渡邊雄太

文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

シュートタッチに苦しむも「大事なのは勝つこと」

バスケットボール男子日本代表は今日、大田区総合体育館でイランと対戦し、70-56で快勝した。このWindow4で代表チームに加わった渡邊雄太は30分の出場で18得点を挙げて勝利に貢献。先のカザフスタン戦では素晴らしいパフォーマンスを見せたにもかかわらず「最低の出来」と及第点以下の自己評価で、この強豪イラン戦に向けて気を引き締めていたが、今回は「前半の立ち上がりが全然納得できていない」としつつも「でも大事なのは勝つことなので、まあまあかなと思います」と、一応の及第点を付けた。

シュートタッチは必ずしも良くなかった。カザフスタン戦での活躍によりイランから徹底的に警戒され、フィールドゴール成功率は14本中5本の36%と低かった。実際にはそれだけでなく、普段アメリカで使いなれているものとはメーカーが違うボールのタッチの差に苦しんだ部分もあった。今回の遠征中はボールを肌身離さず、部屋でも移動中もずっと感覚を確かめていたそうだ。

チームを引っ張るべき存在と自認する渡邊にとって、チームがお膳立てしてくれたチャンスも決め切れない自分には不甲斐なさがあったのだろう。それでも18得点は立派な数字だし、それ以上に誰かにチャンスを託すのではなく、自分で行く姿勢を貫いたことでチームに推進力を与え続けて勝利に貢献した。それが分かっているからこその「まあまあ」なのだろう。一方でNBAでも認められたディフェンスでは本領を発揮。第1クォーターに3本の3ポイントシュートを固め打ちされた相手のシューターのマークを任されると、それ以降は沈黙させた。

渡邊雄太

ホームで初めての公式戦に「すごくワクワクしました」

こうなると、残り4試合のワールドカップ予選も渡邊抜きには考えられないところだが、恐らく残りの4試合に渡邊は招集できないだろう。うまく行けばグリズリーズの一員としてNBAの戦いの真っ最中、そうでなくてもGリーグのメンフィス・ハッスルで自分の価値を示す戦いが待ち受けているのだ。「これから新たな勝負が始まって、想像を絶するような世界でやっていかないといけないので、しっかり準備をして」と渡邊はアメリカに戻っての挑戦に思いを馳せる。

「自分自身、今回代表の一員としてプレーして、日本が本当に強くなってきていると感じました。得点は僕と(八村)塁が多く取っているんですけど、得点できる選手は他にもたくさんいるので、もし僕と塁が帰ってこれなくても、今の日本なら他の強い国が相手でもやれるんじゃないかと思っています」

「強い気持ちを持って、また『日本一丸』となって戦ってもらいたいなと思っています」。これが渡邊の偽らざる心境だろう。今後の招集は確約できないし、見込みが薄いのも理解している。その中で『国内組』の成長ぶりを感じ、彼らに後を託す。

渡邊や八村に完全に依存するチームでは、ビッグマッチに一つ勝つことはできてもアジアの強豪の地位に上がり、世界と渡り合うことはできない。「公式戦を日本でやるのが僕は初めてで、バスを降りた時からたくさんのお客さんが待っていて自分自身すごくワクワクしました。ずっと楽しい時間でした」と渡邊は笑みとともに今日を振り返る。次はワールドカップ本大会で──。