西村文男

横浜戦でゲームの流れを変えたセカンドユニット

千葉ジェッツは先週末にホームで行われた横浜ビー・コルセアーズ戦を連勝で終えた。しかし、第2戦後の会見で大野篤史ヘッドコーチが「もっと危機感を持たないといけない、その一言に尽きる」と振り返ったように、試合序盤のエナジーレベルでは横浜が上回っていて、ハーフタイムには指揮官がチームに喝を入れたという。

そんな重いゲーム展開を変えたのがセカンドユニットの面々だ。ベンチから出場した田口成浩は、激しいディフェンスと3ポイントシュートでチームに勢いをもたらした。「出だしがすごく良くなくて、自分もベンチから見ていて『これじゃ良くない』と思いながらも前半が終わってしまいました」と田口は振り返った。

「第1戦を終えた時から、『明日はアグレッシブにディフェンスでプレッシャーをかけていこう』と話していました。なので、自分が出た時はファウル覚悟でプレッシャーをかけて勢いを与えられればと。そこにプラスして、自分はシューターなので空いたら打つ。そういったところで流れを変えることができたのかなと思います」

この試合の田口は6得点4アシストと秀でた数字ではないが、出場時の得失点差を表すプラスマイナスではゲームハイの+23を記録。プレータイムも今シーズン最長の21分となったことから、チームへの貢献度が分かる。田口をはじめ、西村文男やシャノン・ショーターなどのセカンドユニットが活躍し、あらためて千葉の選手層の厚さを見せつけた試合となった。

それでも層が厚いがゆえに抱える悩みもある。昨シーズンは出場した40試合すべてで先発を務め、平均プレータイム21.9分で6.4得点、3ポイントシュート成功率40.0%を記録したが、今シーズンはなかなかリズムをつかむことができず、平均プレータイムは9.8分に留まり、2.5得点、3ポイントシュート成功率27.4%にまで落ち込んでいる。

田口は「結果を残さなければ試合に出られないのがプロの世界。それはやっていて自分が一番感じています」と言う。それでも「結果を残せず苦しんでいますが、ちょっとずつ自分のリズムやシュートタッチ、ディフェンスも良くなってきています」と前を向き、チームについてこう語った。

「今はチャンピオンシップも間近ですが、チーム練習をできるスケジュールではありません。なので、いかに試合でみんなが意気投合するか、一つになれるかが、ここから一番大事になってきます。誰が出てもチームルールを遂行する、エナジーを出してプレーすることがチャンピオンシップでは大事になるので、もう一段ギアを上げてやっていきたいです」

西村文男

「中盤の村に行った時に、ウチが中ボスと戦えるレベルに達していなかった」

千葉にとってベテランポイントガードの西村の存在も大きい。いつもベンチで試合の流れを読んでからコートに立つ西村は、目の前の試合だけでなく、チーム状況も冷静にとらえている。

横浜との連戦を終えて、指揮官が「自分たちの成し遂げたいものが近づいてきている状況の中、もっと感情の高まりが必要」と語ったように、西村もここ最近のチーム状況について「正直、焦りはあります」とし、その理由をゲームのドラゴンクエストに例えて語ってくれた。

「シーズン序盤の試合では良い手応えがありました。そもそもシーズンが始まった時は、いろいろな課題があります。ドラゴンクエストで言うと、一番最初の村のスタートみたいな感じなので、そこから強くなっていくしかない状況で、その可能性をすごく秘めていて良い感じでスタートできるな、という感じでした。でも、いざ中盤の村に行った時に、ウチが中ボスと戦えるレベルに達していなかった。それが自分の中で焦りでした」

こう語るように、西村の焦りとは理想と現実のギャップだ。それでも「焦りはあるけど、もともとある可能性自体はすごく秘めているチームなので、残りの試合を重ねてすごくレベルアップする可能性もあると思う」と語る。

「だからこそ、残りの試合でウチがどういう戦いをするかが、チャンピオンシップに向けてすごく大事になってきます。正直、チームにいる選手は素晴らしいです。ただ、シーズンを通してなぜか個で戦う時間があって、それに気づけずに今まで来た感じでした。また、気づいてはいるけど、どうしても大事な場面では個でやってしまうことが今シーズンは特に多いので、そういう時にチームでどう戦うかをもう少し研いでいく必要があります」

チャンピオンシップに向けて、残りのレギュラーシーズン5試合でチームが抱えている課題をどれだけ修正することができるか。Bリーグ制覇に向けた千葉ジェッツの戦いに注目だ。