東野智弥技術委員長が語る「東アジア選手権」、「指揮官の引き継ぎ」そして「東京オリンピック開催地枠」

2017/06/11
日本代表
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文=小永吉陽子 写真=小永吉陽子、FIBA.com

東京オリンピックへとつながる東アジア選手権が終了し、JBA東野智弥技術委員長に大会の総括、指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチからフリオ・ラマスへの引き継ぎについて聞いた。そして、バスケットボールにおいて、2012年ロンドン大会から自動出場権が与えられていない『オリンピック開催地枠』についての疑問をぶつけた。

これまで、開催地のイギリス(2012年)もブラジル(2016年)もFIBAから与えられた課題をクリアして開催地枠を得ている。日本も強化の姿勢と結果、そして成長を示すことが大切になってくる。

ディフェンスという『ルカイズム』がチームに浸透した

――東アジア選手権を終えて、日本代表の評価を聞かせてください。

3位決定戦の中国戦のようなバスケが日本のやりたいことでした。このバスケを東アジア選手権でファンの皆さんの前で見せられたことは良かったと思います。

チャイニーズ・タイペイに負けてから、ルカ(パヴィチェヴィッチ)コーチたちは寝ずに相手のスカウティングをしていました。準決勝から一日でどれだけ切り替えて戦えるかという点では、そこの修正は完璧でした。中国戦に臨む選手たちの姿勢や雰囲気がとても良かった。こうした積み重ねが今後につながっていくので、中国戦の勝利は評価したい。

もちろん、勝つことも重要なのですが、僕がルカコーチに要求したのは『スキルのレベルを上げて日本のスタンダードを上げること』。日本代表のスタンダードが上がれば、それはBリーグの戦いにもつながる。すぐには結果として現れないかもしれないけれど、日本代表の土台を作っていくことが大事だと思っています。

なかなかヘッドコーチが決まらない中、ルカコーチが暫定ヘッドコーチを務めたことは正しいやり方ではなかったかもしれませんが、この方法しかなかった。その中で非常に一生懸命に指導をしてくれて、ディフェンスという『ルカイズム』をチームに浸透させてくれたことに、とても感謝しています。

――今まで日本選手はピック&ロールが苦手でしたが、パヴィチェヴィッチコーチ指導の下、どのような手応えがありますか。

スクリーンの角度、タイミング、走るコース、ディフェンスに応じてどう対処するかについて、今までの日本人コーチでは教えきれませんでした。ルカコーチの指導によって選手が様々なスクリーンへの対応を学ぶことができたのです。まだまだ未熟なところもありますが、だいぶ形になったと思います。ルカコーチには本当に感謝しています。

今大会、何人ものBリーグのコーチが長野に試合を見に来ました。見に来たコーチたちが東京オリンピックへの戦いの一歩を見ることができました。

――勝負となったチャイニーズ・タイペイ戦では完敗を喫しました。何が足りなかったのでしょうか。

チャイニーズ・タイペイからは学ばなければなりません。簡単にリバウンドを取られました。チーム作りという点では1カ月間練習をやってきたチャイニーズ・タイペイが上手かったと言わざるを得ません。日本はBリーグのファイナルが終わって、全員が揃った期間はとても短かったです。

もちろん、そのためにシーズン中から合宿をしてきたので、チャイニーズ・タイペイ戦の出来も日本の力だと認めなければなりません。中国戦は今までのどの試合とも違う姿を見せることができ、なぜこの戦いが準決勝でできなかったのかという反省はあります。

それでも最後に見せてくれた中国との戦いが今の日本の最高の形だと思います。ここで修正ができたのは間違いなくBリーグ効果。敗戦後、ここまで強い気持ちで切り替えて試合に臨んだことは今までの日本にはなかった。これは観客に見られている、結果を出さなければいけないという意識の向上からです。

