「素晴らしい日々を過ごせた、だからこそつらい」
25年ぶりのカンファレンスファイナル進出が話題となっているニックスとは対照的に、セルティックスは勝ち続けてきたチームだ。2016-17シーズンからの9シーズンで、カンファレンスファイナル進出を逃したのは2回だけ。なかなか手が届かなかったNBA優勝も昨シーズンに実現させた。これが、2016年の1巡目3位指名でセルティックスに加入したブラウンの成功に満ちたキャリアだ。
そのブラウンは、カンファレンスセミファイナル敗退が決まった後の会見で、失望と落胆を隠せなかった。「5月にシーズンを終えるのに慣れていないんだ。正直、この終わり方は自分たちのせいではないと感じている」と、彼は首を振りながら話した。
「僕たちは連覇を目指していた。素晴らしいチームだったし、シーズンを通して良い戦いができていた。自己犠牲精神に満ちた選手によるグループが、バスケに真剣に取り組む。それがこのチームの強さを作ってきた。素晴らしい日々を過ごせたと思う。だからこそ、この結果はすごくつらい。不幸なアクシデントもあった。何とか乗り越えようとしたけど、上手くいかなかった」
ブラウンにとっては膝のケガに悩まされながらのプレーとなったが、上手く折り合いを付けながらレギュラーシーズン63試合、プレーオフ11試合に出場してチームを牽引し続けた。9年目の彼には十分な経験があり、NBA優勝がこれまでにない自信になってもいた。
「この時点での敗退は残念だし悔しいけど、自分のやってきたことを誇りに思う」と彼は言う。それを象徴すべきはジェイソン・テイタムを失って迎えたTDガーデンでの第5戦で、チームの持ち味を存分に発揮し、1勝をもぎ取ったことだ。
テイタムのケガがアキレス腱断裂だと分かり、チームの士気はガタ落ちとなったが、第5戦に向けての練習でブラウンとアル・ホーフォードがチームに檄を飛ばしたことで、雰囲気は変わったという。「ただ全力でプレーしよう。万全の準備を整えて、一つひとつのポゼッションを大事にして、全力で守り、そこから攻めて、勝利への道を見いだそう」というのがブラウンのメッセージだった。
「死ぬほどつらいけど、それでも人生は続くんだ」
第5戦のブラウンは、テイタム不在を受けていつも以上に多くの役割を担い、26得点8リバウンド12アシストを記録。後半にはルーズボールを追ってセルティックスのベンチにダイブするシーンもあった。この試合に勝利した後、指揮官ジョー・マズーラは「ジェイレン・ブランソンのマークを自ら引き受け、攻撃でも守備でも高い強度でトーンをセットし、チームメートの指針となった」と、ブラウンのプレーを絶賛している。
これに対してブラウンは、「自分らしくありたい。それだけを考えているんだ」と語った。「僕らはチームの勝利のために何だってやって来た。今も自分に求められることは何でもする。役割は試合ごとに変わるかもしれないけど、すべてに全力で取り組む。それが僕にとっての『自分らしくあること』なんだ」
続く第6戦も同じマインドセットで臨み、第1クォーターで13得点とチームを牽引。しかし、ニックスも対策してくる。第2クォーター以降はリズムを崩され、そうなるとチームもニックスに圧倒され始めた。結果、81-119と大差で敗れ、シーズンは終わった。
「僕らのシーズンじゃなかった。そういうことだと思う」とブラウンは語る。「でも、一緒に戦った仲間たちを誇りに思う。今日も勝つために必死に戦った。不運に見舞われたけど、振り返れば素晴らしいシーズンだった。ジョーが最善の準備をしてくれて、全員が素晴らしいメンタリティを発揮した。不運な出来事があったけど、言い訳はしない」
思いがけず早い時期に迎えたオフシーズンについて「時間をかけて、一歩引いたところから状況を整理したい」と彼は言う。「でも、僕は興奮している。ニックスに負けるのは死ぬほどつらいけど、それでも人生は続くんだ。だから次の挑戦に向けて準備をするよ。僕らの旅は終わりじゃない。JT(テイタム)のケガがあり、敗退したことで先行きは暗いと思われているのは分かっているけど、ワクワクできる要素は多いよ。これで終わりじゃないんだ。ボストンのファンが同じようにワクワクしてくれることを願っている」