宇都宮ブレックスは天皇杯ファイナルで川崎ブレイブサンダースに敗れ、久しぶりのタイトル獲得を逃した。この敗戦で個々の能力を最大限に生かすこと、相手の弱いところを突くしたたかさを持つことの必要性を痛感したという渡邉裕規に、リーグ終盤戦、そしてチャンピオンシップに向けた思いを聞いた。
「悔しいと思わないのは、アスリートではない」
――天皇杯は悔しい敗戦となりました。最終クォーターで10点差、宇都宮であれば覆せる点差という認識の方も多かったと思いますが、そこで巻き返せなかった点をどのようにとらえていますか?
そういう期待感を抱いていただけるのは、僕たちが過去にそういう試合を何回もしてきて、ブレックスだったら何か起こすかもしれないというイメージを持っているからだと思います。でも、あの時は思い切りの良さがなく、そこを超えられなかったです。
例えば、ディフェンスやタフショットのようなセオリーにないものが起きると流れは変わります。何かがきっかけで勢いづくことがあるのですが、そういう思い切りの良さのようなものが最後まで出ませんでした。バスケットボールIQの高さ、相手の弱いところを突くことなど、そういう部分が1枚も2枚も川崎のほうが上だったと思います。
――『勢い』という意味では、渡邉選手は第3クォーターに2本3ポイントシュートを沈めてチームに勢いを与えました。やはり『ナベタイム』を期待される身としてはもっとチームを乗せたかったという思いでしょうか?
それはもちろんあります。大事な試合になればなるほどそれは思いますし、偉そうに言うわけではないですけど、自分もこれだけやってくれば分かりますよ。ただ、それは誰か1人ではなく、川崎さんみたいにみんなで勢いを持っていくことが理想です。例えば、辻(直人)はタッチが悪かった中で第3クォーターに3ポイントシュートを2本決めて自分の時間を作りましたし、(篠山)竜青もドラッグスクリーンを使って3ポイントシュートを1本入れています。やはり総合力であっちが上回っていたと思いますし、僕もそうですが、優勝が決まるという舞台にしては思い切りの良さに欠けていたと感じます。
――準優勝も立派な成績だと思いますが、悔しさのほうが上回りますか?
やっぱり悔しいですよ、目の前で表彰式を見なきゃいけないですし、身を削ってみんなやってきているわけですから。そこで悔しいと思わないのは、アスリートではないと思います。
下を向いてるわけじゃないですが、これをステップアップのための良い薬にしないといけないと思います。今、東地区1位でも、ああいう大舞台で勝てないというのをファイナルの前に経験できたことを大事にしないと。優勝者の姿を目に焼き付けたわけだから、悔しかった思いを無駄にしちゃいけないと思います。
「ここにアドバンテージがあるなってところを突く」
――川崎とはチャンピオンシップでも対戦する可能性があります。結果的にインサイドでアドバンテージが取れなかったことも敗因の一つになりましたが、今後変えなきゃいけない部分はありますか。それとも今やっていることを突き詰めるべきなのでしょうか。
もちろん、(パブロ)アギラール選手にオフェンスリバウンドをかなり取られましたし、ビックラインナップに対しては対策を練らないといけないと思います。ただ、あの試合に関してはそこだけを突かれて負けたわけではない気がしますし、ボコボコにやられたわけではないので難しいですね。
川崎さんは個人個人の攻撃意識が高く、それにプラスして相手の弱いところを突く上手さがあったので、そこに対応しないといけないです。インサイドでめちゃくちゃやられて負けたなら対策練りますけど、大きく変えることはあまりしないと思います。
――具体的に今後必要となってくるのはどういった部分でしょうか?
もっと点を取りに行くために個々で工夫することは必要だと思います。例えば、比江島(慎)はあのバスケットボールスキルがあれば、増田(啓介)選手みたいにシールしたりできると思うんですよ。僕もコールプレーをした時に相手がレイジーなディフェンスをしたらそこでシュートを放ったりするとか。チームとしてもちろん戦術がありますが、自分たちの特性を生かしたり、味方の特性を知った上でここにアドバンテージがあるなってところを突くことが必要かと。
今はそういうことを意識してやっています。今までやっちゃダメと言われたわけじゃないのでやっていくべきなんですよ。一人ひとりの得点能力を広げるために戦術を変えるのではなく、選手個人のマインドを変えるというか。僕がいきなりポストアップするってわけじゃないですよ(笑)。勝つためには点を取らなきゃいけないですし、比江島を例に出しましたが、他の選手もそうで、選手のプレーの幅を広げるためにも貪欲になって、意識を変えるべきだと思います。あとは、今回の対戦で相手はかなり得意な意識を持ったと思うので、シーズン中にこうやれば勝てるという手応えはつけたいです。
「応援してくれた皆さんが報われるような結果を」
――天皇杯の後、苦戦しながらも横浜ビー・コルセアーズに連勝を収めました。次はインサイドが強く、チャンピオンシップ争いに絡む富山グラウジーズが相手です。
どことやるのも大変ですが、実際に大事な試合になるかもしれないですね。例えば、(ジョシュア)スミス選手の方でスクリーンを使ったり、選手間で考えることを増やさないといけないと思います。それがこれまでに語った、相手の突かれたくないところを突くってことですね。特に富山さんは攻撃力が高いので、ディフェンスにより集中しつつ、オフェンスはしつこくしつこくやっていくのが大事かなと思います。
──では最後に終盤戦に向けてファンの皆さんに意気込みをお願いします。
天皇杯では、僕たちもそうですが、ファンの皆さんには初のタイトルが見えてきたところでかなり残念な思いをさせてしまったと思います。ここまでリーグ制覇をするためにシーズンを頑張ってきました。もちろん天皇杯も取りたかったですが、リーグ制覇の過程に天皇杯があると思っています。富山戦がまずは山になりそうですが、強い相手に勝たないと最後は見えてこないので、チーム全員で戦って悲願を果たせたらいいと思います。こんな大変な時期でもホームゲームに来ていただいたり、アウェーに来てくれるファンのためにも、応援してくれた皆さんが報われるような結果をもたらしたいです。
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