馬瓜ステファニー&山本麻衣

文=鈴木健一郎 写真=バスケット・カウント編集部、FIBA.com

10月上旬に行われた3人制バスケ『3×3』のU23ワールドカップ、若き女子日本代表はファイナルに進出して準優勝という大きな成果を挙げ、山本麻衣は女子の大会ベスト3にも選出された。馬瓜ステファニー、小山真実、栗林未和、山本はいずれも5人制のWリーグ所属の若手選手。3×3の経験が決して豊富なわけではないが、世代のトッププレーヤーとして代表に選ばれ、見事に結果を出した。その日本代表から、桜花学園でともにプレーした馬瓜と山本に話を聞いた。

馬瓜「実際にやってみてすごく楽しかった」

──2人とも、もともと3×3をやっていたわけではありませんよね。3×3の日本代表になるきっかけはどんなものだったか教えてください。

馬瓜 アジア競技大会で栗林選手がケガをして出場できなくなり、代役の打診をいただいたのが最初です。5人制の代表として合宿をやってきて、ようやく本大会を迎えたところだったので「こんなこともあるんだ」と驚きました。それでも、誰を選ぶかというところで自分の名前を出していただいたのはうれしかったし、実際に3×3をやってみてすごく楽しかったです。

山本 私は7月のネーションズリーグで声を掛けてもらったのですが、3×3には以前から興味を持っていて、Wリーグに入ってからは結構見に行っていました。「すごくキツそう」というのが最初の印象でしたが、選んでもらって挑戦したいと思いました。

馬瓜 私は興味がなかったわけではないんですけど、あまりにも急だったので。栗林選手のケガがなければ始めていなかったと思います。栗林選手とはワールドカップで一緒に戦うことができました。結果的に私が3×3をプレーするきっかけをくれたことに感謝です。

馬瓜ステファニー&山本麻衣

山本「自分の思ったプレーをそのまま表現できるのは楽しい」

──2人ともワールドカップの前に実戦を経験した後、本格的な準備として3×3に慣れる必要があったと思いますが、難しかったのはどこですか? また楽しかったところは?

山本 3人でハーフコートを使うことです。5人制では絶対ないシチュエーションで、そのスペーシングの取り方は難しかったです。5人だったらタイミングが少しズレてもカバーできるんですが、3人制は3人がちゃんと合わせないとプレーになりません。集まってすぐできることではありませんから。

馬瓜 コートに3人しかいないので、サボっている選手が1人いたらすぐ影響が出ます。周りのためにどれだけ動けるかを意識しました。ボールへのアジャストも難しくて、いつもはシュートはワンハンドなんですけど、大会ぎりぎりまで2点シュートをツーハンドで打っていたんです。やっとボールに慣れたと思ってワンハンドに変えたんですが、結局1本も入らず後悔しています。

山本 楽しいのは自分の思ったプレーをそのまま表現できるところです。

馬瓜 そうですね。自分のやりたいことが自由にできます。私は5人制でも1対1の駆け引きが得意なので、3人制になるとボールを持つ機会も増えて、やりたいプレーができるので単純に楽しかったです。正直、ウチらは3人制の方が向いているのかもしれない(笑)。

山本 そうですね(笑)。

馬瓜ステファニー&山本麻衣

馬瓜「フレッシュな状態だったら絶対勝っていた」

──ワールドカップでは快進撃を見せて、銀メダルを獲得しました。この結果については?

山本 うーん……やっぱり優勝したかったです。勝てない相手じゃなかったと思っています。

馬瓜 190cm台の選手が3人いて絶対に止められない、というのじゃなく、自分たちの力不足でした。「もっとできたはず」という後悔があるので、そこは不満があります。

──最終日はファイナルが3試合目、体力的に限界が来て負けてしまった印象です。

馬瓜 そうですけど、相手も3試合やっているので。フレッシュな状態だったら絶対勝っていたと思うんです。それは言い訳なんですけど。

山本 相手の方が気持ちが上だったかもしれないと思います。でも次にやったら勝ちます。

──2人は桜花学園の1学年違いで、プレーを知り尽くした仲だと思います。3×3になった時のお互いのプレースタイル、実力をどう見ていますか?

馬瓜 5人制だとガードは自分で攻める時間が少ないのですが、3人制はポジションに関係なく自分で攻める時間がすごく多くて。結構、やりたいようにやってましたね(笑)。5人制の頭を使って縛る、みたいなものがなくなったら、翼が生えて飛んでいっちゃった(笑)。

山本 世界ではステファニーさんくらいの身長の選手はたくさんいて、その中でオフェンスよりもディフェンスで頑張ってくれました。手の長さを生かしたスティールに助けられました。

──やっぱり、同じ高校出身だからやりやすい、ということはありますか?

山本 やりやすいです。本当にやりやすいです。高校だけじゃなく、中学から対戦相手としてやっているので。

馬瓜 歴史が長いんです(笑)。自分のやりたいことを分かってくれます。言葉にしなくても、アイコンタクトだけで伝わる。今回も歓声で何を言ってるか全然分からないことがあったんですけど、「こういうことだろうな」と相手の裏を突くバックカットができました。

山本 あれ、聞こえてなかったんですか!? 本当に起用なので、やりやすいんです。こういうキャラと言ったらあれですけど(笑)、先輩でもすごく話しやすいし、自分のこともすごく分かってくれているので、プレーの指示だけじゃなく相談もしやすいし、本当にやりやすいです。

馬瓜ステファニー&山本麻衣

山本「小さくてもできるということを証明できた」

──ワールドカップが終わって2人ともトヨタ自動車アンテロープスに戻り、5人制のシーズンを迎えるわけですが、3×3で得られたものは5人制にも生かせますか?

山本 はい。コンタクトが多い3×3で格闘技みたいに戦ってきたので(笑)。5人制の練習に入って、ちょっとプレッシャーを掛けられたぐらいじゃ全然動じないというか、楽に感じます。ディフェンスでも3人制で厳しくやってきた分、すごく勉強になりました。

馬瓜 今回のワールドカップでは身体の強さで押し負けることがありましたが、5人制に戻っても気持ちで負けずに向かっていけます。ディフェンスでもスティールがたくさんできたので、5人制でも続けていきたいです。

──Wリーグでの新シーズンに向けた抱負をお願いします。

山本 ルーキーなので、自分の得意なスピードを生かしたドライブと、3人制で得た経験を生かして頑張ります。

馬瓜 自分は2年目ですが、昨シーズンはちょっと遠慮していた部分があったので、今シーズンは自分らしいプレーをどんどん出して、3人制で得た相手との駆け引きやディフェンスを全部生かして頑張りたいです。

──今回はU23でしたが、銀メダルという結果を出したことで、2020年に向けて『3人制の日本代表』の道も見えてきました。3×3で東京オリンピックに出る可能性をどう考えていますか?

馬瓜 もともと東京でオリンピックをやると決まってから5人制の代表を目指してきました。でもこうやって3×3に出させてもらって、自分としても楽しかったです。どちらを選ぶかと言われても今はまだ決められないですが、3人制もボールとコートが違うだけで同じバスケットで、やることは変わりません。今は決められないですが、どっちに選ばれても全力でやりたいです。

山本 3×3で世界と戦っている時にも、自分はサイズはないですが身体はしっかりと作ったつもりで、コンタクトですごく飛ばされたわけではありませんでした。小さくてもできるということを、この大会で証明できたと思っています。このまま残れたらいいなと思います。