レブロン・ジェームズ

写真=Getty Images

無限の可能性への期待と『戦術はレブロン』の懸念

レブロン・ジェームズの加入により、新生レイカーズのラインナップ、プレースタイルに注目が集まっている。2010年以来となるNBA優勝を目指すために、レブロンが中心になるのは当然として、チームの全体像はどのようなものになるのだろうか。

レイカーズはレブロンとの契約をまとめた後、ラジョン・ロンド、ジャベール・マギー、ランス・スティーブンソン、ケンテイビアス・コールドウェル・ポープ、マイケル・ビーズリーというベテランと続けて契約した。彼らは一癖も二癖もある『個性派』だが、チームにはブランドン・イングラム、ロンゾ・ボール、カイル・クーズマ、ジョシュ・ハートという将来有望な若手もいる。

彼らをどう起用するか、ヘッドコーチのルーク・ウォルトンもうれしい悲鳴をあげているに違いない。選手としての経験や格、ポジションごとの選手層を考えれば、現時点でスターターが確定しているのはレブロンとマギーの2人だけ。残る3つのポジションを個性派と若手が争うことになりそうだ。

試合状況に応じてスモールバスケットを展開するのなら、機動力と守備に優れ、アウトサイドからもシュートを打てるロンゾ、ハート、イングラム、クーズマ、そしてレブロンからなるレイカーズ版『死のラインナップ』という選択肢もある。もしくは実績十分のプレーメーカーであるロンドに舵取りを任せ、相手のエースには『曲者』スティーブンソンをぶつけて、レブロンをスコアラーとしての役割に専念させる、という形も面白い。

ラインナップと同様に気になるのは、レブロンのレイカーズがどういうバスケットボールをするか。昨シーズンのレイカーズは、トランジションからの得点でリーグ1位(23.4)、1試合あたりのポゼッション数を表す『ペース』では同3位(102.62)の数字を残した。まずはこのアップテンポなスタイルを継続するかどうかがカギになる。

もう一つの注目は、競った状況でラストショットを誰に託すか。2016年のコービー・ブライアント引退以降、レイカーズはその局面を託すクラッチプレーヤーを欠いた。普通に考えればレブロンで決まりだが、そのレブロンは球団社長のマジック・ジョンソンと将来像について話し合った際、若手コアの成長も楽しみにしていると話している。キャバリアーズの時とは違って自分は相手の注意を引きつけ、『ポスト・レブロン時代』を担う若手にボールを託すこともあるかもしれない。ここはレブロンの意識よりも、クラッチプレーを託される選手が結果を出せるかどうか。イングラムやクーズマにとっては一気に飛躍するチャンスであり、失敗したらキャリアを大きく後退させる『正念場』となりそうだ。

ファンは当然ながら2018-19シーズン開幕ダッシュに期待しているだろうが、球団社長のマジックは、レブロンがヒートに移籍した2010-11シーズン、キャブズに復帰した2014-15シーズンを例に挙げ、新チームのケミストリーが生まれるまで長い目で見守る必要があると話し、ファンに理解を求めている。

昨シーズンのキャブズはカイリー・アービングが抜けた影響が大きく、開幕から新チームが機能しなかった。サポートキャストが揃っていても結局は『戦術レブロン』に頼りっぱなし。それでファイナル進出を果たしたのは偉業だが、レブロンは心身ともに疲弊しきっていた。レイカーズとして最悪のシナリオは昨シーズンのキャブズの再現だろう。ルーク・ウォルトンとしては、タロン・ルーの二の舞となるわけにはいかない。

新たな世代のヘッドコーチの代表格であるウォルトンは、スター選手揃いのウォリアーズでアシスタントコーチを務めた。ウォリアーズが73勝9敗というNBA史上最多勝利記録を樹立した2015-16シーズン前半は、体調不良でチームを離れていたスティーブ・カーに代わりチームの指揮を執り、開幕24連勝を含めた実績を持つ。

レブロンを口説き落としたマジック、脇を固めるベテランを獲得したロブ・ペリンカGMがこの夏にやるべき仕事はほぼ終わった。ここからはウォルトンが手腕を発揮する番で、9月のトレーニングキャンプから開幕までの約1カ月半で新チームの形を作ることになる。

レブロンという主役がいて、脇を固める戦力も充実している。ただ、チーム作りはイチからのスタートで、ライバルに遅れを取っている。その状況でウォルトンの手腕がチームの命運を大きく左右するのは間違いない。

いくらマジックが「辛抱強く見守って」と言われても期待は増すばかり。レブロンという現役最強プレーヤーを抱える以上、『優勝候補と呼ぶに相応しいチームになる』ことが最低限のノルマ。プレッシャーは相当なものだろうが、とにかくレイカーズはウォルトンに託された。