キャリアワーストの1年を経て、アメリカ代表も途中離脱と苦境
キャバリアーズはブルズとトレイルブレイザーズとの3チーム間トレードを成立させた。ラリー・ナンスJr.を放出し、サイン&トレードでラウリ・マルカネンが加入する。キャブズのフロントコートには契約延長したばかりのジャレット・アレン、ドラフト1巡目3位で指名したエバン・モブリーと若いタレントが揃う。これに伴い、レブロン・ジェームズがいたNBAファイナル常連の時代を知るベテラン、ケビン・ラブは若返りを図るチームで居場所を失い、バイアウトで優勝を狙うチームへと移る、と見られていた。
しかし、このトレードを真っ先に報じた『ESPN』に、ケビン・ラブのエージェントから連絡があった。彼らはキャブズとバイアウトについての話し合いをしたことはないし、ラブ自身がバイアウトに興味を持っていないという。
『cleveland.com』は、キャブズもラブの心情を理解し、新シーズンの戦力と見なしているため放出はしないと報じた。バイアウトとなれば、ラブは残り2年6000万ドル(約65億円)の多くを放棄する前提で交渉しなければならない。この3年間でラブはキャブズの219試合のうち116試合を欠場している。特に昨シーズンはふくらはぎのケガで25試合にしか出場できず、キャリアワーストとも言うべき1年となった。気持ちを切り替えて東京オリンピックに出場し、不振からの脱出を図ったが、これもコンディションが整わずにトレーニングキャンプ途中でアメリカ代表を離れることになった。
それでも、その直後にJ.B.ビッカースタッフはラブとお互い前向きな話し合いの場を持ったそうだ。キャリア最低の時期にある今、金銭面の犠牲を払ってバイアウトしても良い形で新しいチームに行くことはできない。それよりもラブは良いパフォーマンスを取り戻した後で移籍を再度模索し、キャバリアーズもバイアウトではなくトレードで何らかの代償を得ることができれば、両者にとってプラスになる。ラブとはウルブズ時代から長い付き合いのあるビッカースタッフだからこそ、この状況を前向きにとらえられた。
しかし、簡単な話ではない。目に見える結果を出して現状を変えようと考えるラブが、自分よりずっとキャリアの浅い3人をサポートする側に回ることができるだろうか。十分なプレーができないのならともかく、良いコンディションを取り戻せているのであれば、自分がメインの選手として活躍してスタッツを残したいと考えるはずだ。さらに言えば、キャブズは勝てるチームではない。勝てないチームで自己犠牲を続けることの難しさは、ここ数年のラブが一番よく理解している。
オールスターに5度選ばれ、優勝経験もある。32歳はまだ『超高齢』ではない。心身のコンディションを整えることができれば、まだまだNBAで十分に働けるはずだが、悪い流れがこれだけ続くと抜け出すのは簡単ではない。キャブズでの再スタートを選択したラブのキャリア14年目は、彼とビッカースタッフが想定するようなものになるのだろうか。