「3年生が絶対に負けられないという気持ちでコートに立った」
6月6日、福岡県のインターハイ予選決勝で福岡大学附属大濠と福岡第一が激突した。全国トップの実力を持つ強豪校同士の一戦であり、2年前のウインターカップ決勝のカードでもある今回の対戦もまた、白熱したゲームとなった。
先手を取ったのは大濠。リバウンドを確実に取って高確率のミドルシュートに繋いで2桁のリードを奪う。膝の大ケガから復帰した岩下准平のゲームコントロールからの速攻も出始めたことで、大濠が完全に勢い乗り、前半を終えて43-28と突き放した。
県の地区大会でも両者は対戦しており、この前哨戦では福岡第一が得意の堅守速攻に持ち込んで勝利している。今回の大きな違いは岩下の復帰だった。「岩下が速い展開を作り、他の選手が『走ればボールが出てくる』成功体験を積むことでもっと走るようになる。岩下の復帰でトランジション、セカンドブレイクの点数が増えて、岩下中心の攻めと湧川(颯斗)、針間(大知)の攻めができました」と、片峯聡太コーチはその効果を語る。
また「3年生が絶対に負けられないという気持ちでコートに立って頑張ってくれた」と片峯コーチが語るように、気持ちの面で福岡第一を上回ったのも大きかった。「メンタルのところで押されて入ってリードされて、追い付くけどやっぱり、というのが最近の負けパターンでした。そういう意味で最初に先行したことでベンチワークはやりやすかったです」
2年生コンビの副島成翔と湧川颯斗も気合いが入っていた。この試合のために坊主にしてきた副島がインサイドを制し、湧川も副島や川島悠翔のセンター陣を信頼して連携を取りつつ、岩下のゲームメークに乗って速攻を連発し、大濠に流れを引き寄せた。
しかし、福岡第一も簡単には引き下がらない。大濠が60-48と12点リードで迎えた第4クォーター、それまでより1段階も2段階も強度を上げたオールコートプレスを仕掛けられ、猛烈な追い上げを浴びる。ターンオーバーが相次ぎ、残り1分で1ポゼッション差に迫られる。佐藤涼成にディフェンスを破られてレイアップを許して1点差。ここからプレスを嫌ってロングパスを出したところをスティールされるが、この絶体絶命のピンチを湧川が身体を張ったディフェンスで止めた。最後は轟琉維の狙う同点3ポイントシュートにしっかり身体を寄せて、これを落とさせる。タップで押し込まれたものの2点では届かず、最終スコア77-76で大濠が勝利した。
副島成翔&湧川颯斗「自信を持って」「ガムシャラに」
2年生フォワードの湧川は40分間フル出場で22得点18リバウンド4アシストと獅子奮迅の働きを見せた。「先生からはブロックされても成翔や川島がいるんだから、自信を持って行けと言われていました。これまでは外しか見ていなくてキックアウトして、リングから逃げた部分があったのですが、今日は先生から言われたことが自信になったと思います」と湧川は語る。
「後半も0-0の気持ちでディフェンスから入れたんですけど、第4クォーターにプレスを仕掛けられてハマってしまいました。第一さんが圧を掛けてくるからこそ冷静にやらないといけないので、そこはインターハイに向けて修正していかないと。また自分自身の反省としては大事な場面でのフリースローと3ポイントシュートが全然入らなかったので練習していきたいです」
またセンターの副島も留学生プレーヤーを擁する福岡第一とのフィジカルな戦いに挑み、ここで競り勝つことでチームに流れを呼び込んだ。ここでの副島の奮闘は、福岡第一からトランジションのキレを奪った。片峯コーチも「今日は川島よりも副島」と、2年生センターのガッツを前面に押し出すプレーを評価している。
それでも試合後の副島は「率直な感想を言うとホッとしています。全国に行ける切符をトロージャンズで取れたことがすごくうれしいです」と安堵の表情を見せる。「悠翔が控えにいるからガムシャラにやれと先生に言われて、その通りにやれたことがリバウンドに繋がりました」
全国大会のベスト8、ベスト4でもおかしくないレベルの試合を制した大濠は、インターハイで日本一を目指す。湧川は言う。「第一さんがいたから切磋琢磨できました。県大会で出た反省をチームで練習して、個人でももっとシュートの確率とドライブの鋭さを上げないと全国の強豪には通用しないと思うので、あとはフィジカルで今日負けていた部分もあったので、そのあたりを鍛えてインターハイに向けて頑張ります」