森田雄次

マオールHC「バックアップのガードで、安定してローテーションに入ってくる」

9月20日、長崎ヴェルカはアルバルク東京とプレシーズンマッチを行った。この試合は長崎からコンディション不良による出場選手、プレータイムに制限が出るという申し出があって、1クォーター8分への短縮ゲームへと変更された。実際、長崎は韓国代表のエースであるイ・ヒョンジュン、元NBAドラフト全体8位指名のスタンリー・ジョンソンの新戦力コンビなど欠場者が続き、ベンチ入りがわずか7名のみでのプレーだった。しかし、数少ないメンバーでもタフに戦い続けることで互角の勝負を演じ、惜しくも55-59で敗れた。

長崎の新戦力、森田雄次はファウルが多かったものの身体を張った激しいディフェンスに加え、3ポイントシュート2本中2本成功と、攻守でアピールに成功した。29歳の森田は2019-20シーズンに当時B3の東京サンレーブスの練習生、翌シーズンから香川ファイブアローズで2年間、そして直近の3シーズンは鹿児島レブナイズに在籍。彼個人だと一昨年のB3、昨シーズンのB2から2年続けての昇格となり、今シーズンが初のB1でのプレーだ。

昨シーズンの森田はB2プレーオフで3試合すべてに先発し、平均21分10秒、8.7得点、4.7アシストと活躍。ただ、レギュラーシーズンは60試合にフル出場するも先発は2試合のみでセカンドユニットだった。B2でリーグ屈指のスタッツを残していた訳ではないが、長崎のモーディ・マオールヘッドコーチは、「森田はB2にいましたがB1でプレーできると思ってサインしました。彼はバックアップのポイントガードで、安定してローテーションに入ってくる選手だと思います」と期待を寄せている。

そして今日の森田は、指揮官の評価が正しいことを証明するプレーを見せたが、「もっとチームを助けるプレーができないといけない。今日の試合でも、もっとできることがあったと思います」と満足感はない。

B2とB1ではサイズ、フィジカルも違ってくるが、「感覚としてヴェルカの練習がハードなので、試合より練習の方がしんどく感じます。B1だからといってもサイズ、フィジカルに気圧されることはなかったです」と語る。その上で、まだまだ思うようなプレーをできていないと感じるのは、与えられた役割をしっかりと遂行しきれていないからと自覚しているからだ。

「対戦相手のレベルより、まずは自分がチームの中の仕事をしっかりできるかが、B1で通用するかどうかに関わってくると思います。小さなところから役割を1つずつしっかりやることでチームをうまく回していければ、自分もしっかりプレーできたと感じられます」

森田雄次

「コーチに求められていることを100%やりきる」

司令塔を務める森田だが、長崎はヒョンジュン、ジョンソン、さらにジャレル・ブラントリーとハンドラーをこなせるフォワードが多い。彼らの持ち味を生かすことを考えると、これまでと同じ頻度で森田がボールタッチすることはないし、それを求められてもいない。この中で、自分のやるべき仕事をこのように語った。「ディフェンスと、チームの展開を速くしていくことが僕の役割です。自分より他の選手の方がクリエイトする能力は高いです。そこは割り切っていますし、自分は潤滑油として、周りが気分よくプレーできる状況を作りだすことを考えています」

元々、東京を拠点とするB3の練習生としてキャリアがスタートした森田にとって、山あり谷ありのキャリアを経てBリーグ随一のビッグクラブであるA東京と対戦するのは、外から見るとドラマチックな道のりだ。しかし「実際にコートに踏み入れた時、『高揚感とか感じるかな』と思っていましたがなかったです」と、森田は冷静だった。その理由をこう明かす。「自分は結構冷静なタイプだと思っていて今までのキャリアも1つずつステップアップして、B1に来ることができました。だからこそ、特に気持ち的に昂るものもなかったです。そして現状に満足できていないからだと思います」

そして開幕に向け、「コーチに求められていることを100%やりきる。そこで信頼を少しずつ勝ち取っていくことで、自分の個性も出せる状況になってくる。まずは与えられた役割をしっかりと遂行していきたいです」と意気込んだ。

ちなみに森田は、長崎を選んだ理由として、B1どうこうよりもチームスタイルが大きかったと語る。「ヴェルカが創設時から泥臭いスタイルで戦っていたのをずっと見ていました。そういうスタイルが好きで、チームの一員になりたいと思いました」

この泥臭いプレーは、森田の大きな武器でもあり、マオールヘッドコーチも「今シーズンのスタイルに彼はすごく合います」と語る。キャリア初のB1を自分に合ったチームで迎える森田が、長崎の躍進を支える縁の下の力持ちになったとしても驚きはない。