セルヒオ・エルナンデス

「フリオ・ラマスは兄弟のようなもの」

バスケットボール男子日本代表は『歴史的1勝』を目標に東京オリンピックに臨んだが、善戦するもスペインに敗れ、ルカ・ドンチッチを擁するスロベニアにも大敗した。目標達成のチャンスは、グループリーグ最終戦のアルゼンチン戦のみとなった。

アルゼンチンは2004年のアテネオリンピックで金メダルを獲得し、続く2008年の北京オリンピックでも銅メダルを獲得。日本が5戦全敗を喫した2019年のワールドカップでも準優勝となった世界ランキング4位の強豪だ。しかし、現在のアルゼンチンは日本と同じく、0勝2敗でグループリーグ敗退の危機に直面している。

アルゼンチンの指揮を執るセルヒオ・エルナンデスは、日本のフリオ・ラマスヘッドコーチと旧知の仲だ。ヘッドコーチとアシスタントコーチという関係で共闘し、母国を強豪へと押し上げた。しかし、2人の経歴には若干の差がある。銅メダルを獲得した北京オリンピックはエルナンデスがチームを率い、ラマスがアシスタントコーチを務めた。エルナンデスがアシスタントコーチを務め、ラマスがヘッドコーチを務めたロンドンオリンピックではメダル獲得を逃し4位に終わった。率いるチームの実力に差はあるが、前述の通りワールドカップでの成績もエルナンデスのほうが上だ。

決勝トーナメントには各グループの上位2チーム(計6チーム)だけでなく、グループ3位の上位2チームも進むことができる。そのため、両者はただ勝つだけでなく、大差をつけて勝つことが必要となり、エルナンデスヘッドコーチは「もちろん、彼に勝ちたいよ。でも、それと同時に彼が勝ちたいと思っていることも知っている」と笑顔で語った。

こうしたコメントのように、エルナンデスに敵対視する感情はない。むしろ、「兄弟のようなもの」と2人の関係性を表現し、対戦を楽しみにしている。「我々が勝っても日本が勝っても、私たちはいつものように友達でいられると思う。これが人生です。バスケットボールは仕事であって、人生ではない。私にとってフリオ・ラマスは単なるコーチではなく、友人であり、兄弟のようなものです」

決勝トーナメント進出に向け、圧勝が求められる両チーム。試合内容とともに、2人の『師弟対決』の行方にも注目したい。