川嶋勇人

名古屋Dに大敗し「負けるべくして負けた」

三遠ネオフェニックスは名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの水曜ナイトゲームで78-98と大敗を喫した。外のプレーを得意とするステヴァン・イェロヴァツの特性を生かせないままインサイドのインパクトに欠ける弱点を狙われ続け、名古屋Dの外国籍選手3人に合計で65得点を許したことが最大の敗因だった。

川嶋勇人は「負けるべくして負けたというのが正直な感想です」と試合を振り返った。「やられ方がすごいイージーでした。個人の1対1のディフェンスもできていなかったですし、チームとしてのディフェンスもできていなくて、思ったより点差が開いてないなって感覚でした」

川嶋がそう感じたように、前半の名古屋Dのフィールドゴール成功率は74.1%と超高確率だったにもかかわらず、カイル・ハントがペリメーターのシュートを確実に沈め、川嶋も要所で3ポイントシュートを成功させたことで前半は10点ビハインドと食らいついていた。後半はインサイドの失点を軽減しようとゾーンを起用するなどの対策は行ったが、最後まで反撃のきっかけをつかめないまま試合終了の時を迎えた。

川嶋はチームディフェンスが機能しなかった点を敗因に挙げる。「チームディフェンスの完成度が低いと感じました。1対1のディフェンスも弱いですし、その中でガードもインサイドのヘルプに行けてなかったです。指示はありましたがそれを表現できず、チームディフェンスがあまり良くなかったです」

外国籍選手の合流が大幅に遅れ、主力にケガ人が相次ぐなど、三遠は不遇のシーズンを送っている。その中で川嶋は主要スタッツを大幅に上昇させ、平均10.1得点、4.2アシストと孤軍奮闘を続けている。キャリアベストのシーズンを送っている川嶋は「僕の中ではまだまだです」と謙遜しながらも、技術の確かな向上を感じている。それはスキルコーチを兼任する山本柊輔とのトレーニングの成果の表れでもある。

「点を取るバリエーションは増えたかなって思います。ポストアップはもともと得意ですが、今までやってなかったフローターの練習もして、ピック&ロールの使い方とか1対1とかをスキルコーチの山本と一緒にやっています。NBAの動画を見ながら『このプレーどう?』、『それいいすね』と話して、それを分解して練習しているので、そういう面ではスキルアップはしているかと思います」

プルアップを高確率で沈める精度を持ち、緩急を使ったドライブで得点を量産するなど、確かに川嶋のオフェンスの幅は広がっている。4.2アシストという数字が示すように、クリエイトする能力にも磨きがかかっているが、「スキルが上がってディフェンスとのズレが大きくなり、余裕を持てるようになったことで視野が広がった」と技術の向上がもたらす産物を体感している。

川嶋勇人

スティール王を意識「そろそろ欲を出していこうかな」

さらに川嶋は平均2.5スティールを記録しており、ディフェンス面での貢献度も高い。過去4シーズンで平均1.0スティール以上を記録してきたように、もともとスティール能力は高いが、今シーズンはスカウティングをしっかりやるようになり、頭を使ったディフェンスを心掛けることで、その数字を飛躍的に伸ばしている。

「システム的に変わったのももちろんあるんですけど、考えながらバスケをするようになってきたからですね。今までは感覚だけでしかやっていなくて、『抜かれても追いつけるし、守ればいいんでしょ?』みたいな感覚でした(笑)。今はチームのスカウティングだけじゃなく、個人がどんなスキルを持っているかも見るようになって、その人のクセとかも分かるようになってきました」

この2.5スティールという数字は現在リーグ1位で、初のスティール王獲得も現実味を帯びてきた。川嶋は「欲を出したらダメになるんで、ずっと意識しないようにしていた」と明かしたが、「20試合を切って、まだその位置にいたら狙っていこうかなと思っていたので、そろそろ欲を出していこうかなと思っています」とタイトル獲得への意欲を見せた。

スティールは自チームのポゼッション数を増やすだけでなく、速攻からイージーな得点に繋げ、チームに勢いをもたらす。得点やリバウンドのように何本も連発できるものではないが、1ポゼッション差を争うような僅差の試合では勝敗を分けるビッグプレーになる。それは川嶋のスティールが増えれば増えるほど、三遠が勝利する可能性は高くなる。

「チャンピオンシップはめちゃくちゃ厳しい状況なんですけど、見に来てくれるファンのためにも絶対に手は抜けません。チーム的にも個人的にも、残りの15試合で成長できると思うので頑張っていきたい」。先を見据えてすべての試合を糧にし、成長を誓った川嶋。彼のタイトル獲得の行方を見守るとともに、三遠の伸びしろに期待したい。