プレースタイルの変化がルー・ウィリアムズの移籍を後押し?
東西それぞれのカンファレンスで首位争いをするクリッパーズとシクサーズは、昨シーズン同様の勝率ですが、ヘッドコーチが交代したことでプレー内容は大きく変化しました。特にクリッパーズのヘッドコーチだったドッグ・リバースがシクサーズに移ったことで、共通する変化が起きています。これはトレードデッドラインに向けた補強にも関係してきそうです。
昨シーズンまでのクリッパーズはドライブの得意な選手とインサイドで合わせるビッグマンを活用し、2シーズン続けてフリースローアテンプトがリーグで最も多いチームでした。カワイ・レナードとポール・ジョージの加入で選手の顔ぶれが大きく変わっても、チームとしての特徴は変わらず、リバースが好むプレースタイルが顕著に出ていました。
そして昨シーズン22.4本だったシクサーズのフリースローアテンプトは、ヘッドコーチにリバースを迎えた今シーズンは27.1本にまで増え、クリッパーズに代わってリーグで最も多いチームになりました。3ポイントシュートのアテンプトはリーグで3番目に少なく、ジョエル・エンビードを中心にインサイドを強く攻めていくスタイルが徹底されています。
逆にクリッパーズはストレッチ5のセンターとしてサージ・イバカが加わったことで、インサイドのスペースを広くする戦術に変更され、フリースローアテンプトはリーグで3番目に少ないチームに変貌しました。ドライブの多いエースのレナードとジョージはともにフィールドゴール成功率が50%を上回り、ファウルを受けずに決めきるオフェンスに変化しています。
両チームとも結果を出しており、どちらかが戦術として優れているという話ではありませんが、ヘッドコーチ交代が選手のプレー内容にも大きな影響を及ぼすことを明確に示す事例になっています。
この中で悪い意味での影響を受けているのが、クリッパーズのルー・ウィリアムスで、平均得点が12.4点まで落ち込んでいます。シックスマン賞の常連であるルーはキャリアハイの3ポイント成功率39.6%とこれまで通りの活躍をしているものの、得意のファウルをもらいにいくドライブの回数が減ったことが得点数に影響しています。もともとフィールドゴール成功率は低いものの、巧みな身体の使い方で密集地帯をすり抜けるのが得意だったのですが、今のチーム戦術では密集地帯を避ける方が重要なため、活躍の機会が減ってしまいました。
平均得点を落としているものの、ルーは十分にチームに貢献しており、現時点でトレードに動く必要はありません。しかし、層の厚いクリッパーズでは他にも得点できる選手が多く、これまでのように必要不可欠な選手でなくなっているのも事実です。もしもケガ人などでチームに穴ができれば、プレーオフに向けて彼がトレードされる可能性はあります。
一方でルーのような選手を求めているのがシクサーズです。ベンチに良い選手はいるものの、ドライブで切り崩せる選手が足りず、セカンドユニットでの得点力不足が目立っています。これを補うように、それまで平均13点だったベン・シモンズが、2月になると21点まで伸ばしてきましたが、フリースロー成功率が低いこともあり、安定したベンチスコアラーを補強したいところです。
リバースの戦術はインサイドプレーを中心にしていることでフィジカルな戦いが多く、消耗が避けられないためにプレータイムを制限することで真価を発揮します。その点でも個人技で切り込み、ファウルをもらうのが上手いルーのような選手が重宝されてきました。東カンファレンスで首位に立つシクサーズですが、さらにタフなスケジュールとなる後半戦に向けて、ベンチスコアラーの獲得を考えていてもおかしくありません。