中村拓人

「インパクトを残せたかは自分の中では良い感覚を持っていた」

並々ならぬ決意を胸に群馬クレインサンダーズへ移籍した中村拓人。前編ではケガ人が多くとも最後まで戦い抜いたチームに対する中村の手応えについて語ってもらったが、後編では中村個人のパフォーマンスについて振り返る。

広島ドラゴンフライズでの2023-24シーズン、エースガードの寺嶋良が大ケガを負い、中村はルーキーながら先発を任された。その重責を担いながらもチームをBリーグ制覇まで導いた。これまでも責任感を持ってプレーしてきたが、その気持ちは群馬に来てより大きくなった。「強い気持ちを持って試合に臨むことに対して、すごく自覚が芽生えました。チームを勝たせる責任を、より一層感じるシーズンでした」

広島時代を「ドウェイン(エバンス)をはじめ、みんながリーダーシップを取ってくれていました。当然、スタートで出る責任は感じていましたが、他の選手に付いていくという感覚は正直ありました」と振り返り、群馬では新たな意識が芽生えたと中村は続ける。

「群馬もリーダーシップがある選手はたくさんいるので、前と同じでもよかったかもしれません。でも、それでは成長がないなと。自分がプレーヤーとして大きく成長するため群馬に来たので、チームを引っ張っていく意識は強くなりました。終盤に特に思っていたことですが、自分のプレースタイルをブラさないことは重要でした。それを続けたからこそ、自分のプレーに自信がつきました」

スタッツは昨シーズンの平均9.2得点、2.8アシスト、1.3スティールから9.5得点、3.0アシスト、1.3スティールと微増だが、中村は確かな成長を感じている。日本人選手を含め得点力の高い選手が揃う群馬において、この数字は十分に評価できるものだ。「数字は大きな変化がありませんでしたが、どれだけインパクトを残せたかと考えれば、自分の中では良い感覚を持てていました」

ただし、開幕前に課題として挙げていた安定感の欠如は今も残っている。「特に序盤は、すごく良い時もあれば全然良くない時もあって、満足できていないです。トップレベルのポイントガードになるためには、安定感は大事になってきます」

中村拓人

初めての藤井との共闘「もっとディフェンスを頑張らなきゃと思わされた」

初めてバックコートコンビを組むことになった藤井祐眞からは大きな影響を受けたと中村は語る。先発で同時起用されることもあったが、多くの試合はどちらかが先発を務めた。しかし、試合終盤の勝負どころでは同時にコートに立つことも少なくなかった。それぞれの役割を遂行できていたと中村は手応えを得ている。

「祐眞さんは、僕よりもシュートが上手いので、僕がドライブで崩した後にシュートを準備してくれている場面を何度も作れました。逆に自分がキックアウトを待っていることもありましたし、良いバランスでプレーができていたと思います」

良い影響を受けたのはオフェンスだけではない。藤井は2019-20シーズンから3年連続でベストディフェンダー賞を獲得したリーグ屈指の守備職人。ディフェンスを自身の武器と自認している中村にとっても、刺激を受けることは多かった。

「一緒に出ていると『もっと自分もディフェンスを頑張らなきゃ』とめちゃくちゃ思わされましたね(笑)。ボールに対する執着心もそうですし、身体を張ったディフェンスを自分もやらなきゃと。その姿勢を背中で示してくれました」

さらに中村はチャンピオンシップを見て、ガードとしてあるべき姿を再確認した。ファイナルの舞台を戦った長崎ヴェルカの熊谷航と琉球ゴールデンキングスの岸本隆一の両先発ガードは、奇しくも大東文化大出身で中村の先輩にあたる。先輩の奮闘に刺激を受けた中村は、チームを勝たせるガードになるべくさらなる成長を誓う。

「航さんはリバウンドもすごかったですし、岸本さんを見ていたら『もっと頑張らなきゃな』と(笑)。Bリーグでは外国籍選手の占めるウエイトが大きいのは間違いないですが、チャンピオンシップを見ていてガードの選手がチームのためにどれだけ身体を張れるかが重要だなと感じました。僕はガードの中ではサイズがある方なので、それを自分ができればチームのプラスになるんじゃないかなと」

中村拓人

「兄はマッチアップすることで自分の弱さを発見させてくれる存在」

多くの選手から刺激を受けながら成長を続ける中村だが、その中でも特別な存在がいる。兄の中村浩陸(アルバルク東京)だ。今シーズン、群馬とA東京は天皇杯で1試合、レギュラーシーズンで2試合対戦した。しかし、中村兄弟の直接対決は実現しなかった。

「天皇杯は兄貴が出なかったので『なんで出ねぇんだよ』と思っていましたけど、レギュラーシーズンは僕がケガで出られなかったので。兄貴も強豪のアルバルクに移籍して、僕も群馬に来たタイミングだったので、また新しい自分を見せられたんじゃないかなと思っていました」と中村は悔やむ。レギュラーシーズンのホーム開催時には、両親と妹が来場していたため、余計に残念な気持ちがあった。

「小学校から大学まで同じ学校だったので、昔は『とにかく超えたい!』と思っていました。『自分の方が上手いから!』と思いながらも、毎日ケチョンケチョンにされていましたね(笑)。今も少なからずそういう気持ちはありますし、対戦したら絶対に負けたくないです」

チャンピオンシップではセミファイナルで直接対決の可能性が残されていたが、両クラブともクォーターファイナルで敗退して叶わなかった。それでも兄との関係性を話す中村の表情は常に明るい。「どのシーズンも対戦は楽しみにしてますし、マッチアップすることで自分の弱さを発見させてくれる存在です」

最後に中村は1シーズンともに戦ったファンへの感謝の思いを口にする。「初めて群馬に来たシーズンでしたが、ファンの皆さんの熱い気持ちを感じることができました。それに対して結果で応えたかったです。皆さんと一緒に戦えたことで充実したシーズンになりました。ありがとうございました」