イライラを溜める中、ベテランたちの声掛けが第3クォーターの爆発を呼ぶ
富山グラウシーズは琉球ゴールデンキングスとのチャンピオンシップのクォーターファイナル第2戦、負けたらシーズン終了の大一番を97-74と自慢の強力オフェンス爆発で快勝した。
勝利の立役者となったのは第3クォーター開始3分で11得点を挙げ、流れをつかむ原動力となった岡田侑大だ。この試合、富山は第1クォーターで26得点と見事なスタートを切ったが、第2クォーターで16得点と失速し、攻め勝つのが富山のスタイルであることを考えると嫌な流れでハーフタイムに突入した。
ただ、この悪いムードを岡田が変えた。前半の彼は、フィールドゴール3本中成功なしの無得点と沈黙し、自分の不甲斐なさに冷静さを欠いていた。「前半、自分の思うようなバスケットボールができずにチームの足を引っ張ってしまいました。ハーフタイムでロッカールームに下がった時には結構落ち込んでいて、イライラが溜まっていました」
こう振り返る、気持ちの落ちた若武者のメンタルが好転したのはベテランたちのサポートだった。
「水戸(健史)さん、城宝(匡史)さん、阿部さ(友和)さん、(山口)祐希さんが『もっと積極的に自分らしく行け、切り替えろ』と言ってくださったおかげで後半は自分のプレーができました。自分の若さ、メンタルの弱さは分かっていて、こういう時はなかなか切り替えられないですが、そこで声を掛けてもらったのは自分にとって重要でした」
第3クォーター早々、岡田はまずジョシュア・スミスの外れたシュートをオフェンスリバウンドから押し込む。スミスのアタックを防いだのに失点する、琉球にとっては最も避けたい形の一つで得点すると、さらにレイアップ、バスケット・カウントとなるジャンプシュートを決める。
また、「いつもはあんなハードにできない中、ディフェンスで当たれてスティールも奪えて良かったです」と語るように、ルーズボールに身体を投げ出すハッスルプレーを見せてターンオーバーを誘発するなど、守備でも奮闘する。
「今日のシューティング練習でタッチは良くなく、どちらかといえばドライブでプレーしようと決めていました」と思っていた岡田だが、攻守で好プレーを繰り出すことでどんどん調子が上がっていく。極め付けは残り7分44秒、「ドウェイン・エバンスとの1対1でステップバックを決めた後、ああ、来たなと感じました」と本人が語る一撃で完全にゾーンに入った。
「打ったら入る感覚。集中しすぎて、何も感じなかったです」
そんな彼にチームも全幅の信頼を寄せる。「意図的にボールを集めました。良いオフェンスリバウンド、ルーズボールができていて、きっかけがつかめた。彼はシューターなので1つ入ると連続して入ります」(浜口炎ヘッドコーチ)と第3クォーターは岡田中心でオフェンスを組み立てた。
その結果、岡田は第3クォーターだけで3ポイントシュート2本を含むフィールドゴール10本中8本成功で19得点を記録。『マジッククォーター』と富山が重要視する第3クォーターで28-17と琉球を圧倒できたのは彼の活躍があってこそだ。
今日の第3戦に必勝を期すも「自分にとって自信になります」
これで1勝1敗に戻した富山だが、外国籍のジュリアン・マブンガ、スミスは当初から予想されていたとはいえ、この2試合はほぼフル稼働。3連戦の3試合目となる今日のコンディションはギリギリだろう。だからこそ、日本人がいかにチームを牽引できるかが勝利の重要なポイントであり、岡田も強く意識している。
「ジュリアン、ジョシュアとも『明日も大丈夫と』言っていましたが、3連戦はレギュラーシーズン中にはあり得ないこと。そういうことを考えても第3クォーターに僕が自分の時間を作って2人の負担を少しでも減らせたのは大きかったと思います。明日も宇都(直輝)さん、松脇(圭史)、(前田)悟さんと一緒にできるだけ彼らの負担を減らせるように、オフェンス、ディフェンスとも助けていかなければいけないです」
類稀な得点センスをこの大舞台で発揮できたことは「明日、勝たないと意味はないですが、初めてのチャンピオンシップでこういうパフォーマンスができたのは自分にとって自信になります」と岡田にとって、大きなステップアップへのきっかけとなり得るものだ。
「このチームでできるだけ長くバスケをしたい」
この願いを叶えるためには、今日も試合を支配する時間帯を作ることが岡田のなすべき役割となる。
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