小川敦也

「より多くの役割を任せてもらっている感覚はあります」

31日と2日、宇都宮ブレックスはホームでレバンガ北海道と対戦。1月中旬に心臓疾患で緊急搬送されていたケビン・ブラスウェルヘッドコーチが、約1週間前に亡くなるという大きな衝撃に見舞われる中、しっかりと同一カード連勝を達成した。

バスケットボールに集中するのが難しい中、価値ある2連勝に貢献したのが22歳の小川敦也だ。190cmのサイズとダンクを叩き込む恵まれた身体能力を備えた小川は、洛南高、筑波大で世代屈指の大型ポイントガードとして活躍し、昨シーズンに大学3年のシーズンを終えるとプロ契約で宇都宮に加入した。

ただ、リーグ随一の常勝チームである宇都宮で出番をつかむのは簡単ではなく、これまではベンチを温める機会が多かった。しかし、今回は81-64で快勝したゲーム1での181秒出場10得点2アシスト1スティールに続き、終盤までもつれたゲーム2でも1542秒とローテーションの一員としてプレーし、98-91という接戦の勝利に貢献。特に第4クォーターで、615秒もコートに立ったのは、首脳陣の評価が着実に高まっていることを示していた。

「今日は昨日できたことをより強度を高めて遂行しようとしました。91失点は取られすぎてしまったところはありますが、勝ち切れたことがまずは良かったと思います」

こうゲーム2を振り返った小川は、この週末に限らず2025年に入ってから着実にコートに立つ時間が増えていることへの手応えと課題について、次のように考えている。

「シーズン前半よりプレータイムが伸びていて、チームからより多くの役割を任せてもらっている感覚はあります。ただ、今日は第4クォーター、寺園(脩斗)選手のシュートが当たっているのに、マークについていた自分がスクリーンに引っかかって3ポイントシュートを決められてしまいましたし、自分がボールを持っている時に24秒オーバータイムにもなりました。こういうミスをしていると、大事な時間帯で出られなくなってしまうので、もっと突き詰めてやっていきたいです。特に今日の第4クォーターは出てはいるけど何もしていない時間帯がありました。何かインパクトを残せるようにやっていきたいです」

宇都宮のジーコ・コロネルヘッドコーチ代行は、「敦也の活躍はうれしいです。彼は毎日、チームの練習前、そして練習後に激しいワークアウトをしてきました。彼はとても親切で、周りの助言をよく聞く素晴らしい人柄の若者です」と、小川について語る。

また、「今日の試合、大きな場面となったのは相手のトラップディフェンスを受けても、落ち着いて空いていたマコ(比江島慎)にすぐパスをさばいたことです」と冷静なプレーを称えた。

小川敦也

「自分も代表の舞台に立ちたい気持ちが強いです」

指揮官は小川の変化について続ける。

「彼は大学で活躍をしてきて、低い期待値で加入した選手ではないです。ただ、私たちはブレックスであり、勝つためのプレーが求められています。だから彼もチームの勝利に貢献するために十分なプレーを見せなければいけません。シーズン序盤の彼のプレーは十分ではなかったかもしれませんが、彼が成長を続けているのはわかっていました。彼は、自分がどんなプレーをしていくべきなのかを見出し、自信をつけました」

小川本人も「ケビンにも言われていましたが、自分は自信を持つことが一番足りていなかったので、そこを大事にしていきたいと思います」と話している。そして、彼の精神面の変化は次の言葉にも表れている。

「試合に出ている時も出ていない時も、常に自分はコートに立ったら自分の力を証明するつもりで準備をしてきています。周りにすごい先輩方がいますけど、自分がポイントガードとしてチームを引っ張っていきたいと強い気持ちを持って臨みたいです」

今の小川は、宇都宮でいかに勝利に貢献するプレーをしていくかに集中している。だが、その先に見据えているモノはある。2月末に行われた『FIBAアジアカップ2025予選Window3』で、同学年であるハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア、金近廉が日本代表として活躍したことに大きな刺激を受けた。

「ハーパーや金近は中学生の頃から知り合いで、切磋琢磨してきた仲です。彼らが活躍していることは嬉しいですが、自分も代表の舞台に立ちたい気持ちが強いです。ブレックスは層が厚くて、何かを証明するのは難しいですが、それを乗り越えないとその先はないと思うので頑張っていきたいです」

3月5日、宇都宮はアウェーに乗り込んでアルバルク東京と対戦する。さらに今月は群馬クレインサンダーズ、三遠ネオフェニックスと難敵との試合が続く。これまでの小川は、強豪とのタフな試合ではわずかな出番に留まっていたが、コロネルヘッドコーチ代行は「約束されたモノではないですが、彼には引き続きチャンスを与えていくつもりです」と語る。

強豪相手に、今回の北海道戦と同じパフォーマンスができれば、小川は確固たるプレータイムを確立できる。それは宇都宮にとっても、大きな戦力アップとなる。

桜の開花と同じように小川が類いまれな才能を開花させ、チームの新たな武器『Xファクター』としてポストシーズンを迎えられるか、否か。それは宇都宮の王座奪還の命運を握る、大きなカギとなってくる。