田原隆徳

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

チームが決まらず「バスケ、辞めるのかなって」

Bリーグ初年度、札幌大に在学中だった田原隆徳は特別指定選手としてレバンガ北海道に入団した。昨シーズンは大学を卒業して本契約を結んだが出場はわずか8試合、平均3分の出場とプレータイムを勝ち取ることができなかった。

北海道からの退団が決まった今オフ、6月1日に開催されたBリーグトライアウトに田原の姿があった。総じて参加者のレベルは高かったが、唯一、B1を経験している田原の存在は中でも目立っていた。それでも、そこから栃木との契約が決まるまでは苦しい時期が続いた。最初はB2チームからのオファーがあったそうだが、田原はB1でのプレーにこだわり、時間がかかった。

「焦っていました。『バスケ、辞めるのかな』とも思いました」と田原は言う。「B2の話が流れてしまって、その頃は少し後悔していました。B2から徐々に上がっていけば良かったのかなって。7月の後半になるとトライアウトで頑張っていた選手たちも契約が決まっていき、もう本当にヤバいと思いました」

苦しい思いを味わったからこそ、多くの人が支えてくれたことを田原は感謝している。「なかなか決まらなかったんですけど、折茂(武彦)さんなどいろんな人が助けてくれました。栃木にしても、茨城に練習に行った時に上原(和人)GMが紹介してくれたんです。自分の実力じゃなく、みんなが助けてくれて繋がったので、本当に感謝したいです」

田原隆徳

プレータイムを与えられ「徐々に認めてもらえてきた」

プレータイムを求めて移籍を選んだ田原だが、チームが決まらない苦しみを体験したことで、その考え方には少なからず変化が生じている。「チームが決まらず、変わらざるを得なかったです」と言う田原は、栃木で2番手、3番手となるのは承知の上。そこに納得した上で契約した。

「B1で優勝したチームで、その時を知っている選手とやれる経験はなかなかできないことです。プレータイムもらえた時は全力でやって、そこでチャンスをつかんで、少しずつ伸ばしていこうと。そこはもう北海道の時から変わらないですが、ずっと頑張っていれば花開くわけではないですけど、強い気持ちで、プラスの気持ちでやっています」

プレータイムが確約されていない選手にとっては日々の練習が指揮官にアピールする場になり、実戦形式となればなおさらその意味合いは強い。プレシーズンマッチの大阪エヴェッサ戦に続き、アーリーカップ準決勝の千葉ジェッツ戦でも3ポイントシュートを沈めるなど、短い時間ながら自分らしいプレーを見せ、一定の結果を残している。

「プレシーズンも少しずつですがプレータイムをもらえました。練習中から(安齋)竜三さんともコミュニケーションを取っていますし、自分がガツガツ頑張って、徐々に認めてもらえてきたかなって」
田原隆徳

いじられキャラを発揮し、チームに溶け込む

新加入選手が最初に直面する問題は、いかにチームに溶け込むかだ。それでも田原にそうした問題は全くなさそうだ。ベンチでは味方のナイスプレーで立ち上がり、さらにはレジェンドの田臥勇太にも絡んでいく姿が見られ、実績のある選手が多いチームに早くも馴染んでいるようだ。

これはキャラクターによるものが大きい。「自分は声出したり盛り上げるタイプで、アップの時一人でずっと声出してますからね(笑)」と田原は言う。「社長の鎌田(眞吾)さんにイジられて、みんなにめっちゃ笑われたりしたんですけど、それでもずっとやっているのでそれが普通になりました」

これは新しい環境で無理にそうしているわけではなく、田原が出す自然なカラーだ。「むしろ北海道では弄られまくっていました」と田原は言う。「僕がスリーを決めて相手がタイムアウトを取った時に、誰かが『良かったぞ』って言ってくれたんです。それが折茂さんの言葉だと気づかなくて、普通にタメ語で返していたら、『お前、俺だと分かってんのか?』と折茂さんにめっちゃ笑われて。それからは『俺にタメ語を使ってくるからなあ』っていつもイジられるようになって、折茂さんには良くしてもらっています」

チームに馴染む課題は早々にクリアした。あとはコートで結果を残すことだ。「自分の役割は決まっているので、そこを徹底してやっていきます。プレータイムが伸びた時に、何をするのかを常に考え、アドバイスをちゃんと聞き入れてチームのプラスになるように頑張ります」

トライアウトを経験し、B1でプレーする稀有な選手として、今後の成長を期待したい。