文=泉誠一 写真=野口岳彦

オンザコート数の事前申請ルールで日本人選手の力が試される

今夏、男子日本代表はオリンピック世界最終予選の舞台に立った。日本で開催された2006年世界バスケ(世界選手権/現・FIBAワールドカップ)以来、実に10年ぶりに世界のナショナルチームと本気の戦いをすることができた。結果は惨敗だったが、日本が目指す道標が見えたことは大きな一歩と言える。

世界に追いつくためには様々な課題があるが、外国籍選手とマッチアップできるケースを国内リーグから増やさなければ、国際大会を見据えた日本の底上げは得られない。その最初の取り組みとして、Bリーグは外国籍選手がコートに立てる制限数である『オンザコート数』を、最大6枠(各ピリオド2名まで)の中で、クラブが各ピリオドの振り分けについて試合前に申請するルールを導入する。世界との戦いを経験し、日本に足りない部分を少しでもリーグ戦から補うことを期待する男子日本代表の長谷川健志ヘッドコーチが発案し、採用されたものだ。

どのようなルールなのか、例を挙げて見よう。Aチームは「第1ピリオド:1名」「第2ピリオド:2名」「第3ピリオド:1名」「第4ピリオド:2名」と6枠を割り当てる。対するBチームは「第1ピリオド:1名」「第2ピリオド:1名」「第3ピリオド:2名」「第3ピリオド:2名」と後半に主たる布陣を敷いたとしよう。

外国籍選手が多い方が優位に立ってしまうのが国内リーグの現状である。ゆえに第2ピリオドはAチームが、第3ピリオドはBチームが、それぞれ外国籍選手が1人多い時間帯となり、マッチアップする日本人選手の力量が試される。現在、日本代表としてFIBA ASIA チャレンジに出場している太田敦也(三遠ネオフェニックス)のように、bjリーグを通して日頃から外国籍選手と体を張り合ってきたことで国際大会でも重宝されているわけだ。

外国籍選手と対峙するのはビッグマンだけではない。アルバルク東京のディアンテ・ギャレットのようにガードを担う選手もおり、どのようなマッチアップになるか楽しみである。太田の他に、竹内公輔(栃木ブレックス)や竹内譲次(アルバルク東京)のような日本代表のビッグマンや帰化選手を擁するクラブは、どこかのピリオドで外国籍選手を「0」にして、それ以外の30分間をオンザコート「2」にする布陣も可能だ。

オンザコート2以外に出場可能な帰化選手の優位性

外国籍から日本国籍を取得し、帰化した選手はB1の中で現在8名がエントリーされている(帰化選手の登録は各クラブ1人まで)。帰化選手はオンザコート「0」と「1」の時間帯は日本国籍としてカウントされるが、「2」になると外国籍選手と同じ扱いとなり、外国籍選手2人+帰化選手が同じ時間帯にコートに立つことはできない。

FIBA ASIA チャレンジで日本代表デビューを果たしたアイラ・ブラウン(サンロッカーズ渋谷)も帰化選手の一人であり、オンザコート「0」や「1」の時間帯にコートに立てる優位性と頼もしさがある。昨シーズンのNBLでは帰化申請を行っている選手も認められ、トミー・ブレントン(栃木ブレックス)などは帰化枠として出場できた。しかしBリーグとなりその制度は撤廃され、帰化申請中の選手たちは1日も早く受理されることを祈るしかない。

16歳までに帰化した選手が日本国籍選手として扱われるのはFIBAルールでもBリーグでも同じ。外国籍選手と帰化選手の他に、日本国籍ではなくても義務教育を受けていれば日本国籍選手として見なされる。また、海外で育った選手でもアキ・チェンバース(サンロッカーズ渋谷)のように、日本国籍を持っていれば立派な日本人である。

オンザコート数の事前申請ルールは、ジャンケンのようなものだ。当面はアイコが続くと予想されるが、シーズンが進むにつれてチームケミストリーが向上したり、ストロングポイントが明確になってくれば、様々な組み合わせが強みとなり、駆け引きの激しさが出てくることだろう。

期待したいのはオンザコート数でビハインドを背負った側の、日本人プレーヤーの奮起だ。不景気のせいもあるが、一昔前に比べればプロ野球もJリーグも、外国籍選手の活躍が目立たなくなっており、代わりに日本人選手が台頭している。Bリーグでも、契約と同時にプレイタイムが約束される外国籍選手のポジションを奪い取る日本人選手の出現に期待したい。

アジアのライバル国を見渡せば、それぞれのチームカラーは明確である。それらはリーグを通して培われたものであり、日本代表が作るものではない。残念ながらリーグが看板をすげ替えてきたのと同じように、男子日本代表もコロコロと色を変えざるを得なかった。日本のバスケットスタイルをBリーグが示していくことが、日本代表の強化へとつながっていく。