験が豊富な人物が選ばれるだろう。
そしてプリチャード球団社長は、すべての責任をビョーグレンに押し付けようとはしなかった。選手たちの責任感の欠如を指摘し、ロッカールームをまとめられるリーダーを今オフには獲得するつもりだとも語っている。
関係者もファンも「マクミランを解任していなければ」と後悔していることだろうが、彼が『臨時』の肩書きが取れて来シーズンもホークスに残ることはほぼ確実だ。重要な選択でミスをしたことを噛みしめながら、いつもより長いオフを過ごすことになる。