試合終盤に彼を下げたヘッドコーチにブーイングも
キングスはジャズを相手に125-104の快勝を収めた。ディアロン・フォックスが肩のケガで欠場したこの試合、代役としてプレーメークを担当したのは2ウェイ契約のルーキー、キーオン・エリス。26分の出場で7アシストと『伏兵』が十分な仕事をしたが、得点はわずか2。リーグ6位の平均30.1得点を稼ぎ出すフォックスの得点はまた別の誰かが補わなければいけない状況だった。ここで素晴らしい活躍を見せたのが2年目のキーガン・マレーだった。
ハイペースでオフェンス重視のバスケをするキングスにおいて、マレーはスタッツに残らない仕事ぶりで評価を高めている。スクリーンとハンドオフ、味方のためにスペースを作り出す動きとカッティング。唯一スタッツとして目立つのは、相手との駆け引きの中で外に開いて放つ3ポイントシュートで、昨シーズンの成功率は41.3%とルーキーとしては最高の数字だった。
それでも、マレーはあくまでチームファーストの選手。完全にオープンであればシュートを放つが、そうでなければパスを出し、あるいはドライブからチームの次のオフェンスを作り出す。ただ、フォックス不在の試合で彼は少しだけ強気になった。ジャズのゾーンディフェンスが外から攻めるシチュエーションを増やしたことも追い風になった。突如としてエースシューターとしてプレーし始めたマレーは、15本中12本成功という高確率の3ポイントシュートを含む47得点を挙げた。
ジャズを率いるウィル・ハーディは「キーガンは我々のミスを一つも見逃さなかった。現実的ではない確率で決めてきたが、今日はそういう日だった」と脱帽する。
マレーは第1クォーターに3ポイントシュートを3本中2本、第2クォーターには3本すべて、第3クォーターには7本すべてを決めた。この時点で13本中12本成功。NBAで最も3ポイントシュートを決めているステフィン・カリーはネッツ戦に勝利して会見を行っていたが、メディアにマレーの数字を聞かされると「とんでもないことをしているなあ!」と驚きに目を丸くし、まだ試合が続いていると聞いて「試合をチェックしなきゃ」と会見が終わると急いで出ていった。
残り2分半でマレーがベンチに下がった時、ファンはマレーの素晴らしいパフォーマンスを称えるとともに、1試合50得点のチャンスを取り上げた指揮官マイク・ブラウンにブーイングを投げかけた。本気のブーイングではなく、親愛の情を込めたものだが、ブラウンは「あそこで彼を下げずに万が一ケガでもしていたら、ファン全員が私を無能だと罵るだろう。50得点を取るチャンスはその前にあった。引き際を分かっていた私は賢いと思うよ」と芝居がかった笑みで語った。
マレーもこの言葉遊びに乗っかり、「ブーイングしてくれたファンには感謝したい」と笑顔で語る。実際は50得点に固執してはおらず、「キャリアハイを更新したんだから、それで十分だよ」と言い、チームメートへの感謝を語った。「チームメートがいつも僕を励ましてくれる。それは今日に限らず、シュートが入らない時だって同じなんだ。いつもと変わったことは何もなかった。空いていたら打て、という仲間たちのアドバイスをただ実行しただけさ」
そして彼はこんな言葉で大活躍の一日を締めくくった。「このリーグでどれだけ自分が得点できるポテンシャルがあるのか分かったから、この先に励みになるよ」