――今後はフリオ・ラマスがヘッドコーチに就任します。パヴィチェヴィッチコーチからはどのように引き継がれるのでしょうか。

今、ラマスコーチはアルゼンチンリーグで采配している関係で、7月上旬に来日します。ルカコーチからラマスコーチへの引き継ぎがキーになるので、ルカコーチがやってきた内容を毎月のようにラマスコーチには報告しています。選手の特徴から、練習の映像、イラン戦の試合映像を送り、日本とアルゼンチンでコミュニケーションを図ってきました。

難しいのはラマスコーチに時間がないこと。アジアカップは8月ですから。本当は引き続き、ルカコーチに技術指導をしてほしいくらいで、ルカコーチが指導してくれたピック&ロールの形は残していかないといけません。そこはもう、コミュニケーションを多くしてやっていくしかないです。

ラマス体制になれば、これまで以上に選手の切磋琢磨が起こるはずです。東アジア選手権を見ても分かるように、リバウンドとインサイドの課題は残っているので、それはラマスコーチにも注文として付け加えながらやっていきます。

開催国枠が認められるための基準は『世界のベスト16』

――先日、東アジア選手権に向けての会見で、JBAの三屋裕子会長が「オリンピックの開催地枠を得るにはワールドカップでベスト16に入ること。非公式だけどFIBAからこの課題を与えられている」との発言がありましたが、これは本当ですか? 非公式の意味は?

確かにその言葉通りです。FIBAから制裁を受けたことにより、我々はまだタスクフォース(FIBAが立ち上げた日本のバスケットボール改革チーム)のコントロール下にいますが、そのタスクフォースのメンバーからは「ベスト16の水準でバスケができていることが大事」と言われています。

「絶対にベスト16に入らなければだめ」というわけではなく、「ベスト16の力があるかを見る」と言われています。最終的には前年のセントラルボード(FIBA中央理事会)で出場できるかどうかが決まります。

世界でベスト16というと、一つの基準は中国です。中国は昨年のオリンピックでは1勝もできませんでしたが、2006年と2010年の世界選手権では予選ラウンドを突破してベスト16に入りました。2008年の北京五輪では予選を突破してベスト8に入っています。2008年と2010年はヤオ・ミンがいた時です。

アジア勢として、そのくらいの戦力があるかどうかを見ると言われているので、ワールドカップのベスト16というのは私にとっても基準になります。またワールドカップ予選での戦いや、どれだけ成長しているかもFIBAに見られるのではないかと思います。

――では、今のところは公式的に「ワールドカップで何位」というような具体的な課題が与えられたわけではないのですね?

そうです。ワールドカップにつながる上で、日本はどういう強化をしているのかをアピールすることが大事です。ですから、これからは一試合も無駄にはできず、どの大会でも、どの試合でも、日本が成長していることを示していかなければなりません。

――評価の対象はトップのフル代表ですか? アンダーカテゴリーも含めてすべてが評価されますか?

もちろん、アンダーカテゴリーも評価されます。今年の夏はU-19ワールドカップとユニバーシアードがありますが、我々が若い世代をしっかり育成して、若い世代にも可能性があることを示すことも大事です。

この夏、八村塁(ゴンザガ大)はU-19の世界大会に出ますが、本当は渡邉雄太(ジョージ・ワシントン大)もユニバーシアードに出したいくらいだったんです。ただ、大学での授業の兼ね合いで残念ながら調整ができませんでした。我々のオリンピックへの出場権の戦いはもう始まっているのです。U-19だってユニバだって、すべての強化が大切です。若い世代については、定期的に合宿をして強化していきます。

――女子の場合はどうなりますか? 女子はアジア2連覇中で、オリンピックでベスト8に入った実績がありますが、やはり出場のための条件を出されるのでしょうか?

女子も同じです。大会で成績を残し、成長を見せなければなりません。男子はダメだけど女子はOKという話ではありません。すべてはオリンピック前年のセントラルボード(FIBA中央委員会)で発表になります。ですから、今度のアジアカップが重要になります。今、各カテゴリーのコーチ陣にはプレッシャーをかけているところですが、我々を含めて現場は一丸となってやっていかなければなりません。