「面白いバスケができると思うし、雄太と塁もこのスタイルがぴったり」
東京オリンピックでバスケ女子日本代表を銀メダルへと導いた指揮官トム・ホーバスが、今度は男子の日本代表ヘッドコーチに就任した。就任会見の第一声で「すごく大きなチャレンジ。こういうチャレンジが本当に好き」と語るが、2017年に女子日本代表のヘッドコーチに就任した際は東京オリンピックでのメダル獲得を目標に掲げたのに対し、今回は「簡単に目標は言わない」と慎重だ。
「4年前はこのバスケをやったら金メダルのチャンスがあると思っていたけど、今回は男子の選手たちとこれから関係性を作る。選手たちの気持ち、努力のレベル、信じている気持ちをこれから勉強したい。練習中によく見て、いろいろ勉強して、そこから目標を作る。八村塁と渡邊雄太ともアメリカで会って話したい。オリンピックの経験で一番大きかったのは、選手たちが僕のことを信じて尊敬し、僕も選手たちを信じて尊敬したこと。そこは簡単にはできないから、そういうリレーションシップを作りたい」
それでも「プレースタイルは変わらない。だいたい一緒」と、目指すべきバスケの形は見えている。「ファストブレイク、スペーシング。日本の得意なことをやりたい。3ポイントシュート、シューティングと速さ。細かいことを頭を使ってやる。Bリーグには良いシューターもポイントガードもいる。若いビッグマンもいます。面白いバスケができると思うし、雄太と塁もこのスタイルがぴったりだと思います。僕は100%頑張ります」
東京オリンピック終了後に他のオファーもあったようだが、彼は「男子のチャレンジは面白い」と、この仕事を引き受けた。「僕のバスケのスタイルがぴったり合うと思っていて、そこを上手にやったらすごく楽しみ。今は日本のバスケが女子も男子もすごく人気になっているから、ここでレベルアップできたら本当に大きいと思う」
八村と渡邊、ここに馬場雄大を加えた『海外組』は、代表活動に常に参加できるわけではない。彼らをどうチームに組み込み、生かすかが大きなカギとなるが、ホーバスは「チームを作ってからあの2人が入って来る。その時に2人が早く入って、チームのシステム、チームの気持ちを読み取ってチームバスケをしたい。簡単にはできない、大きいチャレンジですけど、できます」と言う。
オリンピックを終えて、女子日本代表からは離れて来週から始まるアジアカップの強化合宿にもかかわらずにアメリカに戻っているホーバスだが、男子日本代表ヘッドコーチの新たな仕事はすぐに始めると言う。「明日には東野(智弥)さんから電話番号をもらいたい。今はサンディエゴで家族と休暇中ですが、日本には10月10日ぐらいには戻って、Bリーグの試合を見たい。開幕戦はネットで見ます」とモチベーションに満ちている。
「選手とリレーションシップを作り、ウチのシステムをやって、みんなの考えを一つにして、目標をよく見て、これからいろいろ作っていきたい」。そう語るトム・ホーバスは日本のバスケファンに「僕が男子のコーチになってショックだったかもしれないけど、女子バスケのファンは男子も応援してください。パリ五輪までよろしくお願いします。頑張ります」とメッセージを送った。
東京オリンピックではホーバス率いる女子日本代表が銀メダルを獲得し、3人制では男女ともに決勝トーナメント進出を果たした。5人制の男子だけが1勝を挙げられず期待に応えられなかったが、成長のペースをこれまでよりも上げてワールドカップへ、そしてパリ五輪へと向かう。フリオ・ラマスの下での選手たちの成長を引き継ぎながらも、チーム強化の方法や選手選考の基準は一新されるだろう。ホーバス・ジャパンの新たな躍進に期待したい。