「今やっていることをどれだけ発揮できるか」
バスケットボール男子日本代表は6月16日にフィリピンで開催されるアジアカップ予選に向け、強化合宿を行っている。本日、田中大貴がメディア向けのオンライン会見に対応した。
今シーズンの田中は所属するアルバルク東京で失意のシーズンを送った。自身もケガに悩まされ、チームは初めてチャンピオンシップ出場を逃した。そのため田中は「大事な時にチームを離れることになってしまった。チームに迷惑をかけてしまって申し訳ない気持ちが残ったシーズンでした」と振り返った。
田中はこうした悔しさを現在の代表活動にぶつけている。今回はアジアカップ本選への出場権を懸けた戦いとなるが、田中が見据えるのはその先のオリンピックだ。そのため、海外組が合流しない状況に少なからず危機感を覚えている。
「今回は国内組だけで戦うことになると思うんですけど、海外組が合流すればチームもガラッと変わるだろうし、オリンピック本番のことを考えると早く積み上げをやっていかないといけない」
田中が焦るのも無理はない。2019年のワールドカップでは1勝もできず、世界の壁の高さを痛感した。それからの田中は「ワールドカップを経験してから、オリンピックでどう戦うかを考えてきた」というように、世界と戦うことを常に意識してBリーグでの戦いに没頭してきた。
オリンピックの前哨戦にも当たる今回の予選を戦うにあたり、田中はディフェンスの重要性を説いた。「ワールドカップではトランジションのディフェンス効率が最下位でした。ディフェンスが機能しないとオフェンス力のある世界の強豪国とは戦っていけないですし、ディフェンスの激しさやコンタクト、そういった激しさが鍵になると思います。ディフェンスに重きを置いているので、アジアカップでは今やっていることをどれだけ発揮できるか」
「オリンピックを目標にしてチームを作ってきている」
今回の予選を戦う24名のメンバーに選出された田中だが、もちろん12名の最終メンバーに選ばれる保証はない。田中も「まだオリンピックのメンバーが決まったわけではないので、自分を出していかないといけない」と気を引き締めている。それでも、フリオ・ラマスが指揮を執るようになって以降、代表に選ばれ続けている田中が最終メンバーに残る可能性は高く、本人にもその自負がある。
「ラマスになってから前回のワールドカップ、今回のオリンピックを目標にしてチームを作ってきている。その中でずっと代表に参加させてもらって、コーチが自分に何を求めているかが分かるし、コミュニケーションも取れて信頼関係もできています。オリンピックに絶対に出ると考えながらやっていますし、その競争に残ってオリンピックで戦う自信はあります」
リーグトップクラスの2ウェイプレーヤーである田中が持つ万能性は、代表でも重宝される。「サイズアップが一番の利点」と言うように、ポイントガードを任されれば平均身長は上がり、日本の課題であるリバウンドの向上に繋がるだろう。
それでも、やはり田中の持ち味は冷静かつ正しい判断力であり、チームのバランスを保つ役割がよく似合う。田中も「自分が運んで組み立てるというより、全体の流れを意識してスムーズにオフェンスがいくように考えながらやりたい。自分の良さを出していきたい」と言う。
すでにラマスヘッドコーチから、ポイントガードとしてプレーする可能性があることは伝えられているという。求められる役割は多いが、田中なら自分の個性を生かしつつ、日本を正しい方向に導けるはずだ。