カイリー・アービング

「プレーできるなら、それが敵地の試合だけでも感謝したい」

新型コロナウイルスのワクチンを接種しないカイリー・アービングは、ネッツが本拠地を置くニューヨーク市のルールによりホームゲーム全試合に出場できない。球団は開幕直前、カイリーを敵地の試合でだけプレーさせるのではなく、問題が解決するまでチームから外す決断を下した。

だが、その彼がチームに復帰した。健康安全プロトコル入りする選手が続出する状況を受け、球団は残った選手の負担を減らすべくカイリーを呼び戻したのだ。開幕後では初めて会見に応じた彼は、「離れた場所からチームを見ているのはつらかった。みんなの健康をただ祈っていた。僕がプレーする機会を与えられるのであれば、それが敵地での試合だけだとしても感謝したい」と語る。

球団の決定は不本意なものだったのだろうが、カイリーにわだかまりはない。「開幕を前にして、僕はバスケ選手としてプレーでチームに貢献できると考えていたけど、残念ながらそうはならなかった。それでも僕は球団の決定を理解し、尊重した。決まってしまったことに対して感情的になるんじゃなく、じっくりと評価して、球団の視点からも物事を見るようにした。僕はただ、今こうしてここにいられることに感謝しているよ」

今日もネッツはセブンティシクサーズとの試合を行っているが、これはカイリーの出場が認められないホームゲーム。ここからホーム3連戦が組まれており、カイリーの今シーズン初出場は敵地で行われる現地1月5日のペイサーズ戦、あるいは12日のブルズ戦になりそうだ。

カイリーとは同じ高校の出身で、欠場中もしばしば連絡を取り合っていたというディアンドレ・ベンブリーは、球団の決定を大歓迎している。「なぜカイリーのような選手がいないんだ? とずっと思っていたよ。どんな状況であれ彼はチームに貢献できるからね」

ただ、ヘッドコーチのスティーブ・ナッシュは選手起用の難しさを素直に認めている。「チームのためにといろいろ考えるんだけど、翌日にはすべての条件が変わってしまう。ただ、みんなチームの勝利という観点から、私の決断を理解してくれるだろう」

指揮官が直面する最大の問題はカイリーの起用法だ。ワクチン接種の問題がなければ当然スタートで起用される選手だが、今回はどうするのか。カイリー不在の穴を埋めているのはパティ・ミルズだが、敵地での試合のみ彼をベンチスタートに回し、試合ごとに役割を入れ替えさせるのだろうか。また、健康安全プロトコルでの欠場が落ち着き、ケガ人が戻って来ることで、これまでチームを支えた選手、特にこの機会に成長している若手のプレータイムを削ることになる。

足首を手術して戦線離脱中のジョー・ハリスは順調に回復しており、すでに個人練習を再開している。カイリーだけでなくハリスの復帰もチームには大きなプラスとなるはずだが、チームが最大限のメリットを受ける起用法は、これからナッシュが見いだしていかなければならない。「全員をプレーさせることはできない」と指揮官は言う。「ありとあらゆる条件が常に変わっているが、現実を受け止めて最善を尽くすよ」