アーロン・ウィギンズ

「準備を整え、勝つことを目指してコートに出ていく」

NBAファイナルの第2戦ではサンダーが123-107の完勝を収めた。ここまでペイサーズが何度も起こしてきた奇跡的な逆転劇は、サンダーが先発の5人とベンチの5人を組み合わせる様々なラインナップを駆使して封じ込んだ。

エースのシェイ・ギルジャス・アレクサンダーが34得点を挙げたが、この日はベンチから出て20得点を挙げたアレックス・カルーソ、同じくベンチから18得点のアーロン・ウィギンズの2人が大きなインパクトを残した。

サンダーを率いるマーク・ダグノートは、ペイサーズが相手だと試合途中のリードにはあまり意味がないと言う。「NBAではどの試合も油断できないが、ペイサーズとの試合では彼らのペースと3ポイントシュートの精度を考慮すると、その要素が顕著だ。リードしていてもアグレッシブな姿勢を、特に守備面で保つことが大事で、その点で選手たちは本当に良い仕事をしてくれた」

その意味で、細かな選手交代でコートに立つ選手たちを心身両面でフレッシュにしておくのが大事だったし、そこでウィギンズは特別な働きぶりを見せた。コートを幅広くカバーしてディフェンスの綻びを未然に防ぎ、スペーシングとカッティングからパスを呼び込んで得点も重ねた。攻守に絶妙なアクセントを加えた彼は、21分のプレーで得失点差+24を記録している。

「アーロンは今シーズンの私たちの成功の大きな要因だ」とダグノートは言う。「プレーオフでもナゲッツとの第4戦では彼が勝利に大きな貢献を果たしている。プレーオフになって役割が変わっているし、今日は第2クォーターまで出番がなかったが、素晴らしいプロ意識と準備を見せて、最高のパフォーマンスを見せてくれた」

ウィギンズは2021年のドラフト2巡目55位指名でサンダーに加入した4年目のガード。チーム事情により役割が変わっても安定して攻守に貢献できる『脇役』としてコンスタントに試合に出て、今シーズンは26試合に先発している。

ダグノートが例に挙げた『ナゲッツとの第4戦』では、6点ビハインドの第4クォーター頭からルーゲンツ・ドートに代わって投入されると、ナゲッツがニコラ・ヨキッチを休ませている数分間で、彼自身の3ポイントシュートを含む13-4のランで試合をひっくり返した。

今回の活躍はそれ以上に価値があるが、試合後のウィギンズは「素晴らしいね」と語るも、その表情は落ち着いたものだ。「僕はただコートに出てチームに貢献しようとしただけ。得点できたのはチームメートが僕に良いパスをくれたからで、僕としては普段通り粘り強くプレーしただけなんだ」

この日、彼は5本の3ポイントシュートを成功させたが、それはシェイ、ジェイレン・ウィリアムズにチェット・ホルムグレンと、チームの絶対的な主力のアシストを生かしたものだ。「誰とプレーしても相性が良いのは、僕があらゆる立場を経験してきたからだと思う。オフェンスの2番手、3番手、4番手、そしてベンチから。どんな役割でも求められた仕事をしてきた。ただ準備を整えて、勝つことを目指してコートに出ていく。僕にとってはそれが『自分らしく』なのさ」

「プレータイムが短かかったり役割がいろいろ変わるのは楽しいことじゃないけど、同じような状況にある選手はたくさんいるし、恵まれている選手は自分の手でそれを勝ち取ったわけだから。NBAにいて、このレベルで好きなバスケをプレーできるのは本当に恵まれている。だから僕は不満を持つんじゃなく、常にチャンスに備えるんだ」

謙虚ではあるが、自分のスタイルに揺るぎない自信を持っている。それがウィギンズの強みだ。「コートに立つ時に何点取るとか、どんなプレーをするとかは考えない。大活躍はいらない。ただチームの勝利のためにプレーしたいんだ」