笹山貴哉

チームで連動してズレを作り、効率の良いバスケを貫く

島根スサノオマジックは、ホームの松江市総合体育館に名古屋ダイヤモンドドルフィンズを迎えた。

立ち上がりからチームで連動して人とボールを動かす名古屋Dのオフェンスに対し、島根も足を使って対応しようとするが、そこで齋藤拓実に緩急でアクセントを加えられると崩れてしまう。名古屋Dはわずかなズレも見逃さずにシュートを打って得点を重ねていく。一方で島根はボールを運ぶ選手とスクリーナーに続く3人目、4人目の動きに乏しく、攻め手を欠いた。

開始4分で3-12と差を付けられた島根はタイムアウトを取って立て直しを図るが、挽回しようとする気持ちが空回り。外国籍選手が個人で打開しようとするものの、これは名古屋Dにとって守りやすい、望み通りの展開。ウィリアムス・ニカを入れて『オン3』とし、ベテラン司令塔の山下泰弘が入ることでようやく落ち着いたが、第1クォーターで16-26と2桁のビハインドを背負った。

それでも第2クォーターになると島根のエナジーが噛み合う。味方のシュートがこぼれたところを白濱僚祐がそのまま押し込んだ得点に始まり、4本のオフェンスリバウンド奪取をすべてセカンドチャンスポイントに繋いで反撃開始。チームより個人で強引に行く傾向は強いものの、落ち着いてリードを保とうとした名古屋Dが受け身になったところをペリン・ビュフォードを中心に押し込んだ。

ただ、流れはなおも名古屋D。一度は追い付かれるも、安藤周人が相手のギャップを突くアシスト、続いて自ら速攻に走る得点で再びリードを広げる。前半を締めるブザースリーはビデオ判定で取り消されたものの、チームが苦しい場面で安藤が力を発揮し、名古屋Dが44-37とリードして試合を折り返した。

後半も名古屋Dは齋藤のピック&ロールを中心に質の高いバスケットを展開したが、島根を引き離せない。島根は強引ではあるがエナジーを前面に押し出し、またターンオーバーからの失点、速攻からの失点、オフェンスリバウンドを奪われての失点を最少限に抑えることで食らい付く。第3クォーター残り1.6秒から、ニカがゴール下でジャスティン・バーレルをかわすシュートを決めて58-59と1点差に詰め寄り、第4クォーター最初のプレーでビュフォードが個人技から得点を奪い、島根がこの試合で初めてのリードを奪った。

ペリン・ビュフォード

攻守に奮闘した島根、逆転に成功するも終盤に失速

流れは完全に島根だったが、直後のポゼッションで張本天傑に簡単に3ポイントシュートを決められ再びビハインドを背負うと、それ以降は時間の経過とともに失速していく。序盤のビハインドを覆すために無理を続けており、特にキーマンとなったニカは16点ビハインドの第1クォーター終盤に投入されてから、ほとんど休まずにフル回転。デモン・ブルックスがファウルトラブルになったことで、ローテーションはさらに苦しくなった。

名古屋Dはこの隙を見逃さなかった。この時間帯は齋藤ではなく笹山貴哉を起点に、この試合の立ち上がりに見せたような人とボールが連動するチャンスメークが復活し、ジェフ・エアーズ、ライオンズ、安藤と3ポイントシュート攻勢を見せ、それまで奪えなかった相手のターンオーバーからの得点、ファストブレイクも決まるようになって一気にリードを広げる。残り2分半、速攻に走る安藤へ笹山から見事なタッチダウンパスが通り、これで一度逆転された後を26-6のビッグランとして試合を決めた。

名古屋Dが苦しみながらも最後はリードを広げて、最終スコア88-72で勝利。梶山信吾ヘッドコーチは、「しっかり走って自分たちのアドバンテージを使っていくのがゲームプラン。選手たちがそれを信じてファイトしてくれた」と試合を振り返る。島根のド根性バスケに煽られながらも、自分たちのスタイルを信じ抜いたことが結果に繋がった。

一方の島根はエナジー満点、敗れてもなおファンを納得させたであろうパフォーマンスではあったが、フィールドゴール成功率は名古屋Dの55.0%に対し38.9%と大きな差があり、これはシュートタッチの良し悪しではなく良いシュートシチュエーションをチームとして作り出せたかどうかの差だった。

外国籍の3人と帰化選手のニカで72得点中55得点を挙げており、シュートアテンプト72のうち実に52を彼らが占めている。これだけ偏っていれば名古屋Dは守りどころを絞ることができる。チームで連動してチャンスを作り出すこと、また日本人選手がより積極的に得点に絡むことが今後は求められる。

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