ケビン・ラブ

文=神高尚 写真=Getty Images

限定された役割をこなしたキャブズでの4年間

ケビン・ラブがキャバリアーズとの4年1億2000万ドル(約130億円)の大型契約に合意しました。レブロン・ジェームズの移籍を機にチーム方針の見直しを迫られ、若手有望株や将来の指名権とトレードされるとの噂もありましたが、キャブズはチームへの忠誠心を示したラブを中心に再構築されようとしています。オールスター選手でありながら常にレブロンの影に隠れてきたラブだけに、エースとしての存在感を発揮できるのか不安もありますが、むしろチームの大黒柱となることで、かつての多彩なオフェンス力を取り戻すという期待もあります。

ティンバーウルブスに在籍した最後のシーズンとなった2013-14シーズンは26.1得点(リーグ4位)、12.5リバウンド(同4位)、4.4アシストを記録したラブは、選手の総合的な貢献度を示す指標のEFFでその年MVPとなったケビン・デュラントに次ぐリーグ2位の数字を残すなど、強力にチームを引っ張りました。その多彩なオフェンス能力は25歳にして完成の域に達しており、リーグを代表するスーパースターの仲間入りを果たしました。

しかし、2人のドラフト1位指名選手とのトレードでキャブズに加入すると、レブロンとカイリー・アービングに次ぐ第3スコアラーという扱いになり、平均得点を10点近く減らし、アシストも半分以下に。自分が中心として機能させていたオフェンスから味方のためにスペースを作って待つ時間が大きく増えたのです。それでも不平不満を口にすることなくチームから与えられた役割に徹してきました。

キャブズ加入当初はレブロンとの融合に苦しみましたが、昨シーズンは3ポイントシュート成功率41.5%を記録するなどビックマンでありながら高いシュート力を発揮し、効率的に得点を重ねていきました。しかしアービングが移籍し、レブロンに次ぐ得点源になったはずが、プレータイムは短くなり得点は伸びず、ボールタッチの回数自体もキャブズ加入のシーズンよりも10回以上減ってしまいました。

その理由はキャブズ自体がレブロンを生かすプレーコールを増やしていったからです。レブロンの各スタッツが年々増えて行く一方で、ラブの役割はアウトサイドにポジショニングし、レブロンからのキックアウトパスを待つか、ディフェンスの隙をついてカットプレーで飛びこむパターンに限定されていきました。

その結果、ペイント内でのシュートアテンプトが年々減り、昨シーズンはついにウルブス時代の半分以下に。シュートのほぼ半分がパスを受けての3ポイントシュートというシューター的な位置づけになっていったのです。それはラブが本来持っているオフェンス能力の一部分でしかありません。

オフェンスの起点となるプレーの復活に期待

ウルブス時代のラブは身体の幅を使ってディフェンスとの間合いを作るのが上手く、ポストでボールをキープする役割を担い、そのパス数は60.5本とポイントガード並みに多い選手でした。パス本数を考えるとアシスト4.4は少なく、個人技で打開してからではなくシンプルにボールをさばき、周囲と何度もパス交換することでオフェンスにリズムを生み出しました。ポストプレーで自ら得点してディフェンスを収縮させるとともに、周囲にはオフボールムーブする時間を与えたラブは、チームに複数のオフェンスパターンを生み出していたのです。

また、同じく身体の幅を生かして何度もスクリーンをかけに行き、ピック&ロールからの得点に繋げました。ディフェンスからするとシュートの上手いラブなのでスイッチのタイミングが難しく、早めのショウディフェンスをするとインサイドに飛び込まれます。パスを待ってアウトサイドシュートを打つのではなく、自分でスペースを作って移動するのが上手い選手でもありました。

ともにオフェンスの起点を作るプレーであり、周囲との連携が問われるプレーでもあります。キャブズでも時折みせてはいたものの、レブロン中心のプレーメークではその機会も少なく、またパス交換が必要な部分がシューターの多いキャブズの特長とも合っていませんでした。

ラブのリバウンドからの速攻がキャブズの武器に

新シーズンのキャブズは新たなポイントガードにルーキーのコリン・セクストンを加えました。ゲームを作る役割の選手なので、リーグで4番目に少なかったパス本数を増やし、連携で崩していく目的がありそうです。ラブにとってもパス交換を中心としたオフェンスの起点となれば、ウルブス時代の多彩なオフェンスパターンが蘇る可能性があります。

またラブのもう一つの特長はディフェンスリバウンドの多さと、そこから出されるロングパスでの速攻にあります。レブロンがいなくなったことでチームとしてはリバウンド力の低下が懸念されますが、シーズン中のトレードで機動力のある選手を獲得したこともあり、ラブが再びリバウンド王になるような奮闘を見せればキャブズの新たな武器となります。

いずれにしてもラブが活躍するには、チームメートとの連携が欠かせない要素です。ウルブス時代のラブはリーグトップクラスの得点、リバウンドに加え、ビックマンとしては非常に多かったアシストと非常に多彩な能力を発揮していました。その一方でチームをプレーオフに導くことができず、個人プレーに走っているとの批判もありました。逆にキャブズでは4年連続ファイナル進出というチーム成績を残しながら個人の活躍度で批判されてきたのです。

30歳という節目を迎える新シーズン、ラブはキャブズの新たな大黒柱として再びリーグトップクラスの個人成績を残し、チームをプレーオフへ導くことはできるのでしょうか。