渡邊雄太

文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com

個人能力で何度も打開し、カザフスタンをノックアウト

「これがNBAのレベルか」という印象を受けたファンも多かったに違いない。NBAのグリズリーズとは2ウェイ契約、まだNBAのコートに立っていないにせよ、渡邊雄太のプレーは一際存在感を放ち、試合全体に影響を与えていた。

昨夜に敵地で行われたカザフスタン戦、試合序盤の日本代表の出来は悪かった。勝たなければいけない気負いがマイナスに働いて慎重になり、相手の激しいプレッシャーもあって本来の積極性やスピードを欠く重い立ち上がりとなった。だが、それを個人技で打開したのが渡邊だった。

0-5とビハインドを背負った場面で打点の高いジャンプシュートを決めて日本に最初の得点をもたらすと、そこから自分で強引に打開していく。カザフスタンも渡邊を警戒して激しく寄せるのだが、渡邊は接触を受けながらもシュートを決めきり、バスケット・カウントをもぎ取る。さらにはクイックリリースのコーナースリーを決め、これで上々のスタートを切ったはずのカザフスタンの調子を崩し、相対的に日本代表を波に乗せた。

第1クォーターで13得点を挙げた後はカザフスタンが渡邊にボールを持たせないディフェンスを遂行したために第2クォーター以降は得点ペースが落ちたが、相手の注意を引き付けることで他の選手への圧力が減り、日本代表の本来のボールムーブが出てきた。これも渡邊が試合にもたらした影響である。

試合は85-70で快勝。渡邊は28分のプレータイムで17得点という出来。「今日はすごく楽しくできましたし、勝つことが大事だったこの試合をしっかり勝てたのはまず良かったです」というコメントを試合後に発表している。

だが、彼はチームの状況を冷静に見ていた。17日にホームで対戦するイランはカザフスタンとはレベルの違う相手。直前でチームに合流した渡邊にとっては2試合目で連携は向上するだろうし、ホームアドバンテージを得られるのだが、それでもまだ厳しいと見ている。

「自分としては、どこの部分というより全体的に日本の力になりたいと思ってプレーしていて、今日の試合は必ずしも満足しているわけではなく、改善点は多いと思います。次のイラン戦で今日のようなプレーをしていてはダメだと思っています。イラン戦までの時間は限られていますが、それでもまだ時間はありますので、しっかり修正していきたいです」

イラン戦まで中3日あるが、移動距離が長くスケジュール的には厳しい。それでもホームでのイラン戦の勝敗が、今後の2次予選を大きく左右するのも確か。Window5とWindow6はNBAのシーズンと重なるために代表参加が難しいであろう渡邊は「僕と塁がいて負けることは許されないと思っています」と強い決意でイラン戦に臨む。