キャメロン・ペイン

3年1900万ドルで契約延長「このチームのために、僕は成長したい」

NBAファイナル進出という『躍進のシーズン』を終えたサンズには、ポイントガードの契約問題を解決する必要があった。クリス・ポールが残り1年の契約期間を破棄してフリーエージェントになるのは確実で、2番手のポイントガードであるキャメロン・ペインも契約最終年を迎えていた。クリス・ポールはチームを躍進に導いた中心選手で、その慰留は最優先事項だった。そのポールがベンチに下がると出てきて攻守を支えたペインも、NBA6年目でブレイクを迎えていた。ポールを優先させた結果、ペインが流出してしまうのは避けられないというのが一般的な見方だった。

フリーエージェントは選手にとって大きなチャンスだ。ペインのように不安定な立場で何シーズンも過ごした後、契約最終年にインパクトのある活躍を見せれば、自分の将来を安泰にさせる大型契約を求めるのは当たり前のこと。

ペインは2015年の1巡目14位指名を受けてサンダーに加入したが1年半でブルズにトレードされ、キャリア4年目が始まって数カ月で契約解除を言い渡された。その後はキャバリアーズと10日間契約を結ぶも定着できず、翌2019-20シーズンもラプターズのキャンプに参加したが本契約は提示されなかった。この間には中国とGリーグでのプレーも経験している。2019-20シーズン、新型コロナウイルスによる長い中断期間の間にサンズと契約を結び、『バブル』での8勝0敗に貢献。そして昨シーズンのブレイクへと至る。

結果的に彼はサンズと3年1900万ドル(約21億円)での新契約を結ぶのだが、ブレイクに至るまでの苦労が多かっただけに、それ以上の金額を求めて移籍してもおかしくなかった。

「一般的に見ればチャンスだったと思う。でも、個人的には違ったんだ。僕はお金のことよりも、居心地の良さを重視した。僕はバスケが大好きだから、お金が一番重要ってわけじゃない。ここで築いた人間関係を大切にしたかった。僕は『バレー・ボーイ』でいたかったんだ」と、ペインは『Arizona Sports』の取材に答えている。

ペインは27歳になり、NBAキャリア7年目を迎えるが、まだまだ自分は成長できると信じている。そのためにはリーグ最高のポイントガードであるクリス・ポールの2番手として学び、吸収すべきだと考え、また自分の能力を最大限に引き出してくれるヘッドコーチとチームメートと離れるのは得策ではないと考えた。そしてペインは、サンズへの恩義も感じている。

「恩返しの必要はないと言う人もいるだろうけど、僕はサンズのおかげでNBAに戻って来ることができた。その意味は大きいと思っている。サンズは僕の人生を変えてくれた。だからフェニックスで頑張るのは当然のことだよ。モンティ(ウィリアムズ)は偉大なコーチで、その指導をすごく気に入っている。僕はサンズの環境が大好きだから、留まることを決めた。あと2年か3年の契約を結び、ここでもっと多くを学ぶ。このチームのために、僕は成長したい」

3年1900万ドルの契約がペインの選手としての価値に見合っているのかどうかは分からない。レジー・ジャクソンやケンバ・ウォーカーはそれほど高額の契約を得たわけではないし、デニス・シュルーダーのフリーエージェントは大失敗に終わった。ただ、ペインは自分の価値を金額では見ていない。「今、財布の中には十分なお金がある」と彼は笑う。NBAで契約がない時期はほとんど収入がなかった。昨シーズンの稼ぎもNBAでは最も少ない部類の200万ドル(2億1000万円)前後。それと比べれば十分な金額を手にした今、彼は収入よりもプレーヤーとしての本質的な価値を上げ、勝つことを意識している。

「財布は落ち着いたけど、僕のプレーはまだ落ち着いていない。少し活躍できたかもしれないけど、短期間の活躍じゃ『たまたま』だと思われても仕方ない。そうじゃないことを僕は証明したいんだ。僕はまだやる気に満ちている。自分のキャリアをここで作り上げたいんだ。すべてのボールに食らい付くキャメロン・ペインはまだここにいるよ」

ペインのこの性格のおかげで、サンズはポールとペインの体制を維持できた。さらには3番手のポイントガードとして、ニックスからエルフリッド・ペイトンも加わっている。得点力が魅力のペインとは異なり、ペイトンはゲームをコントロールし、チームメートの良さを引き出すタイプ。ペイトンはポールの勧誘がサンズ入りの決め手となったことを明かしている。

サンズは継続路線を採用し、昨シーズンの躍進をまた次に繋げようとしている。新シーズンも西カンファレンスを盛り上げる存在となりそうだ。