「今まで所属したチームの成功や失敗の多くのことに、僕がかかわっていた」
今シーズンのネッツでは、カイリー・アービング、アキレス腱断裂の大ケガから復帰したケビン・デュラント、そしてロケッツとのトレードで獲得したジェームズ・ハーデンによる『ビッグ3』が結成された。ケガや新型コロナウイルスの健康安全プロトコルにより、なかなか『ビッグ3』がコート上で踏み揃う機会はないが、リーグ屈指のオフェンス力を発揮して、22勝12敗で東カンファレンス2位に位置し、1位のセブンティシクサーズには0.5ゲーム差まで迫っている。
ゲームメークをハーデンに託したことで、スコアラーとしての能力を前面に押し出すアービングは、キャリアハイタイの平均27.4得点、フィールドゴール成功率はキャリアハイの52.1%を挙げる活躍でチームを引っ張っている。それだけでなく、ここ最近の彼はチームのリーダーとしての評価も集めている。
これまでのアービングは、選手としての評価は高くても、リーダーとしての評価は低かった。2017-18シーズンからの2シーズンを過ごしたセルティックスでは、優勝経験があるアービングには若手の多いチームをリーダーとして引っ張ることが期待されたが、逆にチームで孤立することに。それだけでなく、2018-19シーズン開幕前には「球団と再契約をするつもり」とファンに約束していたものの、最終的にはフリーエージェントとなってセルティックスを離れネッツと4年契約を結んだ。
ネッツに加入後の昨シーズンも、肩のケガで約2カ月間も欠場していたにもかかわらず、復帰後にはチームの不振について『駒不足』と発言し批判を集めた。また、今シーズンも『個人的理由』で1月に約2週間チームから離れるなど、リーダーとはかけ離れた行動を取っていた。
しかし、そのアービングが『個人的理由』による欠場から復帰して以降は、バスケに意欲的に取り組み、リーダーシップも発揮している。それはチームメートも感じているようで、2年目のニコラス・クラクストンはアービングについて「彼が悪い評価を時々受けているのは知っているよ。でも、彼は偉大な選手だし、偉大なリーダーでもある」とコメントした。
また、今シーズンからネッツに加入しているランドリー・シャメットも「彼と一緒にロッカールームにいるようになって、彼の人となりを知ることができて良かった。彼はチームメートを信じていて、仲間のためにベストを尽くそうと戦ってくれている」とアービングを称えた。
そのアービング本人もリーダーシップについて「クリーブランドでもボストンでも、僕はあまり多くの人とかかわろうとしなかった」と自身の非を認めた上で、こう続けた。「今までの経験から多くを学んだ。人生を楽しまず、そして献身的な姿勢を持っていなければ、チームの雰囲気を盛り上げることができないとね。たとえ疲れていても、良い日や悪い日があっても、リーダーはチームの雰囲気を良くしなければいけない。でも、一人でチームを引っ張ることができるリーダーなんていない。一人でグループを引っ張って、みんながあこがれるようなヒーローになんてなれない。アメリカ、そしてこの世界はそういうものさ」
「だけど、今はこの立場にいられることに感謝している。以前よりも良い模範を示すことができているんじゃないかな。今まで所属したチームの成功や失敗の多くのことに、僕がかかわっていた。その点は真摯に受け止めている。だけど、そこでの学びを教訓として、他の人に伝えることができた。それに、そういうことこそが大切なんだと思う。そうやって過去の出来事から学んで成長していることを実感できているから、僕は今ワクワクしている。このチームの仲間にも、僕の思いが伝わってきていると思う。それは、僕にとって試合よりも大きな意味があるんだ。僕はリーダーという立場を楽しみながらも、チームを盛り上げるためのエネルギーを彼らに与えられるようになりたい」