オリンピックの新種目となった3×3で、日本代表は男女ともに決勝トーナメント進出を果たした。男子の日本代表で特に目立った活躍を見せたのは、20歳の富永啓生だ。高校時代から同世代では突出していたアウトサイドのシュート力は、オリンピックの舞台でも十分すぎるほどに通用した。またアメリカでフィジカルを鍛えて簡単には当たり負けしなくなり、ドライブで仕掛けてフィニッシュするプレーのバリエーションも増えた。今秋からはNCAA1部のネブラスカ大に編入することも決まっている富永に、オリンピックという大舞台を振り返ってもらった。
「3×3には、やればやるほどどんどんハマっていきました」
──激闘のオリンピックが終わりました。まずはこの大会を振り返りたいのですが、もともと3人制バスケの『3×3』での日本代表入りは意識していなかったですよね。3×3で東京オリンピックに出場することを、どう考えていましたか?
オリンピックに出ることは小さい頃からの夢だったので、それを実現できたことは本当にうれしいですし、良い経験ができました。高校までは5人制しかやったことがなくて、高校を卒業した時に一度、3×3のアンダーカテゴリーの合宿に呼んでもらって大会に出ました。あの合宿に呼ばれたところから自分の3×3のキャリアがスタートしたんですけど、それまでやったことがなかったので、分からないというか未知の競技でした。
それでも、オリンピックの競技になることは決まっていたし、代表合宿に呼ばれたのはうれしかったです。どんな競技か楽しみな気持ちで参加して、やってみたら本当に面白いし、あの機会をもらえて良かったと思っています。最初はルールを覚えるのが大変だったという記憶もあるんですけど(笑)、やればやるほどどんどんハマっていきました。
──3×3の面白さは多くの人に伝わったと思いますが、5人制をメインにやっていたプレーヤーとしては相性もあるはずです。富永選手が3×3に触れる上で「自分に向いているかも」と思ったのはどんな点ですか?
外からのシュートが、5人制だと中の2点に対して3点なので1.5倍ですが、3×3だと中の1点に対して2倍になるので、自分のアドバンテージがそこであると思ったのがまず一つ。もう一つは速いテンポで休みなく動き続けるので、オープンシュートが作りやすい。やっていく中で試合中で考えて判断しなきゃいけないことも多いんですけど、それは本当に勉強になりました。そういったところでハマっていったし、単純に楽しくプレーできました。
──ギリギリでしたが決勝トーナメント進出を果たし、最終的に金メダルを獲得したラトビアとの決勝トーナメント1回戦では18-21と惜しい勝負に持ち込むことができました。ベスト8という結果については、どう受け止めていますか?
目標はメダルを取ることだったので、それができなかったのは残念です。それでも大会を優勝したラトビアとも接戦ができました。あと一歩のところで自分たちの経験不足だったり簡単なミスがあったりで届かなかったんですけど、出ていたチームに力の差はそれほどなかったとも感じます。メダルを取れるレベルまでは来ていたと思います。
予選突破という成果が出せたのは、これまでの長い合宿での選考で競い合ってきた仲間がいて、あそこで高いレベルで競争できたことが自分たちの成長に繋がったからだと思います。本当に大変な合宿でしたけど、必要な経験だったと思います。
「一つひとつのミスをもう少し減らせたら、もっと勝てたと思います」
──あっという間の大会期間でしたが、全部で8試合を戦いました。富永選手の1試合平均6.9得点は3×3男子で3位の数字です。55得点のうち最も印象深い、決めて気持ち良かった得点はどのシーンですか?
これが気持ち良い、という話になると中国戦の最後のシュートですね。あれが多分一番です(笑)。
──シュート力そのものには揺るぎない自信をずっと持っていると思いますが、3×3で課題としていた部分はどこですか?
相手がゴリゴリで力ずくで攻めてきた時のディフェンスですね。あとはあまり長く一緒にやってきたメンバーではないので、コミュニケーションの部分は少し大丈夫かなと思っていたんですけど、何とかできました。身体はアメリカに行ってかなり強くなったと思うので、特に高校の時と比べると全然違いますね。トレーニングしていることもありますし、日頃の練習から当たりも違うので、自分自身変わってきていると思います。自分の力だけじゃなくチームメートがかなりサポートしてくれたので、それも大きいんですけど、一番は自分が負けたくないという気持ちを前面に出してプレーできたことだと思います。
一つひとつのミスをもう少し減らせたら、もっと勝てたと思います。試合終盤で接戦になった時、試合の勝ち方ができていれば違った成績も残せたと思います。
──試合以外ではオリンピックでどんな経験ができましたか?
すべてが未知のことだったので、選手村での滞在も試合のことも、すべてにおいて良い経験ができたと思います。特に印象に残っているのは開会式ですね。国立競技場に行ったのはあの時が初めてだったので、会場に入った瞬間は「すごい!」と圧倒されました。
──今回のオリンピックでは良い経験をすることができましたが、今後は3×3とどう付き合っていきますか?
もちろん、機会があれば3人制も続けていきたいです。アメリカの大学では5人制をやるので、メインは5人制なんですけど、そこは臨機応変に必要とされる方でプレーしたいです。3人制をこれで終わりにするのではなく、続けていきたい気持ちはあります。
──アメリカにはいつ出発ですか?
8月18日に出発します。これからネブラスカ大で自分の持ち味である3ポイントシュートで活躍して、目標であるNBA選手になれるように頑張ります。ファンの皆様にはいつも応援していただいてありがとうございます。これからもご声援に応えられるように頑張るので、応援よろしくお願いします。