「人としてもこの大学4年間で一番成長できたと思っています」
今年のインカレは白鷗大の初優勝で幕を閉じた。
選手たちの全力プレーに大会は大きな盛り上がりを見せたが、その中で会場を大いに沸かせた選手の一人が専修大4年のキング開だった。ゴール下への鋭いドライブからオフバランスになっても決めきる体幹の強さと決定力を持ち、ディフェンスでは前からの激しいプレッシャーで相手のキーマンを苦しめた。また、常に声を出して味方を鼓舞し、個性豊かなタレント集団である専修大を強烈なリーダーシップでまとめ上げた。その存在感はコート上で一際目立っていた。
2年前の盛實海翔、昨年の西野曜のようなエースは不在だった。それでも、専修大が関東大学リーグで4位、そしてインカレでは準決勝であと一歩のところまで東海大を追い詰めての4位と、結果を残せたのはキングの大きな貢献があったからこそだ。
準決勝の試合後、悔しさを堪えきれずにコート上で流した涙が印象的だったが、筑波大との3位決定戦(58-69で敗戦)を終えた後のキングは晴れやかな表情で会見に応じてくれた。「チーム全員、よく戦ってくれましたし、簡単に気持ちの切り替えができるゲームではなかったです。それでも、やっぱり今日が最後だったので、自分を筆頭に勝って笑顔で終わろうとゲーム前に話しました。タイムアウトの時も、積極的に声を出して、下を向かずに上を向いてバスケットをやろうと声をかけていました」
このように大学最後の試合への思いを語ったキングは、4年間の大学生活を実り多きものだったと総括する。「4年間、いろいろと苦しい時、うれしい時もありましたが、バスケットボール選手、人としてもこの大学4年間で一番成長できたと思っています。本当に最後はみんなに感謝の気持ちを伝えたいという思いでした」
「上のレベルでやっている人はネガティブなことは言わない」
アレセイア湘南高でのキングは全国の舞台での実績がなく、無名と言える存在だった。しかし、専修大では1年からローテーション入りし、在学4年間でインカレ準優勝2回、4位に1回と見事な成績を残した。世代を代表するガードとして、自身の夢であるプロバスケットボール選手になれる実力をつけたが、それは専修大に入ったからこそと感謝を強調する。
「自分はプロになりたい夢を高校の時から持っていて、そのチャンスが一番あるのは専修大だと思っていました。努力しないとそこまでいけなくて、自分次第なのは入学当初から分かっていました。そして入学してからガードへのコンバートをヘッドコーチの(佐々木)優一さんが認めてくれて、自分をガードとして使ってくれたことに本当に感謝しています」
「重富兄弟、(盛實)海翔さんなど、先輩にお手本となる選手がいて、学べたのは大きな財産です。今後は日本を代表するガードとして活躍したい。日本だけでなく、海外でも通用するプレーヤーになりたい。ここは一つの区切りですけど、努力を続けてもっと良い選手になりたいと思います」
また、プレー面だけでなく、常に前向きな姿勢で周囲を引っ張っていける人間力もキングの大きな魅力だ。「バスケは楽しいですし、大好きです。そして自分が上手くなりたいなら、努力するしかない。上のレベルでやっている人はネガティブなことは言わない。NBA選手の記者会見を聞いていてもマイナスなことを話さないです」
そして、自身の信念をこう続ける。「どれだけマイナスをプラスに変えられるかで選手、人としても成長できる。どんなことでも前向きにとらえていこうという思いでやっています」
キング本人が語るようにこの4年間で、彼は選手、そして一人の人間として大きくレベルアップした。その成果をBリーグの舞台で見せてくれることを楽しみにしたい。