明確な長所と短所を持つ未完の大器はNBAにアジャストできるか?
NBAドラフトでは、実力を高く評価された選手が上位指名で並ぶ一方で、ポテンシャルの評価が定まらない選手が中位以降で指名されていきます。シーズンMVPを受賞したニコラ・ヨキッチは2014年の2巡目で、ファイナルMVPを受賞したヤニス・アデトクンポは2013年の1巡目15位でそれぞれ指名されており、成功例も十分にありますが、アメリカの大学でプレーしていない選手の評価は難しいものがあります。
今年のドラフトで評価が分かれているインターナショナルの選手の一人がトルコのアルペラン・シェングンです。平均19.2得点、9.4リバウンド、1.7ブロックを記録し、トルコリーグのMVPに選ばれた19歳になったばかりのセンターで、的確なポジショニングと高いスキルで巧みに得点を積み上げていきます。ディフェンスはブロックだけでなくスティールも多く、オフェンスの先を読んだ対応ができる有望株です。その一方で、身体能力でNBAのセンターに太刀打ちできるかは定かではなく、そこにフィットできるかどうか、指名するチームにとっては『賭け』となります。
ヨーロッパのセンターらしく、アウトサイドシュートも決める能力を持ち合わせていますが、それ以上にアシスト能力があるため、ドマンタス・サボニスのようにインサイドのプレーメーカーとして機能しそうです。アメリカには少ないタイプのセンターですが、ヨキッチやサボニスなどNBAでの成功例が多く、ビッグマンを求めるキングスやホーネッツが10位前後で指名する予想もあれば、20位以降まで残っている予想もあり評価が割れています。
同じインサイドプレーヤーのウスマン・ガルバはさらに評価が割れており、10位前後の予想もあれば2巡目まで残る予想もあります。ユーロの強豪レアル・マドリーでプレーし、東京オリンピックにも参加している19歳は、シェングンとは違ってアスレチックなタイプのビッグマンで、フィジカルや反応の良さでリバウンドを奪うだけでなく、ガード相手のペリメーターディフェンスもこなせるだけに、ディフェンダーとして即戦力にもなり得る選手です。
若い選手らしくシュート能力は発展途上で、フリースロー成功率も60%台と苦戦していますが、アンセルフィッシュなプレーで自分の役割に徹してもいます。プレーメークするタイプではないだけに、チームオフェンスの一部として活用する方針が明確なチームが好みそうなタイプで、12位でスパーズが指名する予想があります。
少なくとも一定の活躍は見込めるビッグマンに対して、判断がより難しいのがオーストラリアのジョシュ・ギディかもしれません。スーパースターになる可能性も、全く通用しない可能性もある203cmのビッグガードは、オーストラリアリーグでは非凡なパスセンスで7.4アシストを記録した一方で、3ポイントシュート成功率は30%を下回っており、ベン・シモンズを彷彿とさせる特徴を持っています。ただ、NBAのガードとしてはスピード不足でもあるため、どこまでディフェンスが通用するか未知数です。
その欠点を差し引いても指名したくなるコートビジョンと判断力は、チームオフェンスを劇的に変える可能性も秘めています。新人王のラメロ・ボールのようにディフェンスリバウンドからトランジションを作り出せるため、オフェンス志向のチームに適したポイントガードです。ロンゾ・ボールの去就が不透明なペリカンズが10位で指名するかもしれません。
インターナショナルプレーヤーはすでに優れたプレーをみせている一方で、個人の身体能力が段違いのNBAでも『同じプレーができるのか』が不安視されます。その一方でルカ・ドンチッチのようにスピード面での不安があったはずが、フィジカルの強みとファウルドローの上手さで即座にフィットしただけでなく、NBAルールの方が輝くケースもあります。才能は間違いないだけに多少のミスは許容して、プレータイムを与えてアジャストさせていくチーム方針も重要になってきます。