小林祐

先輩に何度も誘われ「行ってみたら最高に楽しいバスケに出会った」

Jr.ウインターカップに出場したLakeForce(滋賀)では、180cm前後の選手がほとんどの中で、中学3年生にして身長195cm、横幅もある体形の小林祐は一際目立つ存在だった。走るフォームはぎこちなく、他の選手と比べると洗練されているとは言い難いが、彼は中学に入ってバスケットボールを始めた選手。ミニバス時代からエリートだった選手たちと比べたら差が出るのは仕方ない。

「バスケを始めたのは中1です。もともと僕自身、あまりスポーツが好きじゃなくて、部活にも入らんとこうと思っていたんです」と小林は言う。「でも、先輩から熱く誘われて、走るのも嫌いだし断っていたんですけど、『一回でもいいから』、『やってみて嫌だったら辞めてもいいから』と何度も誘ってもらって、それで練習に行ってみたら最高に楽しいバスケに出会って、それをきっかけに学校の部活とLakeForceでここまでやってきました」

Jr.ウインターカップはまだ始まったばかりの大会だが、U15年代とあって多くのコーチが「勝利よりも選手の成長が目的」と語った。実際、勝つことだけが目的であれば、小林はスキル面で物足りないと判断されて試合に出れなかったかもしれないが、LakeForceの井門靖昇コーチは大会を通して数分でも彼をコートに送り出し、大会3日目のダブルヘッダー2試合目となった準決勝では千葉ジェッツU15(千葉)を相手に24分出場させ、小林は8得点を挙げて期待に応えた。

チームは準決勝でKAGO CLUB(大阪)に敗れたが、この試合での小林は前半こそ出場がなかったものの、サイズのないKAGOにオフェンスリバウンドを奪われ続ける展開を受けて後半に11分間プレー。サイズはなくてもスピードとスキルで勝負する点では全国トップクラスのKAGOの選手とのマッチアップは貴重な経験になったはずだ。

小林祐

「選手として頑張って海外に行って、スキルコーチになりたい」

「まだ身長は少し伸び続けています。やっぱりできれば2mまで欲しいです」と言う小林だが、サイズに頼ったバスケをやり続けるつもりはない。ハンドリングはまだまだでも、ポストアップからターンしてのシュートは、自分の武器として磨いてきただけにキレが違う。ジェッツU15からもKAGOからも、この武器で得点を挙げた。

コロナ禍で練習がままならない中、小林はYoutubeで海外のスキルコーチの動画を見まくった。Youtubeが自分のスキルを伸ばしてくれたと彼は言う。「僕ができるのはポストプレーです。でも、僕もガードみたいにボール運びやシュートができるようになりたい。ハンドリングが無理でもシュートをまず身に着けようと、Youtubeの動画をすごく見ました」

その影響力の大きさは、彼が描く将来像にまで及んでいる。「Youtubeを見ているうちに、スキルコーチにあこがれるようになりました。選手として頑張って海外に行って、日本人じゃなく海外のビッグマンにスキルを教えるコーチになりたいです」

KAGOに敗れた試合後、小林は「悔しいですけど、やりきりました」と、努力を重ねてきたからこそ見せられる充実した笑顔を見せた。彼は全国3位になれたことに素直に驚き、素直に喜んでいる。

「中学最後の大会は地区大会3位で、部活のみんなで最後までやりきれたのは本当に良かったです。今回は全国3位で優勝はできなかったけど、中学からバスケを始めた僕がここまで来れたのはすごい。コーチや仲間のおかげだし、何度も熱く誘ってくれた先輩に感謝しています。今も走るのは嫌いだし、つらいこともあったんですけど楽しいこともいっぱいあって、バスケをやって良かったです」

ミニバス時代から全国大会に出るような早熟のエリートがいる一方で、中学からバスケを始めてコツコツと努力を重ねる小林のような選手もいる。Jr.ウインターカップは彼らが同じコートに立ち、それぞれの持ち味を出して貴重な経験を積む舞台となった。