ブランソンの穴を埋める補強が進まなかった不安要素
ルカ・ドンチッチを中心にしたチームになってからプレーオフチームへと成長し、そこに新ヘッドコーチとなったレジェンドのジェイソン・キッドが持ち込んだディフェンスマインドによって、マーベリックスはカンファレンスファイナルへと進みました。極めて順調なステップアップを果たしましたが、ジェイレン・ブランソンが移籍したことで、再び立て直しが必要なシーズンとなります。
オフの補強でマブスが求めたのは、リムプロテクターでした。クリスチャン・ウッドとジャベール・マギーを獲得し、狙い通りの補強となりましたが、そもそもクリスタプス・ポルジンギスを放出しても、スピードがあってローテーションに対応できる選手を起用してきたにもかかわらず、再びリムプロテクターを加えてディフェンスが機能するのかは疑問もあります。
マブスのディフェンスは少し特殊な役割分担になっており、オフェンスの主役であるドンチッチやブランソンの運動量は抑えられ、ドリアン・フィニー・スミスやレジー・ブロックらのウイングが激しいマークでプレッシャーをかけ、ドワイト・パウエルとマキシ・クリバーらのビッグマンが運動量でカバーしていく形でした。正しいローテーションと運動量を求められる守り方は、高さで勝負してきた選手にとって馴染めないことが多く、昨シーズンの強みを維持できるのか未知数です。
それ以上にオフェンス面ではブランソンの穴を埋める補強が進みませんでした。ゴラン・ドラギッチやデニス・シュルーダーらの噂もありましたが獲得までは進まず、ジョシュ・グリーンの成長や、ドラフトで指名したジェイデン・ハーディ、ギリシャ代表で活躍したタイラー・ドーシーなど未知数の戦力に賭けることになります。最終的にはドンチッチに任せればいいため、繋ぎの役割で良いもののベンチの不安定さに悩まされそうです。
キープレーヤーとなるのはケガでプレーオフを欠場したティム・ハーダウェイJr.で、持ち前の得点力を発揮すればオフェンスオプションとしても、選手層が薄くなっているウイングとしても機能します。ただ、昨シーズンはムラのあるプレーがキッドのバスケットにはハマっておらず、フィールドゴール成功率が40%を下回ってしまいました。パス能力が高くないこともありハンドラーとしては不完全なため、得点力に頼りたくなる試合は多くても、大事な場面では信用しきれない一面があります。
補強が不十分に見えるマブスですが、開幕までに動くよりも新戦力の融合を進め、その内容次第で次の動きを決める方針を明言しており、まずはサイズアップしたロスターで起こる化学反応に期待することになります。スティールやブロックというわかりやすいスタッツは少ないながらも、隙のないシステムとハードワークで成功しただけに、ここにリムプロテクト力を融合できれば強固なディフェンス組織が完成します。オフェンスはドンチッチに任せればどうにかなるだけに、ディフェンスの再整備が重要な新シーズンになりそうです。