
アジアカップへ向けて新陳代謝を図った強化試合
8月5日から17日にてジッダ(サウジアラビア)で開催する『FIBAアジアカップ2025』でバスケットボール男子日本代表がまず目指すのは、グループフェーズで1位になることだ。
日本代表はパリオリンピック閉幕後から新たなサイクルに突入し、アジアカップを前に行われた強化試合では若手の起用を多く行って新陳代謝の活性化を図っていた。中でも若手選手への注目度を高めていくことを話していたトム・ホーバスヘッドコーチはこれまでに、湧川颯斗やジャン・ローレンス・ハーパージュニア、狩野富成らを招集してロスター入りへのチャンスの場を与えていった。
合宿や強化試合を重ねていく中で頭角を表したのが、ハーパージュニアと狩野だ。ハーパージュニアは以前から高校と大学の先輩である河村勇輝を目標と掲げており、彼に追いつくためにも代表選出は越えなくてはいけないハードルの一つだった。攻撃型のガードが多い日本代表の中でハーパージュニアは、アグレッシブなディフェンスで相手のリズムを崩し、7月6日に行われたオランダ戦では豊富な運動量と粘り強いボールディフェンスで相手のオフェンスを切り崩す立役者となり、アピールに成功した。
現在23歳の狩野は2023-24シーズンにサンロッカーズ渋谷と契約をしていたが出場経験を積むために、B3の徳島ガンバロウズや、B2の信州ブレイブウォリアーズに期限付き移籍をして活躍をした。今シーズンはそのパフォーマンスが認められてSR渋谷のロスター枠を勝ち取ったセンターだ。彼も7月6日のオランダ戦で4ブロックとリムプロテクターの役割を見せると、屈強なオランダ代表にも負けないフィジカルとカッティング能力で存在感を表した。
アピールに成功したこの二人に加えて、ホーバスが長年注目していた西田優大も代表に返り咲いた。西田はホーバス体制になってから数多くの試合に出場し、アジアカップ予選では主力として活躍。しかしパリオリンピックでは選外となっていた。それでもホーバスの信頼は高く、今回のメンバーの中では中堅としてリーダーシップの発揮にも期待を寄せている。

得点力不足改善にはペースアップが必須
強化試合を重ねていくと日本代表の課題も浮き彫りになってきた。それは得点力不足である。7月5日から20日の期間で6試合行われたデンマーク、韓国、オランダとの強化試合での平均得点は71.3得点。より格上であるフランス、ドイツ、ブラジルと戦ったパリオリンピックの3試合での平均83.7得点を大きく下回る結果となり、得点力不足を露呈した。デンマークの第1戦終了後のインタビューでホーバスは、チームがうまくスコアリングできない状況を問題だと指摘し、「早いペースで80点以上スコアリングをしたい」と語っていた。
この問題を解決するために、今夏は代表活動に参加をしていなかった富樫勇樹とサマーリーグに参加していた馬場雄大、富永啓生を招集した。富樫は、「今年の夏はプレーをしないということを決めていたわけではない」と前置きをした上で、「6試合の強化試合を見て、数字に出ていますが点数が取れていません。ペースが大きく影響していると思うので速くしていきたい」と語っている。富永の長距離砲や馬場のランニングプレーなどは、ホーバスが抱える悩みを解決する糸口となるだろう。実際に大会直前に実施されたカタール遠征では、7月30日のカタール戦で富永が12得点を記録し103-92で勝利。続くサウジアラビアとの試合でも85-78で勝利し、80点越えを連発できたことは良い収穫となった。
グループフェーズを突破する上で重要なのはリバウンドにも強く、トランジションオフェンスで誰よりも早く先頭を走るジョシュ・ホーキンソンのプレータイムをどれだけ抑えられるかだ。中一日で3試合を行うグループフェーズではあるがホーキンソンの1試合の出場時間は30分以上が予想され、攻守にフル回転となる大黒柱への負担は誰よりも大きい。初期の構想ではホーキンソンに次ぐビッグマンの選出は一人だけの予定だったが、川真田紘也と狩野の2名が選出されたのはサプライズに等しい。ホーバスも「もしホーキンソンが30分出るなら、たまには4番ポジションに入った方がいい。そうなると(代表経験豊富でシステムの理解に長けている)川真田選手、狩野選手が必要です」と語るように2人の活躍も重要なファクターとなってくる。

FIBAランキングでは計りきれない各国の実力
グループフェーズの第1戦で対戦するシリア(FIBAランキング71位)は日本(同21位)にとっては格下の存在に映るが、ヨルダンやカタールをワールドカップに導いたジョセフ・スティービングを招聘するなど強化を図っている。アメリカ出身の帰化選手であるケロン・デシールズは昨シーズンに所属したサウジアラビアのアル・イテハドで平均21.9得点を挙げたスコアリングガードで、日本と同じくアップテンポなバスケを目指すシリアの要注意選手だ。
第2戦で対戦するイラン(同28位)は、このグループフェーズで最大の敵になる。現在20歳のモハメッド・アミニは201cmの長身ながらガードとしてもプレーでき、アジアカップ予選では平均15.8得点、6.2リバウンド、1.4アシストとイランの中核を担っている。その他にもウィザーズにドラフト指名された経験のあるアーセラン・カゼミなどタレントが揃っている。
最終戦の相手はグアム(同88位)だ。メンバーにはベルテックス静岡に所属するサイモン拓海が名を連ねている。アジアカップは初出場となるが、予選を勝ち抜いた実力が示すように侮れない存在だ。
これまでの強化試合で頭角を表した若手選手がいかに自分たちの実力を発揮することができるか。そして経験豊富な富樫や馬場がチームをサポートしながら、アップテンポなバスケットを展開できるか。それが日本のグループフェーズ突破のカギとなるだろう。
日本代表チーム FIBAアジアカップ2025 登録メンバー
#2 富樫勇樹(PG/31歳/167cm/千葉ジェッツ)
#4 ジェイコブス晶(SF/21歳/203cm/フォーダム大)
#7 テーブス海(PG/26歳/188cm/アルバルク東京)
#13 金近廉(SF/22歳/196cm/千葉ジェッツ)
#14 狩野富成(C/23歳/206cm/サンロッカーズ渋谷)
#18 馬場雄大(SF/29歳/196cm/–)
#19 西田優大(SG/26歳/190cm/シーホース三河)
#23 ジャン・ローレンス・ハーパージュニア(PG/22歳/181cm/サンロッカーズ渋谷)
#24 ジョシュ・ホーキンソン(C・PF/30歳/208cm/サンロッカーズ渋谷)
#30 富永啓生(SG/24歳/188cm/レバンガ北海道)
#91 吉井裕鷹(SF/27歳/196cm/三遠ネオフェニックス)
#99 川真田紘也(C/27歳/204cm/長崎ヴェルカ)
※所属、年齢は7月27日現在
対戦スケジュール
・8月6日 20:10 日本 vs シリア
・8月8日 20:10 日本 vs イラン
・8月10日 20:10 日本 vs グアム
※試合時間はいずれも予定