「勝負しないまま試合を終えたくはなかった」
今シーズンのNBAファイナルは試合ごとに両チームがそれぞれの持ち味を発揮し、勝敗が決まるごとに人々の印象を塗り替えている。現地6月13日の第4戦を制したことで、「サンダー強し」の印象は強まった。終盤の勝負どころでボールを託せば、どんな形ではあれ得点を奪うシェイ・ギルジャス・アレクサンダーのクラッチ力は、実力伯仲のシリーズで今後も違いを生み出すだろう。
サンダーの調子は今一つだった。3ポイントシュートは16本しか打てなかったし、しかも3本しか決まらず(成功率18.8%)、11のアシストよりもターンオーバー(13)の方が多かった。攻守ともに全員がハッスルしていたが、その努力を成果に変える効率性の良さを出せず、ほとんどの時間帯でビハインドを背負った。
シェイもなかなか調子が上がらなかった。第3クォーター終了時点でフィールドゴール18本中9本成功の20得点は、チームを苦境から引き出すには不十分だった。何よりペイサーズは彼の動きを研究し、リムアタックをさせないことで、フリースローを2本しか与えていなかった。
しかし、第4クォーターのシェイは15得点を挙げ、そこには8本を得てすべて決めたフリースローも含まれている。チームメートは彼の手にボールを託し、彼はそれに応えた。
「ただ積極的にプレーしようと考えていた。この試合を落としたら厳しいことは分かっていたし、勝負しないまま試合を終えたくはなかった。自分の力をすべて注ぎ、自分にできるすべてをするつもりだった。それと同時に無理に何かをするのではなく、試合の流れに身を任せようとも考えていた」
ボールを動かして良いチャンスを作っていたのはペイサーズの方だった。ラスト3分のペイサーズはタイリース・ハリバートンが、アンドリュー・ネムハードが、マイルズ・ターナーが良い形からシュートを放ったが、いずれも決まらなかった。
一方でシェイはチャンスを待ち、試合終盤に恐るべきクラッチ力を発揮した。決して簡単ではないジャンプシュートを沈め、アーロン・ネスミスとの駆け引きからファウルを引き出し、フリースローを確実に決めることで『違い』を作り出す。ファウルゲームがあったにせよ、ラスト3分間はサンダーが12-1と圧倒する展開だった。
その大仕事を彼は表情一つ変えず、淡々とやってのけた。「ただプレーに没頭しているだけなんだ」とシェイは説明する。「一つひとつのポゼッションで、チームが勝つために自分に何ができるかを考えている。勝敗に懸かっているものがこれだけ大きいと集中するのは簡単じゃないけど、とにかく集中しようと心掛けているんだ」
この第4戦は明らかに彼の個人能力、終盤のクラッチショットを決める勝負強さが結果に繋がった。MVPに相応しいパフォーマンスだったが「そんなに安心できるわけじゃない」と彼は言う。「負けるより勝つ方が良いのは当然だけど、まだ2勝だ。ゴールはまだ遠い。次のチャンスに集中して、それを生かすつもりだよ」