
「キャリアが続く限り、ハングリー精神は尽きない」
ラッセル・ウェストブルックほど評価の分かれる選手は珍しい。2017年のシーズンMVP受賞を始め、9度のオールスター選出など輝かしい実績を持つが、トリプル・ダブルを連発していたサンダーでの全盛期でさえ「チームプレーヤーではない」という批判を浴びていた。
2019年にサンダーを離れた後は、6シーズンで5チームを渡り歩くことに。今オフ、ナゲッツ退団後は市場からの反応が薄く、引退説まで浮上した。
それでもオフの終盤になって、ずっと予想されていたキングス入りが決まった。ベテラン最低保証額での1年契約で、デニス・シュルーダーの控えとなるが、ウェストブルックは気にしていない。キングスの一員となって初めての会見でウェストブルックは「ここに行きたいと望んだ場所でプレーできることに感謝している」と笑顔で語った。
キングス入りを望んだ理由の一つが、熱気に満ちたサクラメントのファンだとウェストブルックは語った。「僕がバスケに魅了される理由、持てる力のすべてを発揮できる理由はファンの熱気で、対戦相手としてここに来るたびにファンの素晴らしさを感じていた。いつも罵声を浴びせられたけど、僕はそれも称賛の一つと受け止めてきた。今はあの熱量が味方になることに興奮しているし、彼らのエネルギーと僕のエネルギーが混ざり合って勝利をつかむのが楽しみだ」
ウェストブルックが胸を躍らせる一方で、世間のキングスに対する期待値は低い。ディアロン・フォックスが出て行った後、チームは旬を過ぎたベテランの寄せ集めとなり、ドマンタス・サボニスもクラブの迷走に不満を抱えていると見られている。元オールスターが揃うが、トレードデッドラインには彼らを放出して再建に舵を切るとの見方もある。
ウェストブルックへの評価も、乱高下を経て下降気味だ。間もなく37歳になるジャーニーマンでは無理もないが、チームと自分自身への低評価について彼は「僕の評価はキャリアを通じてずっとこんなものさ」と笑い飛ばした。
「あいつはやれるのか、と疑念を向けられること自体に感謝している。シーズンが始まれば、僕はコートに出て自分に何ができるのかを示す。それを愛してくれる人もいるし、嫌う人もいる。それが僕の人生だ。18年も続けてこられたのは偶然じゃない。今こうしてここにいて、コートに立つ機会を得られることに感謝している。キャリアが続く限り、ハングリー精神は尽きない。プレッシャーは感じていない。ドラフトで指名された時点で『すでに成し遂げた』んだよ」
長いオフが終わり、バスケの時間がやって来る。ウェストブルックはいつも通り準備万端だ。チームに合流したばかりでも「見知った顔が多いし、経験を積んできているから問題はない」と言い切り、サンズとの開幕戦でプレーするのかと問われると彼らしい力強い言葉でこう締めくくった。「もちろん、そのつもりさ」