ペリカンズ

「まともなディフェンスができないチームに成長はない」

ペリカンズは前半戦を終えて15勝21敗、西カンファレンスの11位。勝率は昨シーズンと全く同じで、アルビン・ジェントリーを解任してスタン・ヴァン・ガンディを招いた意味はないように思える。ただ、内容としては守れないことで安定感を欠くチームになった。3ポイントシュートを決められた数(15.6本)はリーグワーストの30位で、その成功率39.3%は28位、被アシスト27.7本は29位と、相手のパスワークに振り回され、ワイドオープンを作られていることが数字からも分かる。

見ている分には面白い。豪快なダンクを何度も見せるザイオン・ウイリアムソンは、プレーメーカーとして自らがオフェンスの主導権を握ることで圧倒的な身体能力とスキルを存分に生かせるようになった。また彼が自らズレを作り出し、他の選手へとパスを出す形も機能し、それまでザイオンとブランドン・イングラムに偏っていたバランスが改善され、ロンゾ・ボールやジョシュ・ハート、JJ・レディックも存在感を出せるようになった。

しかし相手チームからすれば、ペイントタッチからキックアウトするだけで、あるいはピックを使ってディフェンスの注意を引き付けて逆サイドに振るだけで、簡単にワイドオープンのチャンスができる。今のNBAで3ポイントシュートを打たないチームは存在しない。どのチームもペリカンズの弱点を知った上で試合に臨み、プラン通りに3ポイントシュートを打ちまくる。

オールスターブレイクを前にしたヒート戦に93-103で完敗した後、ヘッドコーチのヴァン・ガンディはフラストレーションを隠そうとせずにこう語っている。

「オフェンスに関してはあらゆる面で期待以上のパフォーマンスを見せているが、まともなディフェンスができないチームが勝てるはずはないし、成長もない。はっきり言うが、これが事実だ。耳が痛いかもしれないが、チームを良くしたいと思うならディフェンスをやらなきゃいけない」

ペリカンズの選手たちは成長への強い意欲を持ち、どの試合でもハードワークを怠らない。ただ、意識がオフェンスに寄りすぎているのは否めない。相手に試合の主導権を握られた際に、ディフェンスから立て直すのではなく、相手より多くの点を取ることで対抗しようとする。このカルチャーを払拭できないことに指揮官はイライラを募らせている。

ザイオンは終盤の追い上げが届かなかったブルズ戦で、自分がクラッチシュートを決められないことを嘆いた。勝敗を背負う責任感は良いが、ヴァン・ガンディが求めるのはザック・ラビーン以上に得点を取ることではない。2年目のザイオンにすべてを求めるのは酷かもしれないが、フォワードとして起用されている以上は3ポイントシュートに対するクローズアウトのスピードと精度を高めることは急務だ。ヴァン・ガンディもまた、ザイオンの弱点をチームディフェンスでカバーする手立てを講じなければならない。

ヴァン・ガンディのチーム作りはまだ始まったばかり。ザイオンのプレーメーカー起用は当初からのプランではなく、シーズンを戦う中で生まれてきたもので、それを機能させるための調整はこれから行えばいい。勝てないことにストレスは溜まるかもしれないが、いきなり攻守に完璧なチームになるのは不可能だ。まずは3ポイントシュートへの対応を改善し、ディフェンスをリーグ中位のレベルまで引き上げること。それができれば自然と勝率は上がるし、プレーオフ争いの目も出てくる。逆に言えば、そのステップを踏まずしてチームの成長はない。まさにヴァン・ガンディの言葉通りに。

超過密日程の今シーズン、チームにまとまった修正を施す機会は少ない。このオールスターブレイクをどう生かすかが、ペリカンズの今後を大きく左右するはずだ。