サンダー

伝統の『熱いファイト』にマルチポジションを加えるチーム作り

昨シーズン、クリス・ポールが去ったことでサンダーは再建へと切り替え、途中からは上位指名権を得るためにあからさまなタンクをしたものの、希望していた指名順位を手に入れることはできませんでした。そうして迎えた今オフ、これまで集めに集めたドラフト指名権を使って有望株を集めることもできましたが、むしろ将来の指名権をさらに集める動きを繰り返しました。

こうして迎える新シーズンも、育成に全振りして過ごすことになりそうです。

ラッセル・ウェストブルックを中心に、ハードなディフェンスとトランジションで戦う『熱いファイト』という伝統的スタイルを残しつつ、シュート力の高いビッグマンやマルチポジションのスキルフルな選手を活用する新たなチームカルチャーを作り始めたサンダーは、アウトサイドでプレーする選手ばかりを集めるスタンスを取っています。

7フッター(213cm)のアレクセイ・ポクシェフスキー、彼に次いで長身のマスカーラもセンターではなくシューター的な位置付けで、ビッグマンではありますがシュート力やスキルが求められています。逆に屈強なルーゲンツ・ドートに象徴されるように、ガードでもフィジカルに戦うことが求められていて、全員がサイズに関係なくオールラウンドな働きをすることが重視されます。

ドラフトでは1巡目6位で202㎝のビッグ・ポイントガード、ジョシュ・ギディを指名しました。オーストラリアでプレーした昨シーズンはトリプル・ダブルも記録するなどオールラウンドな能力と、広いパスビジョンからトリッキーなパスも出てくる優れたゲームメーカーです。3ガードを採用することが多いサンダーにベストフィットするタイプですが、線が細くシュート力に課題もあるため、即戦力と言うよりは時間がかかる素材型の選手でもあります。

サンダー

同じく18位で指名したトレイ・マンも素材型ですが、いずれも今シーズンから多くのチャンスを与えられそうで、育成のサンダーらしい指名となりました。

シェイ・ギルジャス・アレクサンダーを中心に勢いのある若手は揃っているものの、今シーズンに勝とうとしているようには見えません。ですが一方で、明確な意図を持って独自のスタイルで選手を集めているのは新生サンダーの面白い部分です。オールラウンダーを増やし、どこかでミスマッチを生み出す戦い方は有効なだけに、将来的には誰もがサンダーのように、どのポジションでもこなせる選手を集めたチームを作りたいのかもしれません。

勝利のプレッシャーを感じることなく野心的な試みを続けられるのはうらやましい環境に見えます。ただ、どこかで『勝ちに行く』に転じるタイミングはやって来ます。サンダーは若い選手たちが日々成長する様子を見ながら、その決断をどこで下すべきかを見計らうことになります。