リバウンド力はもちろん、運動量と器用さもブルズにハマる?
再建へと踏み出したピストンズから放出されて以降、この2シーズンの間に4チームを渡り歩くジャーニーマンになってしまったアンドレ・ドラモンドは、新シーズンの開幕をブルズで迎えることになりました。
ネッツでは22.3分のプレータイムながら2桁リバウンドを稼いでおり、いまだリーグトップのリバウンダーではあるものの、勝利を目指すチームの中心的な存在にするにはプレーの安定感に課題があり、かといってキャラクターが強烈過ぎるため、ドラモンド仕様の戦術にしなければフィットが難しく、使いにくい選手になっています。
ドラモンドはリバウンドが強いだけでなく、ハンドリングやパススキルも持ち合わせ、パワー系というイメージに反して器用な選手ですが、スキルはあってもイマジネーションが不足しており、『ポイントセンター』としてプレーメークを任せるわけにはいかず、ピストンズ時代のように優先的にボールを持たせるわけにはいきません。
また、パワーを生かしたポジション取りでリバウンドは強い反面、やや高さ不足のためセンター相手のゴール下の攻防は苦手で、ヘルプ担当としてもブロック力が低く、逆にガード相手にもアウトサイドで守れるフットワークの良さで、スティールが多いタイプのディフェンダーです。そのため、オフェンスではゴール下のシュートミスが多く、ディフェンスではリムプロテクターとして機能せず、ゴール下に固定すると中途半端な活躍になってしまいます。
しかしブルズは同じくブロック力が低いニコラ・ブーチェビッチにはゴール下ではなく広い範囲のカバーディフェンスを設定し、全員でインサイドのヘルプをするハードワーク重視のディフェンス戦術を組んでおり、ドラモンドの特徴がフィットしやすい形です。オフェンス面でもデマー・デローザンとザック・ラビーンのドライブアタックを中心にしたチーム戦術の中で、ゴール下に留まることなく動き回ってくれれば、ブーチェビッチと同じ役割を当てはめられそうです。
『同じ役割』と言っても両者の長所は大きく異なり、ドラモンドはアウトサイドのシュートがない代わりに、フィジカルを生かした強烈なスクリーンや、中継役としてパスを受けてからのハンドオフプレーでツーメンゲームを展開し、何よりもオフェンスリバウンドが期待できます。昨シーズンのブルズはオフェンスリバウンドがリーグで2番目に少なく、セカンドチャンスを生み出せなかっただけに、ドラモンドの個人能力はチームの弱点を明確に補うことが期待できます。
ハイプレッシャーのディフェンスや速攻にも参加できるドラモンドは、ハードワークを基本とするビリー・ドノバンのスタイルにハマりそうです。ロスターにはガードが多く、4ガードシステムも多用した中で、身体能力は低くてもプレーを予測する能力の高いブーチェビッチは代えの効かない存在でしたが、代役となるドラモンドはフィジカルと運動量で同じ役割をこなしてくれるだけに、対戦相手に応じた使い分けができます。
場合によっては2人を同時にコートに出したツインタワーも考えられ、単調だった戦い方に幅が生まれます。ドラモンドにとってもブルズの戦術はフィットしそうですが、それ以上にブルズにとっては必要不可欠なベンチメンバーになるでしょう。
久しぶりにプレーオフに進み、成功したシーズンを経て、今オフのブルズは主力の残留を優先し、目立った補強はドラモンドとゴラン・ドラギッチの2人だけでした。それだけにドラモンドの活躍がなければ『プレーオフで勝てるチーム』への進化もありません。オールスターにも選ばれた29歳がジャーニーマンになるには早すぎるだけに、ドラモンド自身も『チームを勝たせる選手』であることを証明し、再びチームの中核へと返り咲く重要なシーズンになります。