渡邊雄太

昨シーズン、渡邊雄太は6シーズンに渡るNBA挑戦を経て千葉ジェッツに加入した。日本バスケットボール界を代表するスター選手のBリーグ参戦は当然のように大きな注目を集めた。しかし、開幕直後から故障に苦しめられ、平均13.3得点5.5リバウンドを記録するも出場はわずか35試合。シーズン終盤に負ったケガでチャンピオンシップでもプレータイムを制限せざるを得なくなり、不完全燃焼に終わったBリーグでのファーストシーズンについて聞いた。

「勝負ってやっぱり甘くないと痛感させられました」

──まず、昨シーズンの振り返りをお願いします。

純粋に悔しいシーズンだったというのが素直な感想です。結果も含めて、本当にもっとできたと思います。シーズンが終わってこういう感覚になるのは、プロになって初めてかもしれないです。

──「こういう感覚」というのは、「故障もあってやりきれず悔しい」というようなことですか。

そうですね。ケガでシーズンの内の半分くらいしか試合に出られていないこと、ケガ明けのパフォーマンスの質が上がってこなかったことも含めて、正直「こんなはずじゃなかったのに」と思っていました。その点に関して悔しさが残っています。

──昨シーズン、千葉Jは故障者続出の中でもチャンピオンシップに駒を進め、ファイナルまであと1勝というところで宇都宮ブレックスに敗れました。自チームとの力の差などを感じることはありましたか?

宇都宮さんをリスペクトした上で、そこまでウチと大きな差はなかったと思います。とはいえ、勝ったチームが強いわけなので、宇都宮さんのほうが強かったのは確かです。改めて振り返ってみても、ケガ人が多くいる中で簡単に勝てるわけはなく、宇都宮さんの完成度と比較して負けるべくして負けた。セミファイナルの時点で、宇都宮さんに勝てる状態ではなかったです。昨シーズンは本当に、勝負ってやっぱり甘くないと痛感させられました。

──渡邊選手のBリーグでのプレーを、千葉Jはもちろんその他クラブのファンも楽しみにしていたと思います。ご自身はその注目度の高さ、期待感をどのように感じていましたか。

僕のプレーを楽しみにしてくれていたお客さんも中にはいたんじゃないかと思うと、だからこそケガをして35試合しか出られなかったことは本当に申し訳ない気持ちです。ホームでもなかなかプレーできていなかったですし、遠征に帯同すらできていないことも結構ありました。期待してもらえるのはありがたいですし、それに応えるのがプロの責任です。その意味で昨シーズンはまったく責任を果たせず、ファンの皆さんを落胆させてしまった気持ちがすごく大きいです。

──昨シーズン、実際にプレーしてみたBリーグのレベルはいかがでしたか。アジャストするのに苦労した部分はありましたか?

夏の日本代表での活動を通して、Bリーグでプレーしている選手が上達しているのを感じていました。国外からどんどん素晴らしい選手がBリーグに入ってくるのも知っていました。だから良い意味で予想通りで、レベルは高かったです。苦労したのは笛(審判)の部分です。審判の方の判断が悪いということではなく、NBAとは笛の吹き方がまったく違うので、今シーズンはさらにアジャストしていかなければいけないです。

渡邊雄太

「昨年のメンタリティは自分らしくなかった」

──プロになって初めて日本でプレーしたわけですが、気持ち的にはほっとするところもありましたか? 慣れない環境でプレーすることの難しさのほうが大きかったでしょうか。

どこに行っても母国語の日本語ですべて解決できますし、家族も友達も近くにいる。楽だと感じることは実際にありました。NBAの最後のシーズンでいろいろあって、昨シーズンは「楽しむ」ことを自分の中で一番大事なポイントにしていたんですが、もともと負けず嫌いな性格ですし、昨年のメンタリティは自分らしくなかったなと。楽しむことを意識しすぎてギラギラした部分、NBAにいた時のハングリーさを少し失っていた気もします。そこは今シーズン取り戻したいですね。正直、ちょっといい子ちゃんになりすぎていたところがありました。

──英語でいう「キラー・インスティンクト(Killer Instinct)」、対戦相手を容赦なく叩き潰すようなメンタルでしょうか。

そうですね。結構、僕はまわりの目を気にしてしまう性格なので、NBAから日本に帰ってきたことでコート上での振る舞いだけでなく、全部が見られると思っていました。それで常に「いい人」でいなければいけないという感覚にとらわれすぎていたのかなと。どういう振る舞いをしていても批判される人にはされるでしょうし、今シーズンはまさにキラー・インスティンクトを持たないといけない。絶対にダーティなプレーはしないですが、コート上でいい人でいる必要はない。昨シーズンはちょっとニコニコしながらやりすぎていた部分があって、そこは違っていたと感じています。

──NBAの対戦相手は渡邊選手を叩き潰す気持ちでいたと思いますが、日本の、特に若い選手は渡邊選手への憧れの気持ちやマッチアップを楽しむような気持ちあったのではないかと思います。そこに対して受け身になってしまった、ということもありましたか?

そういうことはなかったですね。若い選手がガツガツ来てくれたのはすごくありがたかったです。特に印象的だったのは琉球ゴールデンキングスの脇真大選手、ファイティングイーグルス名古屋から琉球に加入した佐土原遼選手。彼らとは代表でも一緒にプレーしたことはなかったですが、こんないい若手の選手が日本にいるんだという思いでした。それくらい彼らは僕とガツガツやりあってくれました。相手がどうこうではなく、自分が精神的に守りに入っていました。「NBAの最後みたいな状態になりたくない」と思いすぎた結果、逆に自分らしさを見失っていたと思いました。