比江島慎

比江島が髪を上げると勝つ? 指揮官「明日もそこに注目して(笑)」

宇都宮ブレックスは昨日行われたチャンピオンシップのセミファイナル初戦を68-65で勝利した。タフなディフェンスとハードワークでロースコアの展開に持ち込み、川崎ブレイブサンダースのビッグラインナップに対してインサイドの主導権を譲らず、リバウンドで46-34と大差を付けたことが勝因だった。

宇都宮が常にリードし続ける展開ではあったが、ロースコアだけに相手を乗らせてしまえばいつ引っくり返されてもおかしくないスリリングな展開。終盤は1ポゼッション差に迫られながらも、我慢して戦い続けることでリードを守り抜いた。

46本のリバウンドのうち30本をライアン・ロシター、ジョシュ・スコット、ジェフ・ギブスで奪ったが、彼らのゴール下のシュートは徹底的にケアされ、3人でフィールドゴール34本中成功12本(35%)となかなか得点は伸びなかった。その状況で攻め気を高く保ち続け、13得点を挙げたのが比江島慎だ。チームの得点が伸びない流れの悪い時間帯にこそ積極的に仕掛け、そして25分のプレータイムを通してチームディフェンスも徹底して遂行したことが、勝利に大きく貢献した。

比江島は試合後の会見でこう語る。「僕たちがやりたいバスケが遂行できました。最後は追い付かれたんですけど我慢してディフェンスで身体を張り続けたので、良い勝利だったと思います。僕らのプレースタイル、身体を張るだったり泥臭いところだったりは昔からDNAとしてあるので、そこはプライドを持ってやれました。お客さんの声援に後押しされて、タフな疲れた試合だったんですけど最終盤もしっかり身体を張れたと思います」

1リバウンド1スティールとスタッツに表れるものではないが、他のチームメートと遜色なく、また激しいプレッシャーディフェンスを仕掛ける川崎にも負けずに身体を張り、足を動かし続けた比江島は、在籍3シーズン目でブレックスのバスケを完全にモノにしたと言っていいだろう。

比江島慎

「リングをもっと見て、そこを意識しないと」

その象徴とも言えるシーンが第4クォーター残り1分のディフェンスだった。辻直人との連携でジョーダン・ヒースがゴール下に空いたスペースに飛び込みパスを受ける。ギブスとスコットがこれに反応してブロックに飛び込むも、それを察知したヒースはポンプフェイクで2人を飛ばす。これでイージーダンク、という場面だが、背後から狙っていたのが比江島だ。ファウルにはなったが、川崎に試合の流れを持っていかせない、クラッチタイムのビッグプレーだった。

「本能的に身体が動いたんですけど、イージーバスケットを与えるぐらいならハードファウルをしろというのが僕らのプレースタイルなので。ヒース選手は3ポイントシュートの精度は高いですけど、フリースローはそこまで確率高くもないので、アンスポにならないようしっかりボールに行くようにとは思っていました」と比江島はこのシーンを振り返る。フリースロー成功率が53.3%のヒースは2投のうち1本を外した。ロースコアの接戦において、この1点の差がどれほど大きいか。

安齋竜三ヘッドコーチもこのシーンについては「あそこに気付いて向かっていけた。ウチでディフェンスがかなり成長しているマコのすごく良いところが出たと思います」と称賛する。比江島自身も「ブレックスに来てディフェンスは本当に成長を感じている部分でもあるので、身体も調子が良いので」と、いつものように照れ笑いを浮かべながらも手応えを語った。

安齋ヘッドコーチは比江島について、もう一つ面白い指摘をしている。「マコは今日、髪を上げてきたんでやってくれると思いました。明日もそこに注目しておいてください(笑)」

当の比江島によれば、「今シーズン、上げた試合は全部勝ってるんで。そんなにないんですけど」とのこと。「本当は今日は下ろそうと思っていたんですけど、上げた方がいいよと言われたので。指示です、ハイ」と、ヘッドコーチからの『戦術的指示』だったことを明かしている。

髪型は別としても(気にはしておきたいが)、徹底的な対策を打つチャンピオンシップでビッグマンが抑えられた時に、様々な形で点を取ることができる比江島の存在は、今日の第2戦もその先も非常に大きなものとなる。「やるべきことは変わらない。自分からアタックしてもっとチャンスメークだったり、良いところで得点だったりは引き続きやっていきたい。リングをもっと見て、そこを意識しないと相手も守りにくいと思うので」と比江島は言う。宇都宮にとってはBリーグ初年度以来の、そして比江島にとっては初のBリーグ優勝に向けて、さらに勢いを上げていきたい。